11.うつすと治るっていうから
何となく気にし始めてきたかも?
隣の席ってだけで話をしてきた七瀬は、春眠で惰眠を貪ってきただけのわたしの何が良かったのか――なんて、結構疑問だらけ。
それでも、決め手になったのは机顔がきっかけだったのは事実かも。そんな思いを持ち始めたわたしは、きちんと眠ってから学校にたどり着いた。
「う~~……おはよ~……」
教室に入り、席につこうとするわたしに声をかけてくる七瀬なのに、何だか様子がおかしい。
「う~? え、七瀬どしたの?」
「なんか頭が痛くて。風邪ひいたかも」
「大丈夫?」
「ぉ~~……」
いつになく元気がない。
「え、死んじゃうレベル? そしたら家に帰った方がいいよ。それか、保健室……」
「死なねえし。綾希は今日も冴えてんな。うぅ、頭いてえ」
何でか分からないけれど助けないと駄目っぽい気が。
でも、残念なことに保健委員でもなくて七瀬に肩を貸すほどの力持ちでもなく……そうなるとどうすればいいってなる。
「なになに、どしたん?」
頭の中でどうすべきなのかを考えていたら、教室に入ってきた沙奈がすぐに声をかけてきた。
「七瀬、風邪っぽい」
「え!? やばいじゃん! 綾希、支えられるんなら七瀬の左腕乗せて。ウチは右を貸しとくから」
「ん、分かった」
何事が起きたのかってくらいに、クラスのみんなが騒ぎ出す。
女子二人に支えられながら、背の高い男子が苦しそうにどこかに連れて行かれてしまう感じで。
「……いや、自分で歩く」
「無理すんなし! 肩はウチらで支えてるし、転ばさないから意識落としといて」
「落とさねえし……綾希、平気か?」
「ほとんど沙奈が支えてるし、全然平気」
そこそこ苦しそうな七瀬を保健室に連れて行き、教室に戻ろうとしたけど、どういうわけか沙奈だけそのまま保健室に残ろうとしていた。
何となく嫌な感じがする。
保健室を後にするわたしに沙奈は何も言わなかったけれど、妙な胸騒ぎ。
「七瀬平気なんかな……休み時間、どうしよっかな」
わざとっぽいのは何の為?
今の今までずっとそんな言葉を気にする必要は無かったのに、何だか凄い不安。
「教室戻って、先生にいっとこ! 先、戻るから。綾希も追いついてきといて」
「うん、分かった」
沙奈は明らかに保健室にいる七瀬を意識していた。それが、何でなのかすごく気になるくらいに。
それが何となく変な感じがして、わたしは沙奈が教室へ向かうのを見送ってから保健室に足を向けていた。
自分でもどうしてそうしてしまうのか分からないまま。
「失礼します……」
朝すぎたのか、保健医の人はまだ来てなかった。適当にベッドに寝かせてしまっていた七瀬を見る為に白いカーテンを勢いよく開けてみた。
「……ん? なんだ、綾希?」
なんだ、寝ていなかったんだ。
「七瀬、具合は?」
「……横になったから楽になったっぽい気はする」
「寝れば何でもよくなるし」
まさにわたしがそうだし。
「それもどうかと思うけど、綾希見てればそうかもしれないって思う俺は毒されたのかもしれないな」
惰眠すぎても具合悪くするけれど、今のとこ元気だからその辺を納得したっぽかった。
「そろそろ戻っていいよ。HR始まるだろ?」
「…………んん」
昔わたしの兄にやったことあることを七瀬にしていた。どうしてこんなことしてるんだろう?
嫌いじゃないから出来たかもしれないけど。
「……あ、綾希、な、なにしてんの? おま、それ……てか、え?」
「何だっけ、うつしたら治るってやつ。だからやってみた。治った?」
「治ったら綾希がやばいだろ。一瞬で風邪治せたらどれだけうつしたって感じだし。いや、でもお前何してんのマジで……」
「口をつけた」
何の意識もしなかったけど、自然としていたんだよね。
「それは分かるけど。でもこんなの、おかしいって。好きでもない奴にするのは違くないか?」
「違うかも」
「だろ? 勘違いするから、マジで……」
「好きかも」
あれ、今の答えはどっちだっけ?
「は!? ガハッ……喉やべえ。なんつった? 好きかも? 言ってることが昨日と違う……」
「弘人に告られたんだけど、そしたら自覚出来た。七瀬が好きかもって」
大したことしてないし大したこと言ってないのに、七瀬の咳が酷くなってしまったところで、誰かが保健室に入ってきた。
これがわたしの自覚の始まりだった。
そして――。




