12.七瀬の席は指定席
「――ん? 誰に告られたって?」
「弘人」
「あいつのこと、名前呼びかよ。で、なんて答えた?」
そう言えば呼び捨てで呼んでた。
「分からないって」
「綾希なら言いそうだな。まぁ、それはいいや。いいけど、綾希のおかげでめちゃくちゃ暑いし」
「夏がきた?」
「ちげーし! シャツってか、変な汗かいたんだよ」
変な汗?
……ってなんでだろ。気になって、七瀬のシャツに近付こうとしたら七瀬が何かに気付いて動きが止まっていた。
「……うん?」
七瀬が見ている方に目をやるとそこには。
「綾希……七瀬に何してたん?」
沙奈の姿があった。
「何って話を?」
さっきまでしていたのは話だったので、七瀬に確認の意味も込めて訊いてみた。
「いや、俺に聞かれても。お前……沙奈だっけ? ここに何しに?」
誰が入ってきたかと思えば、先生に言いにいっていた沙奈だった。わたしの言ったことを信じたかは分からないけど、一瞬だけ疑いの眼差しを向けるもすぐに笑顔を見せた。
「何って、綾希いなかったから探してたんよ。そしたらここにいたし。綾希、隣人がいないから寂しく思ってしまったん?」
「ん、多分それ」
「先生に何を言えばいいのか分からなかったし、黙っていくのはどうかと思うわ~」
「うん、ごめん」
沙奈に怒られた。
流石にまずかったかな?
でも、別に嘘は言ってないんだよね。
「で、七瀬は早退すんの? なんか、汗だくっぽい?」
「いや、さっきよりマシになった。昼前に教室戻る。風邪うつさねえし平気だろ」
「分かった。その前に、確かめとく――」
――って言ったそばから、沙奈は自分の額を七瀬の額に重ね合わせていた。
……え、何で?
「汗だくだから熱かと思ってたけど、違うぽいな」
「いいって! そんなことまでしなくても」
「熱計っただけやし。なに焦ってん?」
「そんなことされなくても、自分の状態くらい分かるって! 何の予告もなく額を合わせてこられても困るし、そういうのは好きじゃない。そもそも今まで俺に直接触れてきたのは医者と親と……」
七瀬がわたしをチラっと見るもすぐに目を逸らした。
そう言えば触った?
……というか、口をつけてたけどあれはセーフなのかな?
「とにかく、大騒ぎすんな。先生にもそう言っといてくれればいいし」
「そんならそれでいいし。昼前やな?」
「ちょっとだけ寝させてくれ。綾希も教室戻ってていいから」
沙奈がきたことで一気に疲れてしまったのかも。
「ん、分かった。七瀬の席に誰も座れないように指定席を予約済みにしとくから」
「座らないだろ。でも、予約しといていい。あそこは俺の場所だ」
指定席とか席にそんな必要ないけれど、もしかしたら休み時間に弘人とかが勝手に座りそうな気もした。
……でも、わたしの隣は七瀬じゃないと駄目。
「へぇ? 綾希、弘人からの告り、断ったん?」
そうかと思えば沙奈は弘人のことで探りを入れてきた。
何でいきなりそんな話になるの?
「良く分からないし、断ってもいないと思うけど……」
「七瀬の席には七瀬以外は座らせたくないって、そういうこと言うか~」
「 勝手に座るのはよくないし、そういう意味。なんか、おかしかった?」
さっきより怒ってる感じがしたけど、なんで?
「とりあえず寝る。二人ともそこで話してないで、早く教室戻っとけって」
「分かった。じゃ、また」
友達の沙奈との関係が分からなくなってきた。




