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振られた同士で付き合ったら意外と幸せだった話  作者: 佐藤ヒロフミ


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失恋と筒状のアレ


 午前十時。


「う~~~~む」


 ここは何処でしょう? ええ、その通りです。ここはショッピングモール。


 色んな妨害工作も何のその、家電製品をようやく揃えた俺であったが、次は何が必要か。


 それは…………そう、インテリアだ!


 というわけで、多種多様なインテリアを物色するなら複合型商業施設がもってこいである。


 そして今現在、俺はとあるインテリアで悩んでいた。


 それは筒状で直立するオブジェ。筒の中には水が入っており、電源供給することで泡が出たり、流れたり、光ったり。


 ………………イケてない? イケてるよね。


 しかしお値段がイケてない。日本銀行券最高額が二枚ほど。


 というわけで、目当ての物体を目の前に俺は腕組みをして唸り続ける。


 店員が声を掛けようとしてくるが、俺のただならない様子から断念する様をもう五度見ている。


 それくらい長時間居座っている俺であった。営業妨害の可能性が少しはあるかもしれない。


「あれ、ジローじゃん」


 と、そこに俺の背中に声をかける人物。


 背中を見ただけでよく俺だと分かったな。よほど俺に精通しているに違いない。


 腕を組んだまま振り返る。それはラスボスかのように威厳たっぷりに。


「霜崎さんじゃん」


 みーちゃんでした。そしてその横には。


「遥も。珍しい……というより、懐かしい組み合わせだな」


 最近は霜崎さんと一緒にいることが多いのは志保ちゃんさんが多かったしな。


「今日は何しに?」


「冬服をね、少し。ね?」


 小首を傾げて遥に声を掛ける。


 …………って、あれ?


 なんか、遥元気ない?


「…………ええ、そうなんです。喫茶店が忙しくて、あまり買いに行く暇がなくって」


「………………」


 表面上はいつも通りに見える。だが、何処か無理をしているような気配を感じる。


 俺ほどの人間ともなれば、彼女の機微に気付くのなんて遥か遠くにいる母親が産気づいたのを感じるよりも早く気取ることが可能だ。


 おえ。


「ジローさん……? どうかしましたか?」


「いや、遥……なんか調子悪い?」


「えっ…………」


 肉体面か精神面か。どちらとも言えないが疲れてるような雰囲気が出てる。


「わ、わかっちゃいますか? 最近、また喫茶店が忙しくて……嬉しい悲鳴ってやつですよね」


「………………」


 霜崎さんは何も言わない。


 何も言わずに俺と遥を交互に見ていた。なんなんだろう。


「それで、ジローさんは何を?」


「俺? 新しく引っ越したし、インテリアでも増やそうかと思って……ほらこれ」


 悩んでいる筒状の物体を見せる。


「………………」


 二人の口角が引きつるのが見えた。なんなんだろう。


 暗くした室内、部屋の光源は映画の光と筒の光。


 …………イケてない? イケてるよね?


「………………」


 しかし二人の顔はイケてるとは口が裂けても言えないという表情だった。何故。


 そうか、筒単品だから変に見えるんだな。


 俺も隣に立って、筒と一緒に並んでみる。


「こっちのデカいタケノコいらないんじゃないかな」


「誰がタケノコだ誰が」


 まったく失礼なみーちゃんだ。


 しかし二人共コメントしないな、そんなにダメか?


「うん、ダメ」


 一刀両断でした。


「私も、ちょっと…………」


 はい、二刀目はいりました。


 なんで? 何故? ホワイ? 俺の感性が間違っているとでも?


「あのねジロー、こういうのは金持ちの家に置くから映えるんであって、安アパートに置いた所でそれは水が好きな変人なのよ」


 酷い言われようだった。


「想像してみなさい、姫宮先生の家に置いてあるコレと、自分の家に置いたコレを」


 ………………。


「泡を見て悦ってる変人が思い浮かんだ!」


「そう、それがアンタよ!」


 なんてことだ……。


 ガクリと膝をつきたくなるが、ここは堪える。


 公衆の面前なのだ。


「じゃあどんなインテリアがいいんだよう!」


「少なくともこれじゃないのは確かですよね」


 くそっ、遥まで!


