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5章 11 ビルの告白 3

「頼む。リア、泣かないでくれ……君に泣かれたら、俺はどうしたらいいか分からなくなる。それに今、俺はここにいるんだから」


ビリーはハンカチを出すと私の涙をぬぐった。


「そ、そうよね。ビリーは……成長してしまったけれど、今目の前にいるのだから。それでその後は? 続きを聞かせて」


するとビリーは頷き、続きを話し始めた。


「リアが心配していると思い、俺はすぐに家に帰らせてくれと訴えた。すると驚く話を聞かされたよ。ここを出ても自分が元居た世界には戻れないと言われたんだ」


ビリーが何を言っているのか、私は少しも理解出来なかった。


「……え? それってどういうことなの? 世界は一つじゃないの……」


するとビリーは首を振った。


「いや、違う。一つの道から、何十、何百の世界が枝分かれして無限の世界が存在している。それこそ1本の木が無数に枝分かれしているようにね。その内の一つの世界に今俺とリアは一緒にいるんだよ」


ビリーの説明は理解出来る様で、出来なかった。


「ごめんなさい。私……やっぱりビリーの話が良く理解できないわ……」


「理解できないのは無理も無いさ。俺だって、最初は何を言われてているのか分からなかった。それでもいいからここから帰らせてくれって訴えたんだ。そうしたら魔塔主を名乗る人物が現れて、これを渡してきた」


ビリーは自分の右手を見せた。中指には指輪がはめてある。彼はいつも肌身離さず指輪をはめていたのだ。


「この指輪がどうかしたの?」


「この指輪には魔塔の欠片が埋め込まれているんだ。目を閉じて強く念じることにより、魔塔と外の世界を行き来することが出来る魔道具で魔力のある者にしか扱えない。不思議なことにはめてみると自分の指のサイズにぴったり合ったんだよ。それはこの指輪が俺を自分の持ち主と認めた証らしい」


ビリーは自分の指輪をじっと見つめた。


「その時言われたんだ。うまくいけば、元の世界に帰れるかもしれないって。もし駄目だった場合、ここに戻ってくるといい。我々はいつでも君のことを待っているよってね。何を言われているか当時の俺には、さっぱり分からなかった。だけど俺はすぐ目を閉じて指輪に祈った。リアの元に戻れるようにって。そして気付いてみれば……見たことも無い大きな町にいたんだ」


「え? 『ルーズ』の村では無かったの?」


私の言葉にビリーは頷いた。


「そうなんだ。だから近くを歩いていた女性に、ここは何処か訊ねると王都だと教えられた。……驚いたよ。まさか自分が王都にいるとは思わなかったから。そこで女性に辻馬車乗り場の場所を聞いて、乗り場へ急いだ。待機していた御者にルーズ行の相乗り馬車が無いか訊ねたところ……驚く話を聞かされたんだ」


「驚く話……?」


「『ルーズ』の村は5年前に、国を揺るがす大飢饉で滅んでしまったって。それに、『テミス』は10年前に有毒ガスが発生して……滅んでいたんだ……」


ビリーは両手を組むと、俯いた——


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