桜宴歌
君の声がした気がして
雨の降りそうな空を見た
桜の花が散るまでは
夜を越すのも怖くない
桜が散ればそろそろかしら
静けさにたえきれず
床に落ちた言葉
飛ばす自転車色づいたかご
せめてほら、代わりにね?
想い花に乗せて
単純すぎと笑い泣く
雲一つない空の下
季節季節の花が咲く
静かなこの真白い部屋で
君は彩り愛でるけど
真っ青なこの空の下
君のことを励ましてた
桜の花も忘れないで
梅雨が来たから雨が増えたね
当然のことなのに
君は寂しそうに
言葉は腐る湿気のせいで
耳を打つ雨音と
君の鈍い咳と
「大丈夫」にっこり笑う
鮮烈な赤い水玉
大丈夫ならいいけれど
大丈夫なら、いいけれど
ほら見て綺麗恋の季節よ
少しだけはにかんで
君は笑いながら
また来年も桜見たいね
涙ぐむ僕を背に
君はあくびをした
武骨な鉄かご自転車で
雪の降る夜に飛び出した
ようやく着いたところなのに
今から峠越えの道で
誰でもいいからお願いだ
もう一度もう一度だけ
桜の花を咲かせてよ
二人で綺麗と笑いたい
まだ起きている?ねぇ聞こえてる?
夢枕君はたつ
草枕どこまで?
一度だけしか言えないけれど
ありがとう。あいしてた
君が眠りにつく
朝焼けの中
覆われた顔
単調な音
冷たい肌
君の声がしなくなって
桜吹雪は空に舞う
お願いだからもう二度と
桜の花よ咲かないで
思い出せば悲しいから
君から目をそらし続けた
桜ひとひら僕の手に
君の声がした気がした
桜の花を忘れないでと
貴方がさ言ったのに
どうして見ないのさ?
わかった君に届けに行くよ
喜びはないけれど
想い花に乗せて
君の声がした気がして
雨の降りそうな空を見た
舞い散る桜の花を見て
一人で綺麗と微笑んだ
君の名前の刻まれた
石の色濃くした水玉
僕は前へと進むけど
桜の花を忘れないね
君がずっと愛していた
桜の花を忘れないね