「じゃあ選んでよ!!」


「なんで逆ギレしてんのよ……でも、私ジローの家行ったことないから、どんなのが合うかわかんないわよ」


「私も、忙しくて行ったことないですね」


 俺はスマホを取り出す。


「こちらに」


「なんで写真撮ってんのよ。筒のやつが無くても十分変人だわね。ってうわ、色んな画角あるし」


 だって嬉しいんだもん。


 口では茶化しながらも、真面目に悩んでくれる。


 そんな君たちが大好きです。


 ところが、霜崎さんはとんでもない一言をこぼす。


「……木彫りの、クマとか?」


「木彫りのクマぁ~?」


 ことさらバカにするような声で言ってみた。


 道行く人々の視線を浴びたが、関係ない。


「北海道土産ですか? 俺いつ北海道行ったんですか? それ何処に置くんですかぁ? テーブルの上? むしろテーブルどけて部屋の真ん中に置くとか。良いね! それならベッドくらいデカい木彫りのクマをぶぇっ!!」


 殴られた。


「うるさい」


 怒られた。


「ごめんなさいは?」


「ごめんなさい」


 謝らされた。


 そんな俺たちのやり取りを見て、遥はクスクスと笑う。


 話にあまり入ってこないくらい元気がないみたいだから、ふざけた甲斐もあるってもんだ。


 みーちゃんも何故か満足げな顔をしているし、木彫りのクマもこれを想定しての前フリだったのかもしれないな。


 さすが霜崎みーちゃん、策士よのう。


「小さいのでいいんじゃないかな、玄関に置くとか……」


「冗談じゃなかったの!? え、そんなクマ好き設定今更いる!?」


「別に好きじゃないけど」


 軽く口をとがらせて不満そう。


 ええ……そんな可愛こぶられても……。


「っていうか、ジローさんの部屋……何も無いですね」


「うん」


「写真を見る限り……ベッドと冷蔵庫しかないように見えるんですが」


「うん」


 その通りである。


 さすが俺の彼女、慧眼であらせられる。


「まだ荷物が届ききっていないとか?」


「いや、これで全部」


 二人は無言になった。


 俺は何が悪いのかわからないと、きょとんとした表情を見せる。


「ジローさん……インテリアよりも先に、色々買いに行きましょう」


「そうね……服はまた今度でもいいわ」


 遥は俺の腕を取って、絡めてきた。


「買い物デートですね!」


「私もいるけどね」


 冷やすものと寝るものがあれば十分では?


 ああ、そうか。


「テレビもいるな!」


「………………そ、そうで、すね……っ!!」


 苦しそうな同意だなあ。


 その後、洗濯機や掃除機を買いに家電量販店へ向かうのであった。


 やっぱり、俺には遥がいないとダメだな! って店内で言ってみたが。


 遥は照れていたが、霜崎さんには殴られた。


 買い物がヘタでごめんなさい。



――――――――――



 その後、遥の喫茶店へ三人で向かうことに。


 今日は両親はおらず、店を開くのは昼からとのこと。


 三人で他愛ないことを話しながら喫茶店への道を歩く。


 内容は主に俺の買い物センスの話題だったが、遥にも笑顔が増えてきたので良し!


 しかし、その笑顔は喫茶店に戻るなり曇ることになる。


「なんだあれ?」


 閉まっている喫茶店の入口の足元に、白い厚紙で包装がされた物体が一つ。


「……はーちゃん」


「ごめんみーちゃん……捨ててきてくれないかな」


「うん、わかった」


 二人は何か知っているようだが……。


「遥……あれは……?」


「ジローさん! 今日はコーヒー一番乗りですね!」


 まあ……確かにいつ行っても常連四人組の誰かが常にいるけれども。


 俺が話したい内容はそれではなく。さっきの包み紙のこと。


 大きさは肘から指先まで、割と大きい物体だった。


 霜崎さんがひょいと持ち上げたことから、見た目よりかは重量が無いようだ。


 伝票も貼っていなかったため、置き配という選択肢も消える。


「いや、遥。さっきのあれ……」


「聞かないでください……お願いします」


 つらそうなその表情を見ていると。


 何も言えなかった。

読んでいただきありがとうございます。


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