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振られた同士で付き合ったら意外と幸せだった話  作者: 佐藤ヒロフミ


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失恋とチキチキ☆スポーツの日なんだし全員集まってスポーツをやろう大会


「第一回! チキチキ☆スポーツの日なんだし全員集まってスポーツをやろう大会~!!」


 歓声と拍手。けたたましい雑音が俺の室内を満たしていく。


「………………んあ?」


 一方寝てる俺はというと、突然の騒音に叩き起こされた次第。


「………………」


 ……なんか、全員いる。


 遥、ひなたに二夕見さん、雨宮さんに霜崎さんと……志保ちゃんさん。


 ぐう。


「第一回! チキチキ☆スポーツの日なんだし全員集まってスポーツをやろう大会~!!」


「どわあああ!?」


 今度は耳元で叫ばれた。


 俺の鼓膜を破らんと挑戦する無謀なチャレンジャーは誰だ!!


 両手をメガホン代わりに使ってるお前か、ひなた!


「お前なあ!!」


 安眠を妨げた罪は重い。布団をはねのけてひなたに掴みかかろうとする。


「きゃあああっ!!」


 全員の黄色い声。ホワイ?


 俺を眠りの縁から無理やり引き上げたひなたですら、顔を赤くして…………俺の、下を見ていた。


 下?


「…………オウ」


 涼しくなってきたとは言え、時折蒸し暑い日が来る。


 だから、しょうがないのだ。パンイチで寝てることは。


 っていうかなんでいるんだよ!!


 ゆっくりとした動きで掛け布団を拾い上げ、腰に巻き付ける。


「粗末なモン見せてんじゃねえぞ」


 とか言いながら顔を赤くしてるのは雨宮さん。


 さすがラブロマンス小説家、実生活ですら絵になるような仕草はかかさないようだ。


 口は悪いけど。


 っていうか粗末ってなんですか!!


 この中で俺の痴態を見て顔色一つ変えなかったのは遥だけだった。


「で、なんで皆いるんだ! どうやって入ったんだ! 狭いなああ!!!」


 起き抜けだと言うのに大声を張り上げ、俺の体力は既にゼロに近い。


「なんか、開いてましたよ」


 ひなたはそう言うが。


 そんなバカな。鍵は閉めたぞ。


「…………なんか、開きましたよ」


 微妙に言い回しがさっきと違う。


 そして後ろ手に何か隠しているようにも見えた。


「ヘイ、ひなた。後ろに何を隠したんだい?」


 陽気に話しかけてみるが、顔は修羅のように怒りを蓄積している。


 だからだろうか。目を泳がせ俺と視線を合わさないようにしているのは。


「見せろ」


「…………何も持ってませんけど~?」


 ひなたは両手を前に。確かに何も無い。


 だが、俺は知っている。


「霜崎さん、何を隠した?」


「…………何も。ていうか顔洗ったら? 目やにすごいよ?」


「起きたばっかだからしょうがないだろ!?」


 とはいえ、顔は確かに洗いたい。


「……洗うから、ちょっと通りますよ」


 腰に巻いた掛け布団をズリズリと引きずり、ひなたの横を通る。


 そして霜崎さんの隣に差し掛かろうとした時。


「…………隙あり!!」


「やっ!? ちょ、何処触ってんのよ、えっち!!」


 霜崎さんの両手から奪い取ったのは。……針金。


「無いわー、朝っぱらから」


 そう言うのは雨宮さん。


「無理矢理は、ダメだと思うよ?」


 そして二夕見さん。


「前々から性犯罪者みたいな顔してると思ってたのよね」


 更に志保ちゃんさん。なんで一番付き合い薄いやつに一番酷いこと言われにゃならんのだ。


「私だけじゃ……物足りないってことですか?」


 最後に遥。


 っていうか何処も触ってないし!!


 っていうかピッキングは良いのか? 誰か止めろよ!


 慌てふためく俺をよそに、全員がニヤニヤと笑いをこらえている様子。


 くっそ、朝から遊ばれてる……!


