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きみのその手に触れたくて 〜リメイク〜  作者: 遥風 かずら
第二章 隣の席のカレシ

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19.七瀬の手と優しい理由

「おめでとう綾希! 俺のおかげで赤点免れたな」

「感謝」

「――ってか、真面目系女子だとばかり思ってたのに、お前本当に寝てばかりだったんだな。そう考えたらマジで俺に感謝してくれていい」


 七瀬のおかげで、中間は赤点を回避出来た。七瀬の言う通りわたしは真面目そうに見えてた女子。彼と話すようになる前から席でずっと春眠の惰眠だったから、決して成績点はよろしくなかった。


 でもおかげでいつもよりいい点を取れたということで、七瀬と近くのカフェに来ていて祝われてる。


「感謝のお礼に何が欲しい?」

「ん~……って言われてもな」


 こういう時、大抵は見返りで何かを求めてくるというもの。それが元カレとの付き合いで得た知識。


 だから、きっと七瀬も何かが欲しいと言うと思ってた。


「もしかして、テストのお礼ってやつ? 言われるまで気付かなかったな」

「そうなの? じゃあ、いい……」

「よくねーし。ご褒美見せかけといてお預けくらうとか、かわいそうだと思わん?」


 結局どっち?


「かわいそうな子犬」

「子犬……? よく分かんないけど、考えるからちょっと待って」


 何だかんだですごい嬉しそう。だからといって凄いものなんて贈れないんだけど。


「綾希、俺のことを名前で呼んで欲しい!」

「七瀬」

「ちげー! いや、名前だけどそうじゃなくて、たすくって呼んで欲しいな、と」

「呼んでなかった?」

「いや、それは沙奈あいつだろ……」


 そういえばそうだった。沙奈と同じになるから嫌だったんだよね。


「考えとく」


 沙奈が輔呼びしたり、弘人呼びしたり簡単に下の名前で呼んでいた。彼女は今まで特に意識してない子だったろうけど。


 友達なら意識も何もないけれど、でもまだ七瀬の方がいい。


「そ、そか」

「わたし的に、七瀬って呼びたい。その方が好き」

「そっか、好きならそのままでいいや」

「……わたしも七瀬から欲しい」


 これは七瀬の望むものとは別の意味。

 

「じゃあ、一杯分奢る」

「違う」


 一緒にいてそばにいるのに全然触れてない。唇とか肌は触れているのに。凄く近いはずなのに、どうしてそれが出来てないんだろ。


 こうして話してる時の距離は近いのに。


「じゃあ、何?」

「手……」

「手? あー握手か! いいよ、ほい」


 すごい簡単なはずなのに何で分かんないかな。


「……帰る」

「あれ、何でキレてる? 握手じゃないの? って、あ……」


 このままだと無理っぽい。だから途端に帰りたくなって、七瀬を置いて店を出た。


 隣の席で、家にも来たのに何でかなぁ。


 彼氏なのに……何で分かんないかな?


「綾希! 先、行くなよ~」

「そう言いながら追い越して、そのままどこかへ行くの?」


 走ってきた七瀬。


 ゆっくり歩いてたわたしを追い越して、振り向きざまに右手を掴んできた。


「いや、悪ぃ。このままだとお前、どこか行きそうだから掴んどく」

「それでいい」

「走って疲れたし、しばらくこのままな」


 なんかようやく七瀬の手に触れた気がする。いつもじゃなくていいけど、やっぱり嬉しい。


「綾希の手、冷たいけどなんかいいな」

「七瀬は温かい、違う。生ぬるい?」

「お前、素直じゃねえな。ま、いいけど。この後どうする?」


 素直じゃないのはお互い様だと思う。


「家庭訪問に来ていい」

「いや、それはまた今度で。その辺、歩くだけってことでよろしく」

「……ん、分かった」


 七瀬の手に初めて触れてる。何をするわけでもなく、ただ手を掴んでるだけ。手よりも先に色んな所に触れちゃってるけど、何でこんな簡単なことが出来なかったんだろ。


 腕を伸ばせばいいだけの距離なのに。


「なぁ、綾希。聞いていい?」

「嫌です」

「何も言ってないって! なんつうか、お前……」

「……ん」


 言葉じゃ上手く表せそうにないから先に予防線。


「素直じゃないよな。それが綾希らしいんだけど、もっと好きになっていいか?」

「なっていい」

「聞くけど俺だけが好きってわけじゃ無いよな?」

「七瀬しか好きじゃない。七瀬しか好きになれない」

「そ、そっか」


 隣の人がここまでわたしに好意と優しさを出してくるのは何でなんだろ?


「七瀬」

「……ん?」

「優しい理由は?」


 編入してきて、たまたま隣が七瀬でわたしは彼の横で寝ていただけ。机顔だけでこうまで好かれるものなのかと、ちょっと疑問。


「机顔がそんなに受けた?」


 どう考えてもそれしか思い浮かばないんだよね。


「傑作だったぞアレは。教室の中にいる女子連中って、それこそ俺が編入して来たばかりの時はおかしいくらい色んな事訊いてきて、興味持ったかと思えば好意は持たれてなかった。俺は騒がれたり騒いだりするのは好きじゃないってのに。でも、お前は他の女子と違ってた。隣になったのに話しかけるどころか寝てたしな。起きたかと思えば変な寝癖てか、机の痕なんか付けてさ。面白いって思った」


 静かな環境が決め手?


「課題とか身代わりしてたし、何でそこまで?」

「や、実は隣に座った時から可愛いって思ってた。だから、嫌だったけどあいつ……沙奈に相談した。きっかけ作ってくれって。そしたら作れた。後はもう、必死ってか綾希と話したくて頑張った」


 それでなんだ。でも、その後の沙奈が七瀬を誤解しちゃったんだよね。


「七瀬、お手」

「は? お前、前から思ってたけど俺のこと犬扱いしてんの?」

「従順だし優しいし、可愛いから」

「俺が優しく出来るのって、綾希だけだから。だからそれが理由」


 なるほど。


 わたしだから、か。


 なんて従順な七瀬。偶然なのか何なのか知らないけれど、きっかけは机の痕がついた顔ってことなんだ。


「席替えしたらどうする?」

「交換してもらう。まだ数か月あるだろ?」

「応援してる」

「席替えも決まってないのに応援とか、そういうとこお前らしいわ。とにかく、俺が綾希に優しい理由は……綾希だから。綾希にだけ優しくしてるだけだから。他に何もないし、それでいい?」

「よく分かんないけど、分かった」


 何にしても優しい七瀬。


 理由なんて別にいらなかったけれど、言われるとなんか嬉しい。


「おまえなぁ……ま、とにかくそういうことだから」

「そういうことにしとく」


 ここまで言われてもわたしの態度とか言い方とか急には変われないわけで。でも、七瀬の前でなら変わっていきたい。


 このままずっと好きでいたい。


 なんか、七瀬じゃないと駄目っぽいから。

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