7.そこは意識するとこじゃない
「葛西って、何でもいける?」
「肌弱いからアクが強くなければ何でも」
「分かった」
うぅっ、予算不足でしたごめんなさい。
おごると言っておきながら、結局自分たちそれぞれで支払ったという事実。それもあったけれど七瀬がおごることをよしとしてくれなかった。
それって多分、プライドってやつ。
「はぁ~~生き返った。悪ぃな、付き合わせて」
「元はと言えば、だし。平気」
「……てかさ、あいつらって何なん? 読まねえよな。やっぱり合わねえわ」
「沙奈は悪気なかったと思うけど、彼はちょっと不明。あんまり話したことないけど、確かに合わないかも」
「他にいないの? 仲いい奴」
痛いところつくなぁ。
「春眠」
「人、な。それは違うから! 面白いな、お前」
「ウチの学校って一年ごとにクラス変わるから、仲良くなっても続かないんだよね」
「いや、続くって! 同じとこにいるだろ? 話くらいするはずだ」
距離感の問題が出てくる感じかも。それか、結局のところわたしが冷めてるだけ。
「なぁ、葛西って……」
「なに?」
「いや、いい。やめとく」
この流れって多分アレだよね。でもわたしはひねくれものだから。
「言いかけると気になるとでも? ごめん、その辺気にしないです」
「だと思った。そのうちでいいや。葛西は時間かかりそうな気がするし」
「……綾希でいいし」
「お? なに、名字は気に入らない系?」
「担任っぽいから好きじゃない」
わたしのことを名前で呼ぶ人は限られていて、ほとんど女子だけ。あまり気にしていなかったというのもあったけれど、名字呼びは教師が呼んでくるから好きじゃない。
それより名前呼びの方がマシ。名前で呼ばれたからってどうということはないわけで。
「じゃあ、俺のことも……」
「それは別なのでいいです」
「あぁ、うん。ですよね」
なんかがっかりしたような表情を見せている七瀬。
だけど、わたしの名前を呼ぶのとはきっと意味が違うはず。
「綾希は、ずっとそんな感じか?」
「どういう意味で?」
「何ていうか、話し方とか?」
これが自然です――とでも言うべきなのかな?
もちろん本当はそうじゃないけど、そうなるまでってどれくらいなんだろうか。そもそも席がお隣さんなだけの男子に馴れ馴れしくするのは正しいの?
「あーうん。そうじゃないけど、それが?」
「ま、それがいいって奴もいるから気にすんな」
「そうする」
元カレとのやり取りってどうだったかな。
いつもこんな感じだったような気がしないでもないけど。そもそも意識の欠片もなかったし、手を繋いだことなんて無かった気がした。
そんな機会が今後あるのかは不明だけど、変われるのかな?
そうなるのがどこの誰かは知らないけれど、七瀬を見ながら何となく――。