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一ゲーム目(後)

【4巡目:城夜由佳】

「えーと、これかな?」

 大きな瞳でじーっと手札を見つめた末、ユカちゃんはハートとダイヤの4を出した。これならオレも出せそうだ……ユカちゃん優しい。女神。


【4巡目:絢南京一】

「ごめん由佳、七渡ななわたしだ」

 京一が出したのはハートとダイヤの7だった。これまたローカルルール“七渡し”だ。7を出した枚数分だけ右隣の人に手札を押し付けることができる。京一の右隣はユカちゃん。なんてことをするんだ、あいつ後で一発殴ろう。

「なんか殺気を感じるんだが……」

「気のせい気のせい」


【4巡目:森咲綾菜】

「ハートとダイヤ縛りか……」

 モリは難しい顔で唸る。手札が少ないってことはそれだけ選択肢が少ないってことだからな。縛りに対応する余裕はない。

「こりゃパスだな」

 七渡しした上に縛りやがって、京一のやつ彼女を勝たせる気あんのか?そんなにオレとデートしたいの?

 まあチケットをもらえるのはニゲーム目の勝者だから、一ゲーム目の勝敗は有利不利を決めるものでしかないが。


【4巡目:梅原敦史】

「やっと出せた~!」

 オレはハートとダイヤのJをぶん投げた。縛りがあるからこれしか出せないのが悔しいが、やっと手札が十一枚になった。ちなみに今ユカちゃんが十二枚、京一が六枚、モリが五枚だ。


【5巡目:城夜由佳】

「イレブンバックってことは、今は順番が逆なんだよね?」

 栗色の髪を揺らしながら首を傾げてみせるユカちゃん。

「ユカちゃん可愛い!天使!」

「えっと、ちょっと黙ってもらえるかな?」

「すみません」

 少し悩んで、結局場に出たのはハートとダイヤの6だった。


【5巡目:絢南京一】

「じゃあこれで」

「うわっキョーイチがジョーカー持ってたのかよ!」

 出したのはハートの3とジョーカー。3が二枚あることになるので今これに勝てるカードはない。全員パスだ。


【6巡目:絢南京一】

「さらにこれだ」

 イレブンバックの効果が切れ、再び最強になったクローバーとスペードの2が出た。もちろん誰も出せるやつはいない。


【7巡目:絢南京一】

「よし、上がりだ」

 京一がクローバーとスペードのKを出し、大富豪になった。

「負けた!」

「ちぇ、キョーイチが大富豪か」

「京一くんこんなに強かったっけ?」

「……まあそれなりにな」

 多分普段ユカちゃんとかとやるときは半分くらい負けてやってるんだろうな。お優しいこった。


【7巡目:森咲綾菜】

「これでどうだ!」

 モリが自信満々に出したのはスペードとクローバーのAだった。縛りがあるからこれに勝てるのはスペードとクローバーの2だけ。

「さっきキョーイチが出したやつか……」

「パスだよ……」

 オレとユカちゃんになす術はなかった。


【8巡目:森咲綾菜】

「八切りの七渡しっと。上がり!」

 ユカちゃんに手札を渡して0枚にし、モリが富豪になった。

「あれ、ジョーカーどうしたんだ?」

 確か持っていたはずだが。

「あれなら今ユカに渡したぞ」

「だから言っちゃダメだよ綾ちゃん……」

 ジョーカー使わなかったのかよ、もったいねぇな。まああとはオレとユカちゃんでビリ争いになるわけか……。困ったな。



 ▲▲▲



「か、勝っちゃった!?」

「ユカちゃん強いなぁ」

 負けましたよ、うん。ユカちゃんを大貧民にするわけにはいかねーもん。しかしせっかくスペードの3温存しといたのに使うタイミングなかったな。

 本来最弱である3が脚光を浴びるとき、それはジョーカー一枚が場に出たときだ。通称“スペ3返し”――ジョーカー一枚に対してスペードの3を出すと八切りと同じ効果が出せるというものだ。ちなみに革命時はスペードの2がその役割を担う。

 ジョーカー封じのカッコイイ一手だが、大抵のやつは警戒したりもったいぶったりしてジョーカーを単独で出さないためあまり出番はない。今回も例外ではなかったようだ。


 再びカードを切り、後半戦が始まった。

「――大富豪が京一、富豪があたし、貧民がユカで大貧民が敦だな」

 そう、大富豪はここからが本番だ。

「おい敦史。さっさとカード寄越せ」

「京一くん、それじゃ悪役みたいだよ……」

「何言ってるんだ、そういうゲームだろ」

 手札が配られると大貧民はその中で一番強いカード二枚を大富豪に、大富豪は要らないカード二枚を大貧民に渡す。富豪と貧民も同じ要領で一枚交換し、大富豪と富豪が有利な状態からゲームが始まるという寸法だ。敗者からの搾取に勝者からの施し、見ろよこれが社会の縮図だぜ?

「何でこういうときに限って……」

 渡したカードはジョーカー二枚だった。さっきは一枚もなかったくせにどうして来るんだよ。

 京一から突き出されたカードを確認してみると、クローバーの9とスペードの6だった。京一からすると無難なとこなんだろうが、おかげで8、9、10、Jの革命成立だ。たまには京一も役に立つな。

 なんだ、結構いい手札じゃないか?3と4は二枚ずつあるし、ジョーカーを犠牲にしたおかげで2が二枚とも手元に残っている。幸いなことに大貧民の特権で最初にカードを出せるからな。さっさと革命してしまおう。

「れっつ、すたあああぁぁぁあああっとおぉおぅ!!」

「敦史うるさい」

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