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プロローグ 7

「ふぅ……少し、話し過ぎてしまったかね」


こんなに長い時間誰かと会話をするのは久しぶりで、すっかり喉がカラカラになっていた。

目の前の紅茶をクイッと飲むと、ビリーが身を乗り出してきた。


「あの、それで……?」


「何だい? それでって」


「ですから、令嬢たちに王子殿下の婚約パーティーが開催されることを聞いたのですよね? それでリアさんはどうしたのですか?」


「決まっているじゃないか。当時の私は気位の高い侯爵令嬢だったのだよ? 招待もされていない婚約披露パーティーに参加したに決まっているじゃないか」


「えええっ!? ほ、本当に参加したんですね? 大胆な人だ……」


「フン、悪かったね。でも、確かに今考えてみれば大胆な行動だったと思っているよ。若気の至りってやつだったのだろうね」


そして、もう一口お茶を飲んだ。うん……美味しい。


「それでパーティーに参加してどうなったんです?」


何故かワクワクした様子でビリーが尋ねてくる。


「随分嬉しそうだね……でも、どうなったか分かるだろう? 見ての通りだよ」


「見ての通り……?」


ビリーは首を傾げる。全く鈍い若者だ。


「まだ分からないのかい? 私がここに居るっていうことは、つまり追放されたってことなんだよ。アシルに見つかった私は、多くの貴族たちが集まるパーティーの席で断罪され、家から縁を切られて、この辺境の地に追いやられたんだよ」


「辺境の地って……そんなに辺境かなぁ?」


「ああ、辺境だよ。あんた……若いのに、ひょっとしてこの村から出たことが無いのかい?」


「はぁ……お恥ずかしながら、出た事がありません」


顔を赤らめたビリーが頭を掻く。


「そうかい、まだ若いんだから一度位冒険してみるのも良い経験だと思うよ。王都にでも行ってごらん。そうすればこの村がどんなに素晴らしいか、実感が湧くだろうから」


そう、私はこの村に来て……初めて人の温かさというのに触れた。だけど、当時の私は平民と対等に付き合えるものかと思って、意固地になり……結局孤独な人生をあゆむことになってしまったのだ。


「え……? それって……どういう意味ですか?」


「何だい? その驚いた顔は。追放された時は、それはアシルや家族を恨んだよ。何不自由なく育ち、欲しい物は何でも手に入る生活が一転してしまったのだから。この村に来て……私は初めて本当の人の優しさって物に触れることが出来たのさ。だけど気位ばかり高かった私は素直になれなくて、周囲を拒絶してしまった。素直になれなかったんだよ。だから……今すごく後悔している……って、や、やだねぇ! 私ったら一体何を言ってるんだろう 


気付けば、孫のように年の離れたビリーに自分の気持ちを吐露していた——



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