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第四話、国王と結婚。

 異世界では地球とは異なりきんが安価に手に入るということが分かったので、これを地球に持ち帰るだけで簡単に年収1千万円を達成することができるということは分かった。逆に年間最大で1千万円しか持ち出せないということは、こんなにたくさんある金食器の本の一部しか持ち出せないということでもあった。


 「これを見ると、急に1千万円というのがはした金に見えてくるな」

 「日向、君はきんが好きなのか?」

 「別に好きってわけでもないけど」


 楓は本心でどう思っているかは分からないけれど、超資産家の令嬢なので1千万円くらいは元々はした金だと思っていても不思議ではない。この量の金食器を見ても動揺するどころか手に取って鑑定を始めたくらいだ。


 「ソレイユ様、国王になっていただくに当たって、もう一つ伝えておかなければいかないことがあります」

 「はい、何ですか?」

 「私と結婚してください」

 「は?」


 僕はアイエのプロポーズに即答で疑問符を返してしまい、さすがに失礼だったかとちょっと気後れしてしまった。それにしても、今までの会話でいきなりプロポーズされるような兆候はあっただろうか?


 「ダメー。日向は僕のだ」

 「こら、僕は楓のものになった覚えなんてない」

 「君は黙ってて。これは女と女の闘いだよ」

 「エラブル様、誤解です」


 なぜか牙を剝きだして威嚇を始めた楓に対し、アイエは慌てたように釈明を始めた。


 「ソレイユ様は国王になられるわけで、世継ぎのために王妃を娶らなければなりません」

 「日向と結婚するのは僕だって小学校の時から決まってるんだよ」

 「それは構いません。ソレイユ様が結婚するのは1人ではありませんから。エラブル様が地球正妻で私が異世界正妻ということにすればどうでしょうか」

 「乗った!」


 え、乗ったの!? ていうか、地球正妻って何? そんな単語あるの?


 あまりの超展開っぷりに助けを求めて視線を動かすと、後ろに控えていた猫耳のスリーズと目が合った。


 「不束者にござりますが、よろしくお願いいたします」


 そして、何も言う間もなくスリーズにまで深々と頭を下げられてしまった。っていうことは、いつの間にかこのスリーズとも結婚することになってるの?


 「ちょ、ちょっとそんなこと、勝手に」

 「君は僕のことが嫌いなのか?」

 「そんなことは言ってないよ」

 「じゃあ、好きなのだな」

 「そりゃ、好きだけど、それとこれは……」

 「なら何も問題ない。今すぐ式を挙げよう」

 「だから、そんな今すぐなんてのは!」


 地球正妻という言葉に乗せられたのか、楓のテンションがいつもより何倍増しで高くてずっと押されっぱなしだ。しかも、楓と押し問答をしている最中にアイエが僕の隣に座って腕を胸に抱きしめてきた。想像を超えた感触に腕が包まれて一瞬意識が天国に飛びそうになる。


 「あ、ずるい!!」


 アイエに抜け駆けをされたことに気づいた楓が反対の腕をとって胸に抱きしめた。こちらはこちらで別の方向に想像を超えた感触に包まれてすごく申し訳ない気分になった。


 「君、今、悪いことを考えただろう」

 「な、何も考えてないよ」


 すると、スリーズまで僕の前に来て、膝を折ってしゃがみ込んだ。


 「それではわたくしはこちらの方にご奉仕(つかまつ)り……」

 「ストーーーーップッ」


 慌てて僕は左右の楓とアイエを振りほどき、前に座るスリーズの肩を押し戻した。


 「お、お前たち、物には順番というものあるだろ」

 「そうです、スリーズ。慌てすぎはいけません」

 「申し訳ござりません。では、先に湯殿の支度をば」

 「待て」

 「んぐぇ」


 僕はそう言って立ち去ろうとするスリーズの襟首をつかんで引っ張ると、のどがしまったらしくカエルが潰れたような声を漏らした。


 「僕はそういう順番を言っているんじゃない。そういう関係になるにはいろいろ段階を経てからじゃないと」

 「ああっ。もしかしてソレイユ様は男性にしか興味のない性癖の……」

 「いいから、人の話を聞け」

 「痛い。痛いですっ」


 アイエが全く人の話を聞かずに妄想を暴走させ始めたので、思わずこめかみを拳でぐりぐりしてしまった。しまったと思って手を離したけれど、頬を上気させて恍惚とした表情をしていたので問題はなさそうだ。


 「僕も男だからそんな風に求められたら嬉しいけど、そもそも僕が異世界に呼ばれた理由を聞いてないよ。それを聞かないのに話を進められても困る」

 「君と僕はここで結婚式を挙げてハネムーンを過ごすんだ。何なら新婚生活もここでいい」

 「楓が話すとややこしくなるから黙ってて」


 アイエと話したいのに楓が割り込んでくるので、両手で持ち上げて膝の上に抱きかかえ、頭をなでると途端に大人しくなった。これでしばらくは邪魔してこないはずだ。


 「さっき、僕と楓に世界を救ってくださいって言っていたけど、あれは一体何だったの?」

 「それは、数か月前に神託がありまして」


 と、ここに来てようやく落ち着いてアイエに今回の国王募集の顛末を聞くことができた。

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