ロナルドとアデレイド 10
それから俺はなにを言われているのかわからず、女王陛下からの言葉に「はあ」「はあ」と頷き続けるだけだった。
「『はあ』じゃない、『はい』と言え!」
姉上からそう背中をどつかれたが、とにかく頭が追いつかないのだから仕方がない。
女王陛下は言った。
「あなた方の故郷に、密偵を送りましたの」
「み、密偵?」
「はーい! わたくしが密偵その一でーす!」
元気よく手を上げるメリーローズ嬢。
「はあ?」
「そして、密偵その二がシルヴィアよ!」
「不本意ながら」
眼鏡のブリッジを押さえる姉上に、また「はあ?」と声が出てしまった。
「ええー? わたくしも、そのミッテイに行きたかったですう!」
アディが拗ねる。
ああ本当に、アディは唇を尖らせても可愛い。
で、密偵がなんだったっけ?
「アデレイドさん、あなたはマコーリー家に面が割れているから、密偵は頼めませんでしたの」
……この俗語混じりのセリフは、女王陛下だ。
誰だよ、陛下にこんな言葉を教えたのは。
「メンがワレ……?」
案の定、アディは意味がわからず首を傾げる。
ああ本当に、アディは首を傾げても以下略。
「つまりね、マコーリーさん達にどんな人間なのか、あまり知られていない人が行った方がいい役目だったのよ」
メリーローズ嬢がそう言って、アディや俺に何をしてきたのか、わかりやすく説明してくれた。
* * *
わたくしとシルヴィアは、女王陛下からの依頼でマコーリー領に行きました。
というのも、マコーリー領の領民たちから「領主の後継ぎを代えてほしい」という嘆願書が届いていたそうなのです。
「本来、王家に直接嘆願できるのは領主のみという決まりがあるんですが、それでは領内のトラブルを領主が揉み消してしまうことにもなるでしょう?」
エッちゃん陛下の言葉の意味、わかるかしら? アデレイド。
わかる? そう、大丈夫ね。
「広く一般の国民からの陳情書も受けるべきかどうか、ちょうど議題にかけられていたの」
エッちゃん陛下はできれば直接陳情を受けたいと思っていたそうなんだけど、無制限に陳情がきてしまっても困ることになるって、反対意見が根強かったそうなのよ。
「吉宗公の目安箱みたいなのを考えていたんだけどねー」
「ヨシ……? メヤス……? エッちゃん陛下、それはなんですかあ?」
ああ、アデレイド。以前いた世界で、昔の偉い人が広く国民の意見を聞くためのシステムを考えたのよ。
「はあ、イセカイの偉い人、偉いですね」
「そのうえ、暴れん坊なのよ!」
「偉くて暴れん坊なのですかあ」
……エッちゃん、そろそろ話を先に進めるわね。
シルヴィアとロナルドも、そんな白目をむかないの。
ああ、アデレイドがエッちゃんのことを「エッちゃん」て呼んだせいね。
だーいじょうぶよう。
エッちゃんはそんなことで、怒らないから。
「怒らないわよ。アデレイドさん」
「はあい」




