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9.嫌いじゃないし。

 えっ、もしかして七瀬の彼女? 


 彼女の方は嬉しそうしていたしそう見えた。わたしと七瀬とそんなんじゃないけれど、おごる為に誘ってるわたしとしては譲れない気分になりつつあった。


「ゆ、優美ゆみ? な、何で?」

たすくが歩いてるの見つけちゃったから声かけたくて。……何か都合悪いとか?」


 気のせいか優美と名乗る人がわたしを見てるような。


「そんなんじゃねえけど、今から用事がある。だから悪いけどさ……」

「……もしかしなくても、そこの人って彼女?」

「いや……」


 あからさまに品定めされてる。


 ……そんな目で見られても困るなぁ。


「えっと……?」


 そう思いつつわたしも見てしまうけど。


「あ、綾希、悪ぃ! 紹介が遅れたけどこいつ、前の学校の優美っていってただの友達。それだけ」


 前の学校? 


 ……あぁ、そっか。そういえば七瀬って編入してきたんだった。早くに馴染んだせいか忘れてた。


「あ、どうも。七瀬の隣人です」


 うん、いつもどおりの対応。


「――は? 隣人ってなに?」

「あぁ、綾希とは席が隣なんだよ。で、お前なにか用あんの?」

「用でもないけど、こんなとこで会えたしどっか行かない? 久しぶりだし?」


 用がなくても嬉しそうだったよね。


「悪ぃけど、俺は用があるから無理」

「ふぅん……? 用って、この人と?」


 何か勘違いはいってますか? 

 でも、何で七瀬も慌ててるのかな?


 よく分からないけど、わたしだけ帰った方がいいのかな。久しぶりに会った関係なら、わたしは帰った方がいいよね。


 そう思って七瀬に声をかけようとしたら、七瀬じゃなくて彼女に声をかけられた。


「輔のこと、好きなの? だったらライバル――になるっぽいけど」

「……何が?」

「どこか行く約束してたっぽいし、今度は遠慮よろしく! じゃ、そういうことでまたね、輔」

「って、おい!」


 よく分からない宣戦布告をされたまま、彼女はどこかへ歩いて行ってしまった。


 ライバルって何だろう? 


「綾希、何かごめん」

「七瀬。あのさ、ライバルってどういう意味をいう?」

「同じこととかモノとかを争う、だったけど……どうした?」


 同じこと、同じモノ……?


「……わたしって、ライバル?」

「いや、どうだろうな。好きだったらそうなのかもだけど、今のところ分かってないだろうし……」

「うん、分かってない」

「え、えっと、今から行くよな?」

「だっておごるし」


 動揺を見せる七瀬だったけれど、わたしはそんな感じにはなっていなくて、でも何かモヤモヤ。


「だよな! てか、後で話す」


 ライバルにもなってないのに宣言されてもね。好きとか、別にそんなんじゃないし。


 今はまだ……。


 そう思いつつ、何だか腹が立った。


「綾希、何か怒ってたりする?」

「……何が?」

「なんつうか、いつもよりも更に絡みづらい気がする」


 あれ、もしかして分かりやすく顔に出てた?


「んん、特に変わってないかと」

「ん~~いや、分かるって。だから、ごめん!」


 七瀬曰く、わたしが七瀬に怒っている――らしい。


 でも、たとえ七瀬に彼女がいても正直言って、そうなんだくらいしか思ってなかった。


 ただ、勝手にライバル扱いされたのが嫌だったくらいで。だから怒る相手は彼にじゃない。


 それなのに、そう思わせてることが余計に腹が立った。もちろん自分に。


「好きなの? とか聞かれて嫌だっただろ。本当にごめん。別に好きじゃないだろうし、あいつが勝手なこと言ってて何かその、何ていうか……」

「あ、七瀬のことなら嫌いじゃないから」

「――えっ?」


 これは本当のことだし隠す意味も無い。今はそれ以上の言葉がまだ出てこないだけ。


 本当にそれだけなんだよね。


「えと、あれ? マジですか!?」

「ん、嫌いじゃない」

「うん? キライジャナイ……あぁ、だよな。そりゃそうか」

「どうしたの?」

「何でもない。大丈夫です……本当に」


 七瀬は直後、すごく大きなため息をついていた。

 

 何かおかしなこと言った? 


「本当に面白い奴だな。ちと、聞くけどよい?」

「どうぞ」

「付き合ってる奴、いる?」

「今はいない。最近までいたけど、振ったから」


 これは隠すことでもないし本当のことだから正直に言ってみた。七瀬は出だしは喜んでたけど、冷静になったのかすぐに首を傾げていた。


「振った? 綾希が?」

「そう」

「何でかは聞かないけど、理想高いとか?」


 理想じゃなくて、本当に何となくなんだよね。


「何となく」

「あ、うん……分かった。もう聞かない。そいつと俺は違うし、気にしない。俺、こう見えて根性ある奴だし。綾希の気持ちが聞けたのはマジで上がった。だから、やる気出す!!」

「よく分かんないけど、応援するから」

「そうか、サンキュな」


 お店に入るまでの途中、わたしは少しだけムカッとしていた。けれど、彼と話をしていたら良くなった。


 ……嫌いじゃない。今はこんなことしか言えないけど。


「んじゃ、今日はサンキュ。また明日な!」

「ん、またね」


 その場で七瀬と別れて家に戻ろうとすると、偶然にも沙奈と弘人に出会った。やっぱり()()()()関係なのかなって感じで歩いていた。


「あれ? 綾希じゃん。何してんの?」

「帰るとこ」

「方角同じだし、一緒に帰る?」

「うん、いいよ」


 普段沙奈が誰とどうしてるかなんて気にしたことのなかったわたしだったけれど、どうしてか、今日は気になってしまった。


「沙奈って、その……付き合ってる?」


 ――って、聞いた途端、二人は顔を見合わせながら苦笑いしていた。おかしなことを言ったつもりなかったけど、違ったのかな?


「違う違う! あたしが好きな人、別だから。弘人とは全然違うし!」

「あ、そうなんだ。知ってる人?」

「ん~……まぁ、そうかな」


 何となく聞いちゃいけない空気だったけれど、これくらいはいいよね?

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