一種のプロローグ
10年前の物語。世界にとって非常に大きな脅威。異世界転生と帰還のジャンルを両方持つ唯一のシリーズ。そうです!
これは10年前の話だ。
――10年前、何があったのか。
「遠矢京太郎。あの連中は“自然の摂理を外れた存在”だ」
兄はそう言った。
あの頃の俺は、まだ幼かった。とはいえ、15歳にはなっていた。
彼は俺の兄だ。天才の中の天才。政府に勤めている。どんな仕事をしているのかは知らないが、とにかく稼ぎはいい。俺の憧れの存在だった。
兄は俺の肩に手を置いた。
「自分の身は自分で守れ。遠矢家の名誉を守るのは、お前の役目だ。これはとても重要なことだ。うちの家は政府にとって大切な存在なんだ。もう子供じゃない。母さんと父さんのことを頼む。……俺が生きて帰れるかは、わからない」
あの時の俺には、その言葉の意味が理解できなかった。兄は冗談を言うような人間じゃないし、誰の冗談にも興味を示さない。そんな兄を、あの時の俺はただ呆然と見ていただけだった。
兄は「殺すか、殺されるか」という場所にいた。どんな仕事だったのか? どんな政府の仕事だったのか? 当時の俺にはわからなかった。
兄は“脅威”を排除していた。世界に対する脅威を。それは戦争だった。10年前まで世界に隠されていた、大規模な戦争。組織と組織の戦い。世界支配を目論む組織との戦争。人間の限界を超えた邪悪さで、過去の戦争すら霞むほどの恐ろしさだった。そして、兄はその戦争で命を落とした。
――これが、10年前の真実だ。
そして現在。
「くそ……兄貴め」
俺は死んだ兄を呪った。
「こんな大事な“アーティファクト”を、こんな場所に隠すなんてな……!」
俺は探し物をしていた。
辺りは闇ばかり。今いるのは自宅の物置部屋だ。
「これを見つけないと、あの部署に入れない……!」
声に焦りが混じる。無理もない。見つからなければ、兄と同じ仕事に就けない。その仕事は――とにかく給料がいい。
「落ち着け……頭で考えろ」
周囲を見渡す。見えるのは闇だけだ。
「……やるしかないか」
俺は意識を集中させ、深く息を吸った。
「集中……」
吸って、吐く。
その瞬間、物置が照らされた。光の筋が――指先から、まるで懐中電灯のように放たれている。
「兄貴に教わった小技が、こんなところで役に立つとはな……」
“指ライト”なんて名前でもつけるか。俺はその光で物置を探る。
だが――見つからない。この部屋はそれほど広くない。古くて使えなくなった物を放り込んでおく場所だ。ベッド、いくつかの絵画、少しの化学実験器具、そして箒。
「こんな高そうな物まで、まるで価値がないみたいに放り込んでるなんてな……全部売ったら、いくらになるんだか」
俺は古いベッドに腰を下ろした。
「はあ……疲れた。どこに隠したんだよ。こんな場所に“あれ”があるわけ――」
俺はポケットから一通の手紙を取り出す。兄からの最後の手紙だ。
もう一度開いて、目を通す。
「すべてをお前に託す、弟へ。遠矢家の新しい後継者へ宛てて、この手紙を書いている。政府に貢献し、家の名を高めたいなら、このアーティファクトを必ず見つけろ。何があってもだ。あれは――お前が俺の部署に入るために必要なものだ」
その下には、下手くそな蛇の絵。生き物が“アーティファクト”? 一体どこにあるんだ。
俺はため息をついた。
「確か月給100万円だったよな……逃すわけにはいかない」
そのとき、視線がある一点に止まった。
「……待てよ。この棚、前からあったか?」
俺は立ち上がり、その棚へ歩み寄る。一瞬ためらい――ゆっくりと扉を開けた。
「……当たりだ!」
思わず顔が緩む。
棚の中には――地下へ続く階段。
「俺の“当選券”ってわけか」
俺は階段を下り始めた。
「へえ……物置には明かりがなかったのに、こっちはあるのか。面白いな」
最後の段を降りた瞬間――何かを踏んだ感触。
「……まさか」
それは“脱け殻”だった。
蛇のような爬虫類は脱皮する。だが、これは明らかに異常だ。その大きさは――この部屋と同じくらい。
「信じられない……なるほどな。兄貴が何をしていたのか、やっとわかった」
俺は一体何者なんだ?人はきっと疑問に思うだろう。指から光を出す俺は、超常の存在なのか? それとも宇宙人か?
そして俺自身が知りたい問い――
「これは……何の生き物の皮なんだ?」
俺の名は遠矢京太郎。25歳。純粋な日本人で、自動車会社でサービスマネージャーをしている。自分が何者なのか――それを知りたいのは、俺自身だ。俺はその皮を見下ろした。見た目は巨大な蛇の抜け殻に見える。だが実際は――歪んでいる。
異形で、怪物のようだ。
「……これが、兄貴が俺のために用意したアーティファクトってわけか?」
俺はその皮から目を離せなかった。――妙に、惹きつけられる。
章を読んでいただきありがとうございました。SodaKunでした!




