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2章6 今日からお姉ちゃん

「ふ~気持ちよかった……」


シャワールームから出てくると、ビリーは既にベッドの上にいた。


「ビリー……寝てるの?」


そっと声をかけるも返事が無い。恐らく眠っているのだろう。


「灯りは消した方がいいわね」


部屋に灯してあったオイルランプを全て消すと、私もベッドに横たわる。


「おやすみなさい。ビリー」


眠っているビリーに声をかけると、私も目を閉じた。

隣に人の気配がする……誰かが傍にいるということは、こんなにも安心出来るものなのだろうか。


「……やっぱり、誰か傍にいるっていいことね」


ポツリと口にすると、やがて眠くなってきた。


『……お休みなさい。オフィーリア様……どうぞ良い夢を……』


徐々にウトウトし始め、誰かが私の髪に触れる気配を感じながら……深い眠りに落ちていった――




—―翌朝



いつもの習慣で6時に目が覚めてしまう。

今日からは、もうドレスは着ない。ブラウスに茶色のジャンパースカート姿に着替えたところでビリーが目を覚ました。


「ううぅん……」


ゴロリと寝返りを打ったビリーに声をかける。


「おはよう、ビリー」


「あ……おはようござ……えっ!? オフィーリア様。その恰好は……」


ビリーは目をゴシゴシこすり、驚きの表情を浮かべる。


「フフ。どう? 似合ってる?」


クルリとビリーの前で一回転してみせた。


「はい。オフィーリア様は綺麗だから何を着ても似合いますけど……その服、どうしたんですか?」


今まで私のドレス姿しか見ていないから意外に感じるのだろう。


「もう、ここから先はドレスは着ないわ。元々こういう服が好きなのよ」


『ルーズ』に追放されたばかりの頃は侯爵令嬢のプライドが高いばかりに、あんな田舎の村でもドレスばかり着ていた。

しかし王都と違って、ここは辺境の村。

道は舗装されていない、土ぼこりが立つような場所で裾の長いドレスなど着ていられない。

しかも村の周囲は林で囲まれているのだ。私のドレスは土で汚れ、木の枝で引っかけて破れるわで散々な目に遭ってしまった。

ドレスなど着ないで、さっさと売って現金にしてしまった方が余程暮らしの為になっていたのに。

その事に気付くのは全てが遅すぎたのだ……。


「どうしたのですか? オフィーリア様」


ビリーに声をかけられ、我に返った。


「いいえ、何でも無いわ。ビリーも早く着替えてしまいなさい。食事に行くわよ。その後、また買い物をしたら、この町を出て次の村に向かうからね」


「はい、オフィーリア様」


頷くビリーをじっと見つめる。


「あの……どうかしましたか?」


「ええ。今、ふと思ったのだけど……いい? ビリー。今日から私のことは、オフィーリア様ではなく、お姉ちゃんと呼びなさい。敬語もなしよ」


「ええっ!? ど、どうしてですか?」


「私はもう侯爵令嬢では無いし、こんな小さい子が私をオフィーリア様と呼んで、敬語を使っていたら村の人達が変に思うわ。うまく周囲に溶け込むには、違和感を抱かれないようにしないと」


「わ、分かりました」


「分かりました、じゃなくて『うん』でいいわよ」


「う、うん……」


「よし、それでいいわ。それじゃすぐに着替えなさい」


「うん……お、お姉ちゃん……」


ビリーは赤くなりながら、頷いた――



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