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きみのその手に触れたくて 〜リメイク〜  作者: 遥風 かずら
第五章 ラブ・カルテット

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58.涙を見せる相手

 弘人を追った雪乃が自販機コーナーの方に行ってから、時間にして約十分くらい。


 もしかしてジュース買い込みすぎて動けない? 


 などと呑気なことを思いながら動こうとしたら動けなかった。考えてみれば、わたしの手はずっと七瀬に繋がっているままだった。


「待て、綾希」

「なぜ? もしかしたらジュース買いすぎてるかも……?」

「違う。林崎あいつには泉さんがついてる。それに、お前が行かなくても大丈夫だから」

「七瀬。凄く手が強いけど、なんで?」

「行くな。今、綾希を離したくない。……痛いか?」


 何だか必死そうにわたしを抑えてるけど、七瀬はきっと分かってるんだ。


「平気。七瀬がそういうなら行かない」


 わたしよりも背が高い七瀬には、弘人たちが向かった先の展開が見えているのだろうか?


 彼が掴んでいるわたしの手は痛くはないけれど、ギュッと強い力で掴まれている。七瀬が心の中で思ってることがその手を通して、何となく伝わってきたようなそんな気がした。


 だから黙って大人しくふたりを待つことにする。


「ひ、ひろくん……そ、その、何ていうか~」

「泉さん。オレ、フラれちゃった。最初から分かってたんだ。別に席が隣じゃなかったからとかそんなのは関係なくて、ちょっとの差だったかもしれない。でもさ、オレじゃダメなんだよ。オレじゃ……」

「ひろくん……」

「泉さん。オレ、オレさ……好きになる資格ってあるのかな?」


 泣きそうな顔を見せる弘人に対し、雪乃は――


「――あるに決まってるよ! この私が保証するし! だからさ、えっと……」

「ありがとう、雪乃さん。オレ、しばらく壁にキスしまくるから、だから戻ってていいよ」

「や、ひろくんの近くにいるし。近くにいるけど、存分にキスしてていいから」

「うぅぅぅぅ……」


 十分どころか三十分くらい経っても雪乃たちは戻って来なかった。その場でしばらく待っていたけれど、流石に待ちきれなかったのか七瀬は歩き出していた。手を繋がれたままのわたしには拒否権なんてなくて、引っ張られるままに足を動かすしかなかった。


「どこ行く?」

「……そうだな。あいつらは多分しばらく帰って来ないだろうし、屋上に行こうぜ!」

「外に?」

「そう、外で空を見る!」

「すでに高いのにさらに高い所が好きなんだ?」


 なぞなぞ的な?


「関係なくね? とにかく行く。しっかり掴まってろよ? 綾希飛ばされそうだし」

「それこそないし」


 いくら屋上で風が強く吹いていても、飛ばされるとかそんなに軽くない。でも、なぜか分からないけど七瀬は嬉しそう。外は凄く晴れていて、外で青空を見上げるっていうのもいいのかもしれない。


「ほら、行くぞ」

「うん、行く」


 七瀬のわたしを引っ張る七瀬の手が一段と力を増したような、そんな気がした。

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