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きみのその手に触れたくて 〜リメイク〜  作者: 遥風 かずら
第五章 ラブ・カルテット

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46.七瀬トライアングル③

「なんで弘人はいつもひとりなの?」

「え……」


 七瀬と友達じゃなかったの?


 それとも席が離れたうえに、沙奈が近くにいるから近付きたくなくなった?


「前も言ったけど、俺も同じだよ。七瀬以上に本当は騒がしいのが苦手なんだ。だからこうしてひとりでいるんだ。別にあいつは関係ないし、葛西さんが関係してるとかそういうんじゃないんだ」


 そうなんだ、七瀬と同じなんだ。それなら無理強いは出来ないよね。


「雪乃とは食べないの?」

「まぁ、何て言うか……まだそこまではって思ってて。もちろん、これは俺の問題でもあるんだけどね」


 雪乃への気持ちが全くないわけじゃないってことなのかな。


「葛西さんこそ――」

「前から気になってたけど、どうしてわたしと距離を取ろうとするの?」

「え? だって、七瀬……」

「七瀬は関係なくて。弘人とわたしは仲がいい友達。違う?」


 何となくだけど七瀬がわたしを名字呼びにしたのとは意味が違くて、弘人はずっとわたしとの距離感が開いたままだった。それがどうしても気になっていた。


 もしかしなくても、それって告白したことが関係しているの?


「そりゃあね、気を遣うよ」

「別に、わたしの名前ごときに意識なんてしなくていいしいらない。だから、弘人も気軽に綾希って呼んでいい」

「そ、そっか。仲良し……そう言われればそうなのかな。俺は沙奈と違ってこうして話が出来てるわけだし、可能性も残ってるって意味なら……」


 ちょっと弘人が難しいことを言っている――そう思って、弘人が見ている前でわたしは思わず首を傾げてしまった。


「あ、あぁ、ごめん。俺が勝手に言ってることだから気にしないでいいよ。えっと、綾希さん……」

「うん。これでもっと仲良し?」

「は、ははは……そうだね」


 七瀬がずっと気にしていたわたしへの名前呼び。


 でも、そんな大したことがないものに意識する必要はないわけで、それに今の七瀬はあえて呼び方を使い分けしてきている。


 七瀬と付き合っていないけれど呼び方とか態度が違っていて。


 何らかの考えと想いがあるのかどうかなんて、わたしには分からない。名字でも下の名前でも七瀬に呼ばれて嫌だと感じたことは一度も無いのだから。


「綾希さん。それでその、今は付き合ってないって、つまりそれは……」

「……うん?」

「俺にもチャンスがあるってことなのかな?」

「んん? 分からないけど。でも、多分あるかも?」

「あ、あのさ! 俺は綾希さんともっともっと仲良くなりたいって思ってるんだ。だから、えっと……いま、七瀬とか他の誰とも付き合ってないなら俺と付き合ってくれないかな?」


 弘人もわたしとの距離を感じて寂しく思っていたのかな? 


「もっと仲良く付き合うの? それなら付き合――」

「綾……おい、葛西!! もうすぐ昼が終わんぞ!」


 声がしたと同時に時計塔を見上げてみると、もうすぐ予鈴が鳴る時間になっていた。


 もしかして、時間が危ないことを教えにきてくれたのかな?


「本当だ! 七瀬、ありがと。わたし、先に行くから。弘人、またね」

「……う、うん。またね、綾希さん」


 やっぱり七瀬も弘人と話がしたかった?


 こんなギリギリの時間になってまで屋上に来るなんて。わたしと沙奈の関係と違って男子の友達は照れ隠しとかそういうのがあって素直になれないものなのかな。


 もしそうなら少し羨ましい。


「綾希さん……? へぇ? 林崎。お前いま、あいつに何を言わせるつもりだった?」


 綾希のやつ、相変わらず言葉の意味を分かってないな。


「さぁ? お前こそ何でここに? 別れたくせに何で綾希さんの傍にいようとする? そういう意味じゃ、あのしつこい奴と変わらなくね? 自分で元彼って言ってる奴と」


 ……ちっ、アレと同じにするなよ。そんでやっぱり、綾希の前でだけ猫被ってたな。


「別にお前に話すことじゃねえよ。それに、俺は葛西につきまとってなんかいない。あんなのと同じにされても反応に困るな。それに葛西とは友達だ。同じクラスの女子と話くらいはするだろ? お前こそ似たようなもんじゃないのか? それとも、意味すら分かってなかった葛西と付き合えるもんだと思ってたのかよ?」


 反応が分かりやすい奴だな。そんなことだろうとは思っていたが。


「七瀬には関係ないな。俺はお前とは違う。俺なら、少なくともあえて突き放して悲しませたり、泣かせたりなんて絶対にしない! どうせ本当の気持ちを綾希さんに話してないんだろ? それとお前の元カノのことも。俺と彼女がお前に隠してたことなんてそんなもんだったけど、お前自身が元カノのことをはっきりさせてねーじゃん! だから綾希さんを不安にさせたんだよ。言っとくけど、そういう半端な気持ちしてんなら俺が綾希さんと付き合う!」


 屁理屈ばかり並べてうるさい奴だ。林崎も別の女子の気持ちに応えられずに逃げてるだろうに。


「うるせーよ。悪ぃけど、お前にはぜってぇ渡せねー。お前を想ってる子のことを放置しとくような奴にあいつは絶対に渡さない!」

「あ? 何のことだか知らないけど、説得力がないな。時間やばいし、俺は行く」


 急いで教室に戻るわたしを抜きに、七瀬と弘人が屋上で言い合っていた――それを知るのはそんなに遠くない。


 そんな七瀬と弘人とわたし、そして雪乃。


 四人の関係が想いとともに、少しずつ変わっていく――そんな予感があった。

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