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振られた同士で付き合ったら意外と幸せだった話  作者: 佐藤ヒロフミ


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失恋と地獄の鍋パーティー


「それじゃあ……お疲れ様でしたってことで!」


 全員がグラスを高々と掲げる。


「乾杯!!」


 俺の音頭に続き、口々と乾杯と続けられた。そして全員がグラスを傾ける…………と思いきや。


 不機嫌なヤツが一人いた。


「どうしたひなた」


「なんで私だけジュースなんですか」


「だってお前未成年じゃん」


「無礼講! 無礼講!!」


 今日は忘年会兼のどかの歓迎パーティー兼鍋パーティー。


 鍋はただ食べたかっただけである。忘年会にかこつけて自分が食べたい希望を押し通したのだ。


 パーティー&パーティー&パーティーの三重パーティー。なるほど確かに無礼講ではあるだろう。


 だがしかーし!


「未成年に飲ませるわけにはいかない! お前にはこのシャンメリーをやろう! 特別だぞ?」


「美味しい……美味しいですけどっ!」


 不満げな様子。しかしこればっかりはどれだけ言われてもダメと言わざるを得ない。


「でも姫宮先生、ありがとうございます。家を貸してくれて」


「ん? いいよ。一番広くて集まりやすいだろうし」


 遥の礼に答えるのは雫さん。


 シャンパンをラッパ飲みしかねない勢いで飲み続ける雫さんと、甲斐甲斐しく鍋を取り分ける遥。


 まるで横柄な女王とそのメイドのよう。


「のどかさんって、地元ではジローくんを見つけるの得意なんだって?」


「うん……なんかね、匂い? みたいなのを感じるの……」


 わかるー、とか言いながら相槌を打つ二夕見さん。何がわかるんだろう。いや知らなくていいや。


 ここに来て、のどかにも色んな知り合いが出来た。全部俺経由で知り合った女友達だけれども、俺を抜きで喋れるようになったくらいには心を開いたのだろう。


 ……最初の頃は全部俺が通訳してたしな。


 今では肩を並べ、ビールを飲みながら話すことも可能となっていた。成長したものだ、うんうん。


「で、私の相手はあんたなのね」


「いつも通りといえば、いつも通りね。面白みのない」


 そして霜崎さんと志保ちゃんさんは……別にいいや。


 いつもの組み合わせだから言うことが特に無い。


 ふいと顔を逸らして他の場所を見ようとしたら、俺の首根っこに何かが巻き付いた。


「別にいいって何がよ!」


「言ってないのになんでわかる!!」


 霜崎さんだった。


 俺の肩に手を回すどころか、首を絞めかねない勢いで絡みついていた。


「ジロー! 私の取り皿に具材入れて!」


「はいはい。でもこの手どけてくれないと無理」


 やんわりと絡みついた手を外し、ひょいひょいと具材を入れていく。


「しいたけいらない」


「好き嫌いせずにちゃんと食べなさい」


 そう言いながらも一番小さいと見られるものを選ぶ俺。なんて優しいんでしょう。


「先輩! お酒!!」


「ダメだっつってんだろうが!」


「ひなたちゃん、これ」


 とか言いながら志保ちゃんさんがグラスを渡す。


 中に入った液体は半透明で、中身がなんなのかわからない。


 しかしこのタイミングで渡されるとなると、酒の可能性が高い。


「ちょ、ひなた待っ……!」


「わーい!」


 俺が止めるよりも早く受け取り、グラスを傾けた。そして。


「酸っぱ――――!?」


 グラスを置いて両手で口を塞いでいた。


 その様子を見てゲラゲラと笑う志保ちゃんさん。


 何入れたんだこれ……?


 グラスを手に取り、少し匂いを嗅いでみる。ツンとした匂い。


 舐めるように少しだけ傾けてみた。


「………………お酢?」


「うん! 水で薄めたやつ!」


 何が面白いのかゲラゲラと笑い転げる。もう酔ってるのか!


 こうして見ると、酒の強さ弱さが良く見てわかる。


 強いのは雫さん、遥とのどか。


 弱いのは二夕見さんに霜崎さんと志保ちゃんさん。俺も弱い部類に入るが、今日は何故か酔う暇がない。


「ひどい目にあいました…………シャンメリーおいし」


 こいつはまだ未成年だから測定不可能ってことで。


「……あ、ジローくん」


 少し遠くからのどかの声。


 見れば、ふらふらした二夕見さんの横で俺を見ていた。


「また……脱いだ服、そのままにしてたよ」


「あー、悪い。いつもの癖で」


 遥に軽く注意されてるのに、何故か直らないんだよなこれが。


 三人で同居生活になって、注意してくる人が一人増えた。


 そしてその時、全員の酒を飲む手が。鍋をつつく手が止まった。


 全員が沈黙する中、一人シラフのひなたが声を発した。


「そういえば、のどかさんっていつまで先輩と暮らすんですか? 私も暮らしたいんですけど」


「最後にしれっと変な希望を入れてくるな。お金が貯まるまでらしいけど……」


 いつになることやら。


「おいジロー」


 いつもより低い声の雫さん。


「……はい?」


 恐怖により少し身構えながらの返事。


「この子……一緒に暮らしてるってことか?」


「ええ、まあ……」


 あれ、言ってなかったっけ。言ってないか、わざわざ言うことでもないし。


「ちなみに遥さんも一緒に暮らしてるんですよ。三人で同居してるんですって」


「ちょ、ひなたさん……!!」


 遥は口を閉じようとしたが時すでに遅し。


「あ、あははははは……」


 全員の注目を浴びて、乾いた笑いを漏らす。


 大変だなあ。と他人事のように眺めていると、とたんに襟首が掴まれた。


「どういうことだ」


 俺に詰め寄る雫さんと二夕見さん。


 そして何故か俺の靴下を脱がす霜崎さんと志保ちゃんさん。やめろ寒い!


