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きみのその手に触れたくて 〜リメイク〜  作者: 遥風 かずら
第三章 彼と彼氏と友達

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24/75

24.泣きの溺愛兄と泣かせの七瀬

「綾希、俺の後ろにいろ」


 そう言って七瀬は、わたしを守るように兄に立ちふさがろうとしてくれる。


 だけど、


「駄目。そうするとタオルを取られる」


 嬉しいけど、今はわたし自身が頑張らないと。


「や、タオルくらい……」

「だって七瀬の汗……じゃなくていい匂いがついてるし、七瀬の汗も染みついてるから」


 せっかくの七瀬グッズをみすみす取られるなんてあり得ないし。


「それはそれでまずい。それよりも、そいつは誰なんだよ? 気安く綾ちゃんって呼んでる時点でどうかしてるぞ!!」

「七瀬も呼びたい?」


 思ったより七瀬が興奮してる。


 どうすれば丸く収まってくれるのかな?


 やっぱりわたしの名前を省略して呼んでる兄が問題なのかな。それ以外にも怒るポイントがありそうではあるけれど。


「綾希が許可してくれたら俺は呼びたい。ともかく、そいつを追い払わないと何にも出来ないだろ」

「綾ちゃん綾ちゃん! このナンパ男は何者? 良かったら優しく、出来れば耳元でこっそりとお兄ちゃんに話してくれないかな?」


 何でさらにキモいこと言ってるの?


 もしかして七瀬に変な対抗心でも芽生えた?


「お兄ちゃん……? って、本物か? ん? そういや家の人が来てるって言ってたのはこの人のことじゃないよな?」

「えっと、このスーツ男……一応、わたしの兄……」

「マジかよ……。本物ならいいんだ。だけど、変態っぽい人で安心出来ないぞ」


 うん、それはわたしも同意。事実変態だし、会社サボりーマンだし。


「なんだとぉう! そういうナンパ男こそ、俺様の綾ちゃんに近付くなよ! しっしっ!」


 そう言って野良犬を追い払うような手の動きを見せるとか、何なの本当に。七瀬は可愛い犬なのに。


 とにかくうざい。


 七瀬に失礼な事言わないでほしいのに、全く逆のことをするし言うし。どうしてここに来ちゃったのかな。


 七瀬はわたしの救世主だからいいとして、兄をどうすれば追い払えるのだろう。こうなったら、わたしが普段あまりやらない動きと言い方で何とかするしか。


「そこの兄!!」

「は、はい!」


 右手の人差し指で兄を指して動きを止めさせる。


 そしてすぐさま、七瀬の前に出て立ちふさがってみた。


「この人はわたしの彼氏のたすく。だから邪魔しないでくれると嬉しいから」


 ここまで言えば分かってくれるはず。

 

「か、彼氏!?」

「た、輔!?」


 顔を見合わせながらどっちも驚いてるってことは、どっちにも効き目があったってことだよね。


「あ、綾ちゃん……うぅっ、グスッ――」


 何で泣くの!?


「俺を輔と呼ぶなんて、いつの間にお前の好感度が一気に上がってたんだ?」


 泣き出した兄ほど厄介なものはない。こんなことになるのは予想出来たけど、まさかこれが原因で出社拒否らないよね?


「……うぅぅっ、もういい、俺は家に帰っちゃう。ぐずっ……綾ちゃん、どうか僕たちのマイホームには帰って来てね!」


 言い方!


 変な方に拗ねらせないで欲しいのに。

 

「家に帰るのは当たり前。じゃあお兄ちゃん、さよなら~」

「――うおおおおおおおおお!! 今すぐ帰ります帰りますとも!!」


 『お兄ちゃん』という言葉。


 普段から塩対応なわたしがほとんど口にしない言葉を言えば、確実に素直になってくれるし、これが一番効果がある。


「ふぅ、やっと帰ったな。というか、兄貴がいたんだな。しかもかなりやばい兄貴が……」

「七瀬が兄を泣かせたから帰った」

「――って、あれ!? 七瀬に戻った? な、何で。俺、お前を助けたよな?」

「救われた。けど、泣かせは良くない。だから、減点」


 咄嗟に下の名前で呼んだけど、もう少し待っててほしい。兄を帰すのに一定の効果もあったけれど、それでもまだ慣れが必要だし。


「や、今のはどう考えても俺じゃないだろ。綾希が俺を紹介したから兄ちゃんが泣いたんじゃないのか?」

「両成敗?」

「くぅっ……」


 そろそろ七瀬を許さないと七瀬も泣きそうな予感。

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