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きみのその手に触れたくて 〜リメイク〜  作者: 遥風 かずら
第三章 彼と彼氏と友達

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35/75

35.葛西兄と七瀬と葛西家のお姉さん?

「葛西さんはとても静かで、真面目に授業を受けていまして。それから、進路についてですが……」


 今日は三者面談。


 ()()なら親とわたしと担任だけのはずが――。


「綾ちゃんは就職して、俺がいる会社で働きます!」

「え? お兄さんは普通の会社員と聞いていますけど……」


 なぜか兄が加わっていて先生に迷惑をかけている。


「先生。()()()の言うことは気にしないで下さいね。綾希はちゃんと進学を考えさせますので」

「お母様にこの人呼ばわりなんて悲しいんですが……?」


 ……本当に兄は仕事をしているのか疑いたくなる。


 担任にまで変な家認定されてどうするの。


「えっと、葛西さんは進学する方向で合ってる?」

「まだ決めてなかった」

「そ、そうだよね。でも自分のことだからなるべく早く決めておいてね」

「はい」


 そんな感じで特に何事もなく三者――四者面談? は終わった。廊下に出たところで七瀬とバッタリ出会えた。


 それは良かったけれど。


「お、綾希。面談だったんだな。俺は明日だからだるい」

「応援する」


 話してる最中に母も廊下に出てきた。


「あ! 綾希のお姉さんッスよね? 大変ですね。親代わりに面談に来るのも」

「うふふっ。お姉さん……いい響き」


 ああ、これは良くない。


「七瀬。ちょっとこっち。あのねお姉さんは実は違くて、わたしの――」


 ずっと間違った認識をさせて母の勘違いも増長しそうなので、七瀬にはそっと耳打ちして教えてあげることに。


「……えぇ!? は、母親? マジかよ……。流石親子だな~綾希にそっくりだから勘違いしてた」


 そう言うと七瀬は母に向き直して、深々と頭を下げた。


「すみませんでした!!」

「ううん、いいの。お姉さんなんて言われて嬉しかったし。七瀬くん、また家にいつでも来てね!」


 七瀬に言われてまんざらでもなかっただろうし、むしろ嬉しかったんじゃないかな。


「……七瀬って、天然?」

「いやいや、お前に言われたくねーよ」


 そして、さっきからわたしの後方で全身をわなわなと震わせている人がいて、そろそろ文句を言いそう。


「おい、そこの失礼すぎるお前! 綾ちゃんに向かってお前とはなんだ! お前とは!! せめて名前だろ!」

「ん? あぁ、スーツのお兄さんか。こんちは」

「き、貴様ぁぁぁ!! お、お兄さんと呼ばれたくないぞ! ……と言うか、綾ちゃんから離れろ! しっしっしっ」


 何をそんなにムキになっているんだろう。しかも犬を追い出すようにして。七瀬は子犬っぽいけど、それはわたしだけが思っていることなのに。


 相変わらず兄は空気が読めないし、無駄にムカつかせてくれる。


 あ、そういえば。


「七瀬。このスーツの人、一応名前があるけど聞く?」

「どっちでもいいけど、お兄さんと呼ばれたくなさそうだし名前を知っといた方がいいかもな」


 わたしとしてもどうでもいいけど、とにかく面倒だし教えた方が良さそう。


「スーツの人の名前は葛西かさい 俊太しゅんた

「俊太さんか。俊太さん、俺は七瀬輔です」

「なぁにぃ~!! 輔だぁ? 何を偉そうに――」

「――俊太。もう帰っていいよ」

「え? いや、でも……綾ちゃん?」


 これ以上ここにいられてもうるさくなるだけだし。


 それに、


「七瀬に酷いこと言うつもりならお家で一切目も合わさないけど、いい?」

「そ、それは駄目だ!! ちっとも良くない! あ~七瀬君。また会おう!」


 そう言って兄は母を置いて帰っていった。そもそも年下の七瀬には負けてないって思うのはおかしいでしょ。


「あや。私も帰るからね。それと、七瀬くん。あやをよろしくね」

「はい」


 兄がいなくなってすぐに、母も学校を後にする。


 うちの家族って何だか騒がしすぎない?


 母もいなくなったところで、今まで我慢していたのか七瀬が突然吹き出す。

 

「くっ、も、もう駄目だ! あはははっ! や、やっぱ、お前の兄さん半端なく面白いわ。綾希が面白いのも頷けるぞ」

「や、()()と同じにされても」


 そういえば七瀬には兄弟がいるのかな。


「七瀬にはああいう兄とかいるの?」

「ん? あぁ、俺はいない。だから綾希の兄さんとか見てると、少しだけ羨ましく感じる」

「いつでもあげる」

「それはお兄さんが可哀そうだろ。流石に返事に困るな」


 七瀬が寂しそうな表情を一瞬だけ見せたけれど、あんな兄でも兄妹がいるといないとじゃ違うのかな?


「……綾希、帰るだろ?」

「帰る」

「じゃ、行くか」


 七瀬の家にも行ったことはないけれど、ひとりで寂しくしてるなら行ってあげたい。


 彼の横顔を見ながら、何となくそう思った。


「……ちょっと暑いな。もうすぐ夏か」


 季節はもうすぐ夏になろうとしている。


 夏といえば忘れかけていたことがあったような気がするけれど、今は気にしないことにした。

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