表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

『腹の虫。』

作者: synchronicity529


『目覚めたら非日常が並べられていた。』


「魚の切り身はサプリメントに取って代わられる」という優越感と不安が連続するシークエンス、それは駄菓子のような無類のグルメという取り立てる価値がないと思われている社会共通の嗜好品かもしれません。

魚の切り身。木になっていない果物。鶏のささみ。 私の日常の中には非日常が並べられている。


それは白いポリエチレンパックの中で動くことも語りかけてくることもない。ただラップでふたをされたバーコードつきの商品が陳列されている。さもその形で生まれてきたように、こじんまりと。そこからは生温かさも濃いにおいも柔らかさも感じられない。ただ生臭い、同じ赤身のかたまりが冷蔵ケースのなかで納まりをよく陳列されている。

それを補充しているパートタイムの顔には笑みもなく疲れもない。ただ仕事の流れる早さはかわらない。

工場見学のときにみた微動だにしない美しい流れを思い出していた。幼いながらに工場の機械は生きていると感じたことを思い出した。あの機械は新鮮な命を食べていた。感情のおさまらない暴れ狂う生き物を。その生きた唯一無二が絶え間なく赤身に加工されていく。まるで輪廻転成のようにベルトコンベアーの上に乗せられている。無いようで確かにあるその工程が我々の食べる習慣に飲み込まれていく。

私たちの生活は、生き物を殺してむさぼるのが残酷なのか、生き物と認識できなくさせた利便性が残酷なのかが分からない。私の虫は右心房と左心房の間から、私の鼓動を激しく煽りたてた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