 ……とりあえず顔を洗おう。


「どうぞ」


「ありがとう遥」


 取りやすい位置にタオルを持ってきてくれる。


 いつもながらありがたいことだ。


「流石に慣れててキモいわあ、破廉恥だわー」


 ふかふかのタオルで顔を拭いていると、背後から雨宮さんのからかうような声。


 だってしょうがないじゃない! いや、しょうがなくは無いのかもしれないけど。


「ふぉれで? なぁんのぎょようでふか?」


 歯を磨きながら何故か俺の部屋に全員いる理由を問う。


「……まず歯磨きを終わらせよう?」


 呆れた声の二夕見さんだった。くそう。


 歯磨き粉を吐いて、うがい。


「二回ですからね」


 二回した。


「母親か」


 雨宮さんが溜め息混じりに言う。


 身だしなみを整え、掛け布団を巻いたままベッドにまで戻って腰掛ける。


「それで、なんの御用ですか?」


「え? さっき言いましたよね?」


「いや、俺寝てたからわかんねえよ」


 ひなたは咳払い一つ。


 残りの五人を見渡して、深く頷いた。


「第一回! チキチキ☆スポーツの日なんだし全員集まってスポーツをやろう大会~!!」


 全員が歓声と拍手を舞い上げる。


 しかしそうじゃない。残念ながらそうじゃない。


「それはもう聞いた」


「じゃあやらせないでくださいよ!」


 照れ臭そうにしてた。


 そうじゃなくて、俺は内容を聞きたいんだ。


「先輩を中心にハーレムサークルが出来ましたよね?」


「知らねえよ」


「出来たんです」


 遥以外俺に興味無いのにか?


 とはいえ口を挟むのも面倒だ、先を促そう。


「そしてスポーツの日という祝日もありま…………した」


「そうだよな。昨日だもんな」


「うるさいですよ」


 今日は平日である。


 だと言うのに全員集まっていることに疑問を感じずにはいられない。


「せっかくなので、全員集まってスポーツをやろうという目論見の元、先輩の家をピッキングして集まってもらいました」


 ピッキングって言っちゃったよ。


 恐らくはひなたが暴走して全員を無理やり集めたのだろう。


 雨宮さんを見てみる。


「……あたしは、最近運動不足だから…………」


 ちょっと恥ずかしそうだった。


 なるほど、目的がある、と。


 次に二夕見さんを見る。


「大人数で遊ぶのは久々だから……楽しいかなと思って」


 なるほど、自ら楽しもうとするその精神、大変ご立派です。


「私はたまたま花蓮と一緒にいたら、連れてこられたっていうだけで」


 隣にいた志保ちゃんさんがついでに言う。


 なんでこの人知り合いみたいな感じで家にいるんだろう?


「なんでこの人知り合いみたいな感じで家にいるんだろう? って思ってるでしょ!」


 思ってます。


「花蓮が暴走しないように誰かが見てないといけないのよ!?」


 そうですか。


「……すごい興味なさそうな顔ね」


 そして次は霜崎さん。


「私は体を動かしたかったからよ。高校の時は毎日のように動かしてたのに、卒業したらめっきり動かさなくなってねー」


 なるほど、とても良いと思います。


 そして遥は……。


「私は……ジローさんが体を動かすのが好きだから、ちょうどいいのかなって」


 俺のことを一番に考えてくれるその姿勢。好きです。


 今は人目があるので口には出せないけども。


 最後にひなた。


「私は思いつきです!」


 脳天にチョップ。良い音がした。


「いったぁ~……!」


 頭を抑え、涙目になりながらも遊びに行くことは決定事項のようだ。


 まあ、俺も体を動かすのは好きだからいいけど。


 とりあえず全員外に出てもらい、ササッと着替えてしまう。


 そして駅前のスポーツ体験型アミューズメント施設へと向かって歩く。


「一番ポイントが高い人が、誰にでも一度だけ命令できる権利とかってどうですか?」


「………………」


 全員が黙った。


 流石にそういったリスキーな行為は、皆嫌がるんじゃ……。


「良いな、それ」


 あれえ?


 意外にも雨宮さんは乗り気だった。


 その他にも、全員が快諾するほどである。


 皆、そんな命令したいの……?


 俺を含め七人の道程は、ワイワイと雑談をしながら歩いていくのであっという間に辿り着く。


 到着し、自動ドアの前まで行くと、不穏な文字が書いてあった。


「りんじきゅうぎょう」


 ひなたが感情の籠もっていない声で言った。


 改装のため、本日臨時休業。


「………………」


 少しの沈黙の後、ひなたは俺たちに向かってこう言うのであった。


「解散!!!」

読んでいただきありがとうございます。


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