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おばあちゃんドラゴンがやってきた〜超高齢なので我が家を踏みつけたりされるけどスルメ仲間だから〜

作者: リーシャ

「だめー!それ食べたらだぁめえ!」


巨大な生物が今にも電柱を食べようと棒を引っこ抜こうとしていたら、必死こいて止める。


しかし、相手は高齢者。


耳も遠ければ言葉も通じにくいせいで反応が薄い。


「エイコ、これ食べて良い?」


おばあちゃんはそう聞くが、私はだめだめと首を振る。


私は生粋の人間だが彼女は異種だ。


シンプルに言えばドラゴン。


出会った時、というか話しかけられた時はまだもう少し言葉を交わせたのだが、長命種というドラゴンあるあるのせいなのか急に話が通じなくなっていった。


「キュウティ、それは!電線って言って食べられないものなのっ。それから手を離そうかっ」


「話す?お話しね」


離すと話すを聞き間違えたドラゴン、又翼を持つ竜はノシンッとその場で座り込む。


なぬ!?


そもそもここは道路ど真ん中。


あと、やはり仕方ないことなのか私たちを中心に警察や自衛隊が囲んでいる。


どれほど威圧をかけられようがまともに言葉が聞こえないんだから、どうしようもない。


お手上げなのよ。


「そうだ。私ぶどうっていうものを探したのだけど、これしか見つからなかったわ。やぁねえ、歳をとると見つけるのが下手になるのよね」


懐から出したそれは、確かにぶどうに似ているようで別物なのが、丸わかりな色合いをしていた。


銀色でピカついている。


つやつやの絵の具感がある。


食欲が湧く色じゃ無い。


「お土産なのを忘れていたわ。忘れっぽくなっちゃったわねえ。美味しいのよ?ふふ」


凄く良いドラゴンおばあちゃんなんだけど、いかんせん被害が絶賛広がっている。


ここがまだ田舎なのが助かっている。


「はい!全部あなたの分よ。あら?周りにいる子達は貴方の兄弟かしら。ごめんなさいねえ、人数分はありそうにないわ?」


純粋に好意を寄せられている。


自衛隊の人たちは、大人で軍人なので臨機応変に対応してくれない。


いえいえ、大丈夫ですよ、くらいは言ってほしい。


「いやいや、キュウティを歓迎してるから居てくれるだけで見応えあるって」


「そう?よかったわ。おばあちゃんって気軽に呼んでね」


そんなの無理だよキュウティ。


彼女はドラゴン族のキュウティさん。


マダム感が隠しきれない性格の方なのだが、やはり体躯が大きい為にのほほんとした優しい性格でも動きで全て水の泡にしてしまう。


今も動いた分ちゃんとコンクリートに足跡のクレーターが出来てしまっている。


事の起こりは私が手鏡を持った時に話しかけられて、それがドラゴンだった彼女。


お互い名を教え合い、気の良い友人として軽く話をしたりして互いの世界のことを話していった。


キュウティは長く生きていて、一度でいいから異世界へ行きたいわと言うから。


地球なら沢山、山などあるから一緒に登ろうよと言ったことで、本当に渡れると思ってなかったことによりこうなっている。


渡っちゃったのは仕方ないと思ったのだが、どうにもキュウティの言葉と行動がずれている事にその時知る。


手鏡で話している時はテレパシーを使っていたので耳に届き、聞き間違い皆無だったらしい。


手鏡を辿り、エイコの住む土地に着地した彼女。


最初から、聞き間違えを繰り返して、隠すことが無理なまま、こうして大々的に全ての人たちにその存在を知られてしまっている。


自衛隊の人に睨まれるように見られているのは正直気にならない。


だって、このドラゴンには悪意がないから。


「キュウティ、ほら、手鏡、これでお話ししよう」


「あら、それなのね。可愛いわ」


手鏡についても説明していたので、家から持ってきた手鏡を見せる。


ふわりとそれは光り、手鏡に彼女のドアップが映る。


まるで水鏡のようだ。


波打つと、次は声が聞こえてきた。


異世界同士が繋がるんだから、こんなに近いならば、更に聞きやすくなるかもしれないという、期待。


「聞こえる?」


「あー、やっと通じそう!さっき食べようとした物は食べ物じゃないよ」


「分かったわ」


「あと、私以外の人達はキュウティの歩いた跡が残るのが気になる人達が集まっちゃっただけ」


「そうなの?それは申し訳ないわね。綺麗にするわね?」


と、宣言したドラゴンの視線がクレーターに向くとクレーター部分が平たくなって、足跡部分だけが淡い金色に変化する。


「あらあら、上手くいかなかったみたい」


「化石っぽくて良いよ。おしゃれになった」


「うふふ、エイコは優しい子ね」


いや全然。


この地域はおそらく財源があまりないのでコンクリートがガタガタだった。


綺麗に整地されて逆にありがとうと言いたい。


「キュウティ、さっきのぶどう頂戴」


手渡される絵の具色のぶどうらしき果物。


食べてみる。


「美味しい!?」


「名前は忘れたけれど大きな木に実っているのよ」


「まさに幻の食べ物だね。また食べたいからお土産頼むね。私からこれ」


キュウティに手を出してもらって差し出したのはサキイカのスルメ。


警察及び自衛隊の人たちがこいつふざけたものを出して、という眼をこちらに向けるがふざけてない。


話が盛り上がった時の過去、イカスルメを食べていたらそれは何かと聞かれて答えたら、来た時に食べたいと言われたのだ。


私達は手鏡でずっと話してきた。


そういうことで、親友なのだ。


普通なら地球にきた時点で焦るかもしれないが、手鏡で元々会話していたし相手が人外なのは分かっていたし。


驚きはしたが、帰れとは思わなかった。


予想外だったのは、本人が思っているよりも高齢ドラゴンだったことだろう。


本人に自覚が無さすぎる。


体格差でエイコにどうすることもできない。


止めることも、動かすことも辛い。


しかし、スルメイカでどうにか色々思い出してほしい。


落ち着いたドラゴンは、自衛隊の人達に事情聴取されていた。


勿論、エイコも。


しかし、語れることなどない。


本当に、彼女とは電話友達というものだったから。


「キュウティ、スルメ美味しい?」


「ええ!こんなに美味しいもの初めて食べたわ」


三日前にも食べさせたので、初めてではないけど。


しかし、キュウティのこれは大体いつものことなので、そこに相槌をうつ。


一緒にスルメやイカやタコ、つまみを食べて時間をまったり過ごす。


まさに二人で語り合っていた通りの時間を過ごせている。


自衛隊の施設に最初は連れて行かれたけど、やはり自分のいるところを忘れて、我が家へ出戻ってきた。


2回繰り返されると、自分の説明も加えられ、自衛隊やお偉いさんは諦めた。


どうやら、閉じ込められていた施設が破壊されることもなく、ぬるーんと魔法で出るので止める暇も、止められる猶予もないらしい。


魔法があるんならねえ。


「うふふぅ。来てよかったわぁ」


キュウティは今度孫を連れてくるわねと言って、スルメを丸呑みした。


エイコも、キュウティの分のスルメを網で香ばしく焼きながら、「楽しみにしてるねぇ」と笑みをこぼした。

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