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4章 3 動揺

「……そんな。まだ……では……」


ビルが何かを呟いてるが、声が小さすぎて聞き取れない。


「ビルさん? どうかしましたか?」


それまで穏やかだったビルの顔が青ざめている。その様子はただ事には見えない。


「え?大丈夫です……何でもありません」


「何でも無いって……顔が青いですよ? 森がどうかしたのですか? それに何か今言ってましたよね?」


「い、いえ。ただ弟さんが狩をしに森へ入ったと言うことに驚いてしまっただけですよ。まだ年齢的に早いのでは無いかと思ったんですよ」


「森には大人たちと一緒に入っているので大丈夫だと思うのですが、もしかして危険生物でもいたりするのですか?」


私が知っている限り、『ルーズ』の近くの森には危険生物は生息していなかった。周囲を高い山脈に囲まれている為、オオカミやクマが生息するには不向きな土地だったからだ。


「いえ。リアさんの言うとおり森には危険生物は住んでいません。その点はどうか安心してください」


きっぱり言い切るビル。


「そういえば、ビルさんは森で沢山キノコを採ってきていましたよね?」


「はい。1人でキノコや山菜を取りに行っても大丈夫なくらい、あの森は安全ですよ」


安全だと言っておきながらも、ビルの顔色は今も青ざめている。


「本当に大丈夫ですか? ビルさん。もし具合が悪いなら少し横になりますか? よろしければ毛布をお貸しますよ?」


「いえ、本当に大丈夫ですから。それよりもリアさん。薪はまだありますか? 今日も色々お手伝いする為に来たんですよ」


「薪なら、ビルさんが大量に切ってくれたじゃないですか。この冬を乗り切れるほど十分あるので大丈夫ですよ」


「そうですか……なら、お茶も御馳走になったことですし、もう行きますよ」


突然ガタンと音を立ててビルが席を立った。


「え? もう行かれるのですか?」


「はい。元々薪の様子を確認しに寄らせていただいたのです。それに用事を思い出したので」


「用事……?」


随分唐突な話だ。けれど、ビルの顔は何だかとても切羽詰まっているように見えた。

だから、私はビルから何も聞かないことにした。


「分かりました。用事があるのなら仕方ないですね。またいらして下さい。今度は弟がいるときに是非。お待ちしていますから」


「……弟がいるときに……」


ビルがぽつりと呟く。


「ビルさん?」


首を傾げると、ビルが真剣な眼差しを向けてきた。


「リアさん……もし、この先、ビリーが……」


その時。


――ドンドンッ!


突然大きなノック音が家に響き渡る。


「あら? 今度は誰かしら?」


窓から外を見ると、本日狩に行った数人の男性達が戸口の前に立っている。


「ごめんなさい、ビルさん。お客さんが来たようなので、ちょっと行ってきますね」


「駄目だ!」


すると、突然ビルが大きな声を上げた。


「え? ビルさん……?」


「リアさんは出なくていい。俺が対応するから、ここにいてくれ」


「え? でも……」


「お願いだ! どうか言う通りにしてくれ!」


「わ、分かった……わ」


穏やかな彼からは想像も出来ない強い口調だったので、思わず返事をしてしまう。

するとビルは足早に部屋を出て行った。


ビルの様子が気になり、彼にバレないように様子を見に行くことにした。

こっそりリビングを出ると、静かに2階へ続く階段の後ろに隠れて見守ることにした――




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