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きみのその手に触れたくて 〜リメイク〜  作者: 遥風 かずら
第五章 ラブ・カルテット

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53.構ってほしいくん

「七瀬くん。もうすぐひろくん、終えるっぽい。だから、あやきちの家に行って」

「え? 何で俺が綾希の家に?」

「一回行ってるんでしょ? それなら色んな言い訳しても多分通じるし。店に行ってからだとひろくんが警戒するから。お願い~」

「分かった」

「おけおけ。頼みました!」


 弘人からもうすぐ終わるからお店に来ていいよ――そんな連絡がきたので、外に出ることに。だけど自宅を出たら、七瀬がわたしを待っていた。


 何でわたしの家に来ていたのかな?


「七瀬?」

「よ、よぉ……」


 いつにもまして緊張してるのは何でだろ。


「なに?」

「お前、これからどこかに行くのか?」

「弘人が奢ってくれるからそのお店に」

「そういえば綾希。あいつがバイトしてる理由を詳しく聞いてるのか?」

「確か貯金」


 そんなことを言っていた気がする。


 本当は奢るって話も遠慮した方がいいような気がしているけれど、誘ってくれているのにそれを拒否るのも悪い気がして。


「……俺がお前の分を出す。だから、あいつに貯金させてやれよ。その方が少しは気が楽だろ? 週末も金使うのにきついんじゃないのか?」

「え、何で七瀬が?」

「だって、俺と友達だろ? それに俺が奢りたいだけだし」

「あ、そうなんだ? じゃあ七瀬が奢るってことで!」


 何だかよく分からないけど、七瀬がそうしたいなら任せるだけ。


「おぅ」

「やっぱり七瀬の正体は子犬なの?」

「そうかもな。綾希に構って欲しいっていつも思ってるし」


 そうなんだ?


 離れた……とか思っていたけど、七瀬はわたしからプチ家出みたいな感じで離れたのかな。もしそうなら、わたしもそばにいて欲しい。


「お前、あいつのことどう思ってんの?」

「弘人? 弘人は仲のいいお友達。とても優しくてイイ子」


 仲はいいと思うけど。


「好きとかじゃないのか?」

「……好きとかよく分からない。なんで?」

「別に、訊いてみただけだ。何でもないから気にすんなよ」


 弘人に対し、そんな気持ちにはまだなってない。七瀬の時ははっきりと気持ちが出たのは確かなのに。


 そんな七瀬とは全てが終わったかと思ったのに、終わってないのか終わらせたくないのかなぜかこうして来てくれている。


 弘人は確かに優しいけれど、やっぱり彼のことが好きなのは雪乃なんだよね。それを知っているからわたしが弘人に――ってなるのはちょっと考えられない。


 そんなこんなで構ってほしいくんこと、七瀬とバイト先のお店に入ったら弘人の落ち込みようが半端なくなっていた。ふたりでって言ったのに七瀬が一緒だったから、それで気を悪くしたのかもしれないけど。


「……ごめんなさい」

「いや、いいよ。そうだろうとは思ってたし」

「悪ぃな、林崎」

「……別に気にしてない」


 わたしには怒ってないみたいだけど、七瀬の言葉にはムッとしてるのはどうしてなんだろ?


「……ってか、綾希の分は俺が出す! 林崎。お前は負担しなくていいぞ」

「え?」

「弘人は貯金しないとだから。今日は七瀬の奢り」

「でも、俺から誘ったのに。部外者のお前が何で出すって話になってんだよ!」

「貯金しとけって気を遣ってんだろ。それに、奢るとかは他の……」


 何でか空気が悪い?


 そもそもふたりとも友達じゃなかった?


 もしかしたら沙奈と同じように敵になってしまっているのかな。でも、そういうのをわたしが訊くのはおかしいし見守るしかないよね。


「何で邪魔するのか理解出来ないな……」

「俺が直接顔を見てないと安心出来ないからだ。それだけだ」

「お前がそれを言うのかよ。自分から離れやがったくせに! 本来そんなのを言う資格なんてどこにも……」

「だとしても俺は綾希を見てたい。それがお前の邪魔になってるんなら謝るけどな」


 そんなにわたしの顔の面白さにハマってしまったのかな。

 

「七瀬って、わたしの顔が面白いから好きなの?」

「いいや? 面白くはないけど。ただ見ていたい、そんだけ」


 今までずっと隣だったし顔が間近で見られなくなったから、それで寂しくなったのかも? 


 そうだとしたらこの感覚はおかしくないのかな。面と向かって七瀬にそう言われて悪い気はしないんだけど、弘人はきっと面白くない。


 多分怒っている。


 ――つまり、弘人にとって七瀬は本当の敵なのかもしれない。

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