「ど、どういうことって……地元から来たんですけど、住むところがないから居候させてやってるんですよ……!」


 胸ぐらを掴まれる。


 そして足をくすぐられている。この酔っぱらいどもが!!


 ひなたは何か俺に恨みでもあるのだろうか。俺を見てニヤニヤ笑っていた。


 あれか? 酒を飲ませないからか? それとも一緒に暮らさないからか?


 法律を守って恨まれるとか、なんて生きづらい世の中なんだ!!


「なら、ジローがここに住めばいい」


「なんで!!」


 俺家あるのに!!


 のどかはというと、こんな光景を見るのが初めてなのかオロオロしていた。気持ちはわかる。


「ジローさん、豚肉食べます?」


「う、うん。いる」


「お野菜追加しなきゃ……」


 俺の彼女は、俺の取り皿に鍋の具材をよそっていた。助けてくれないかな?


 ターゲットが遥にではなく、俺に集中したのがこれ幸いと早々に戦線離脱したようだ。


「この家で二人で住んで、ジローの家で二人住めばちょうどいいだろ!?」


 何がちょうどいいのか。


 少なくとも俺の家に俺がいないのは変じゃないか?


「また一緒に住もう、な?」


 優しく呟かれる。


 だけど、この家に住んでいたのは住むところがないから避難先として住まわせてもらっていたわけで。


 住む場所がある以上、ここに住むのは変だろう、やはり。


 ちなみに二夕見さんは雫さんの隣でずっと頷いてるだけである。なんか喋れ。


「なんだよ! 好きな男と一緒に住みたいっていうのがそんなに悪いことか!?」


 悪くはないが。


 恥ずかしくないのだろうか、そんな大声で、こんな人前で。


「~~~~~っ!!」


「ぶぇっ!!」


 恥ずかしかったようだ。照れ隠しにビンタされた。なんでされた?


「じゃあ、あれだ! のどかが、ここに住めばいい!」


「え?」


「……え?」


 遥とのどかの二人が反応した。


「仕事か……あー、ほら! この前小説のネタ出ししてくれただろ? それと校正を頼もうか!」


「仕事……!」


 目をキラキラ輝かせて食いつくのどか。ここに来て仕事先を見つけたのか!?


「ありがとうございます……じゃあ、通いますね」


 そう言ってペコリ。


「なんで!!」


 雫さんが吠えた。そりゃそうだ。


 っていうか俺はいつまで胸ぐら掴まれてるんだろう?


「ここにはジローが使ってたベッドもあるんだ! だから二人で暮らせる、ちょうどいいだろ?」


 確かに渡りに船な話ではあるだろう。


 いつまでも居候で無職というわけにはいかないだろうし、ここに来て両方を手に入れるなんて。


「ちなみにジローが使ってたベッドはあたしが使うから、のどかはあたしのベッドを使ってくれればいい」


 なんでそうなる。


 いい加減手を離してくれないかなあ。


 靴下を脱がされたまま放置されたせいで足が寒い。感覚が少し無くなってきている。


「ジローくんのベッドは、私が……!」


「…………これは、後で話し合う必要がありそうだな」


「……命を賭して…………!」


 賭けんでいい。


 ん、あれ? これって、のどかは引っ越すことになったのか?


 遥を見ると、胸元で握りこぶしを作って小さくガッツポーズをしていた。


「だからジロー、あたしとデートしろ」


「なんでそうなる?」


 何が『だから』なのか。


「ひ、姫宮先生……!?」


 遥が声を上げた。そうだ、彼女の立ち位置から断ってやるのだ!


「しょ……小説の話を作るのも兼ねてな!」


「あ、そういうことですか。じゃあいいですよ」


「遥ぁ!!」


 騙されよったな!


 熱狂的なファンは彼氏すら売り渡すというのか!?


「じゃあ私も! 私もクリスマスデートしたいです!!」


 そこに参加したのはひなた。


「お前関係ないだろうが!」


「断ったら靴下だけじゃなくズボンも脱がしますよ」


 どんな脅迫だそれは。


 それから、全員が声を上げた。


 全員がクリスマスに出掛けたいとの事だ。元々遥と二人で出かける予定だったのだが、のどかが一緒にいるのでどうしようかと考えていたのだけれども。


 というか、クリスマスに全員って無理じゃない?


「一日ずつ貸し出すってのはどうだ?」


「それクリスマスじゃなくない?」


「いいんです、気分がクリスマスならそれで!」


 頭の中が年中お祭りのひなたが言うと妙な説得力があるな。


「私も私も」


「じゃあついでに私も」


 酔っ払いの霜崎さんと志保ちゃんさんも参加してきた。キミたち必要ある?


「さあ、どうするジロー?」


 俺の胸ぐらを掴む手に力が込められ、顔が引き寄せられる。


 こ、こんな空気で断れない……。


 最後の助け舟、遥に助けを求める視線を送るが。


「む、無理です……こんな空気でNG出せません……っ!」


「決まりだな」


 決められてしまった。


 一日ずつ、一人ずつと出掛けることになってしまった。


 ……どうしてこんなことに?

読んでいただきありがとうございます。


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