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それは、さっきの白い文字と同じようで、同じではなかった。

打ち上がって開く音がやけにリアルに聞こえたし、どことなく、花火の匂いや煙たさみたいなものを感じたのだ。壁の中から。


そしてそれは、紫間さんが指揮者のように腕をくるりとひねると、パッと消えた。



…………ああ、これが ”魔法” なんだ



私はもはや、驚愕よりも感嘆めいた感情を抱いていた。



「とまあ、ここまでは簡単にMMMコンサルティングの成り立ちや魔法使いについて説明したわけだけど、なにも全部を理解できなくてもまったく問題ないよ。これから言う基本的なことさえ理解してくれてたら、あとはちょっとずつ慣れていくはずだからね。まず、人にはもともと不思議な力があって、これは人それぞれだということ。その不思議な力を ”魔法の元” と呼んでいること。”魔法の元” の持ち主同士が一緒にいることで、互いの ”魔法の元” を習得できる場合があること。自分の ”魔法の元” 以外にも習得した者のことを ”魔法使い” と呼ぶこと。そして ”魔法使い” 同士は互いを癒し合うということ。その癒し合いの結果として、それ以降の年の取り方がとても遅くなり、ほぼ老いることのない ”魔法使い” も存在すること。戦時中、多くの ”魔法使い” が利用され、命を落としたり負傷したことから、二度とこれを繰り返さないために ”MMMコンサルティング” の前身となる組織が創立されたこと。創設者の ”魔法使い” は、”記憶消去の魔法” を使えたこと。この ”記憶消去の魔法” はごく少数の者にしか習得できないこと。この ”記憶消去の魔法” を用いることで、 ”魔法” を悪用しようとする輩から ”魔法使い” を守り、”MMMコンサルティング” において善良な非魔法使いからの依頼のみを承っていること…………長々と話したけど、ざっとまとめるとこんな感じかな。ここまでで何か質問はあるかな?」



紫間さんは私にそう尋ねてきた。


魔法に免疫がありそうな3人はともかく、私と同じく免疫が薄そうな紺咲さんと灰霧くんには少しも視線を送らず、ただ一途に私だけを見て尋ねたのだ。

そのことに違和感を覚えていると、隣で察した律ちゃんが耳打ちしてくれた。


「ユキ以外は、ある程度は事前にMMMコンサルティング社員とコンタクトがあって、その際に質問もしているはずだから」

「あ………そっか……」

「ごめん。俺がちゃんと説明しなかったせいだ」

「ま、彼らもMMMコンサルティングの生い立ちに関してまでは聞いてないと思うけどね」


小声で話していた私と律ちゃんの間に、紫間さんがするりと入ってくる。

紫間さんは立て続けに「ああ、でも青街くんと緑堂さんは、お家の方に聞いているかもしれないけどね」と二人を横目で見ながら言った。


反射的に、私、紺咲さん、灰霧くんの注目が青街さんと緑堂さんに集まると、それを予測していたように緑堂さんが優雅に答えた。


「仰る通りですわ。幼少時より、両親から聞かされておりますもの」


そういえば、さっきも緑堂さんは昔から魔法使いについてよく知っている風だった。

紫間さんも緑堂さんのお家のことをご存じのようだったし、青街さんのご家族についても面識があるような発言があった。

そしてその理由は、すぐに紫間さんから明らかにされたのだった。



「知らない人のために説明すると、この二人は魔法使い一族の出身なんだよ」

「ああ、なるほど。そうでしたか………」


紺咲さんが頷きながら緑堂さんに笑いかけると、緑堂さんは「そうなんですの」と上品に、そして誇らしげに認めた。

一方の青街さんは面倒そうにため息を吐いた。

まるで巻き込まないでくれと言っているようだ。

その希望通り、誰も彼に話を振りはしなかった。



「基本的にこの力は遺伝が多いからね。親が魔法使いだったら、普通は幼い頃から魔法についてのレクチャーを受けるよね」

「遺伝なんですか?」


驚きの声をあげたのは、意外にも灰霧くんだった。

さっきよりも張った声は、やっぱりちょっと高めだ。

楽器ケースを抱きしめている彼の手が、少しだけぎゅっと力を加えられたように見えた。



「おや、灰霧くんはそこまでは聞いてないんだね?」

「僕も初耳です」


紺咲さんが元教え子を庇うように答えた。

もちろん、紫間さんに彼を責めるような雰囲気はなかったけれど、紫間さんに名指しされた灰霧くんがやや戸惑っている感が見えたのだ。


すると紫間さんはパッと灰霧くんから紺咲さんに視線を移して。


「なるほどなるほど。じゃあ、ついでに説明しておこうか。紅守さんも知らないと思うからね」


その次に私にウインクでもするように軽く告げた。



「”魔法の元” の持ち主が ”魔法使い” になるというのはもう理解してくれたと思うけど、この ”魔法の元” というのは通常遺伝のみで受け継がれるんだ。内容は人それぞれでも、一般的には ”魔法使い” や ”魔法の元” を持たない親からは ”魔法の元” を持つ子供は生まれない。だからこそ、MMMコンサルティングができる前は魔法使いと非魔法使いの分断があったわけだけど、もともとすべての人に ”不思議な力” があったわけだからね、当然、隔世遺伝や先祖返りなんかも起こりうるんだよ。例えば、病気や大怪我なんかで命の危機に瀕したときなんかに起こることがあると報告されているよ。だいたいそういう場合は近くに ”魔法使い” や ”魔法の元” の持ち主がいて、互いに癒し合う作用が発動していると考えられているんだ。あとはそうだな、精神的に大きなストレスがかかったときとかにも発露すると言われている。ただ、そうやって隔世遺伝や突然の先祖返りで ”魔法の元” が目覚めてしまった人は、まわりに ”魔法” に理解ある人間がいないことが多いんだ。そして非魔法使いが多数派である社会では、彼らはとても生きにくい。残念ながらこの ”魔法の元” は良くも悪くも目立ってしまうからね。良い方に目立てばまだ優秀な人と評されるだけで済むけど、悪目立ちしてしまったら、あっという間に仲間外れ、奇人変人の烙印だ。人と違うということは、生きづらさを生んでしまうからね。昔の我々みたいに。ま、迫害まではいかなくても、いじめに発展することもあれば、社会不適合者と後ろ指差されたり、犯罪に巻き込まれたり、罪を犯してしまったり、自ら命を…………本当に残念だよ」










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