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振られた同士で付き合ったら意外と幸せだった話  作者: 佐藤ヒロフミ


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失恋と新たな同居人


 マンションの下、公道にて三人は立ち尽くし見つめ合う。


 一人は俺、突拍子もない行動に呆気にとられている。


 二人目は彼女の遥。突拍子もない展開に肩で息を切らせながら同棲継続をもぎ取ってきた猛者である。


 そして三人目。


 この騒動の発端であり、とんでもない行動力を見せた幼馴染。


 渡辺 のどか。


 俺の地元の幼馴染で、何故か今ここにいる。


「でも、なんでこんなところに……? ここ、言うほど都会じゃないぞ」


 名目は観光らしいが。


 人が賑わっているのは駅前だけ、しかし観光地らしい観光地もなく、ただ買い物や食事をするだけの場所だ。


「ここ、なら……ジローくんがいるから」


 ダークブラウンの暗い毛が夕日によって明るく照らされる。


 わずかに笑みを見せるその表情に、俺は――


「……俺がいるから、宿代を浮かせようって魂胆か!?」


「…………え?」


「……ジローさん?」


「そうはいかん! 俺の城を雨宿りのように行きがけの宿屋にするなんぞ、そんな甘い話はないぞ!」


 とはいったものの、母さんからの命令には逆らえない。


 勝手に追い返そうものなら、どんな目に合わされるか。


 想像するだけで寒気がする。


「お金……払えばいいの?」


「え? いや、そうじゃなくて……」


「はい」


 財布ごと渡してきた。何この人怖いよう。


 隣にいる遥も俺を信じられない物を見るような目で見ていた。


「そうじゃないって!」


 財布を突き返す。


 何故か不満そうなのどかだった。なんでや。


「てめぇ! のどか姉に何してやがる!」


 突如張られる大声。


 声の方向に三人が顔を向けると、そこにはチクチク坊主頭の少年が。


「ノボル……くん?」


「何してんのお前。ああ、遥。あいつ俺の弟のノボル」


「そうなんですね! よろしくお願いします、朝野 遥です」


 唐突に現れた野球少年に特に驚く様子もなく、三者三様の反応を見せる。


「あ、よろしく…………じゃなくて! のどか姉から金をせびってたの母さんに言いつけるぞ!」


「それはやめてぇっ!!」


 心からの悲鳴である。


 というか、本当に何しに来たんだ?


 まさか四人で暮らすってのか? 流石に狭いぞ?


「のどか姉が無事に着けるかどうか…………」


 どうか…………尾行してた?


 どうか…………つけ回してた?


「え、ストーカーか? 最近流行ってんの?」


 今年の流行語大賞か?


「流行って欲しくないですね」


 俺もそう思う。


「ち、違ぇっ!! 母さんに頼まれたんだよ!」


 顔を真っ赤にして否定するノボル。


 心配ならこんなところまで旅させなきゃいいのに。


「俺はこの後すぐに帰らないといけないし……チケットはもう買われてるから、これ乗り遅れたら……」


「とことん母さんに弱いよな」


「それは兄ちゃんもだろ!」


 たまに素が出るのが可愛いと思わないか? 俺は思う。


「とにかく! のどか姉は無事に着いた! クソ兄貴は金をせびってた! 良し!」


「何も良くねえ!!」


 しかし言うが早いかノボルは背中を向けて走り去っていく。


「またね……ノボルくん」


 ゆっくりと手を振るのどか。流石にそんな声じゃ聞こえないだろう。


 ……と思ったのだが、ノボルは振り返り大きく手を振り返した。


「なんか、台風のような子でしたね」


「さしずめ今は台風の目ってとこかな」


 つまりまだ荒れるということ。だって問題は何も解決してないし!


 ……とりあえず家に入るか。外は寒いし。


 ………………。


 というわけで帰宅。ただいま。


「手洗いうがいを忘れないでくださいね」


「はあい」


「……はあい」


 俺の返事の後に小さくのどかも返事した。


 一連の作業を終え、俺たち三人はコタツを囲む。


 温まっていくのを感じながら、本題に入った。


「のどか、いつまでいるんだ?」


「………………?」


 なんでそんなチュパカブラって本当にいるのか? って聞かれた時のような顔をしたのか。


 どうして俺はチュパカブラで例えたのか。


「……ずっと?」


「え、マジで?」


「…………嘘ですよね?」


 母さんにもう一度掛けてみるが、電源が切られているのか繋がらない。


 とりあえずメッセしておいた。


「私も、ジローくんの……いるところで、生活したいって……言ったら、いいよって」


 いいよじゃないだろう。


 俺の今後の生活まで関わってくるのに、どうして俺の意思は誰も尋ねないのか。


「お金貯めて……一人暮らし、する」


「…………それまではここ……か」


 がっくりと肩を落として遥を見る。


 到底信じられないのか、パクパクと口を開いたり閉じたり。


 そしてゆっくりと俺を見た。


「……どうするんですか?」


「母さんが決めたことなら逆らえない……んだよなあ」


 ここを借りるのも手伝ってもらった手前、強く言えないということもある。


「お料理、頑張るね……っ!」


「……出来るんですか?」


 遥の尋ねる声に、のどかはしっかりと頷く。


 まあ、あそこは田舎だしな、花嫁修業的なことはしっかりと仕込まれているんだろう。


 のどかはコタツから出て、寒さで少し身震いしながら持ってきたバッグへと向かう。


 そして何かを取り出して…………レンジに入れた。


 あたためスタート。


「……ね?」


「弁当!!!!!!!! 弁!! 当!!」


 天板に頭を打ち付けながら声高に叫ぶ。


 俺と同レベルじゃねえか!!


「……りょ、料理は私がしますから……っ!」


「貴女も……一緒に住むの?」


「…………ジローさんと二人っきりには、させられませんので」


 ……ああ、のどかにいきなりキスされた時、目の前にいたんだもんな……。


 そりゃ警戒するか。


「っていうか、何処で寝るの?」


 俺の質問に、のどかは視線を動かす。


 視線の先は俺のベッドだった。


 シングルで三人は無理だろう。というか。


「ダメに決まってるでしょう!?」


 ですよね。


 俺もそう思う。


「じゃあ、床で……」


「そ、そういうわけにも……」


 ですよね。


 俺もそう思う。


 ………………。


 そしてどうなったかって?


「…………寒いよう、寒いよう……っ!」


 コタツにすっぽりと首だけ出して眠る俺がいた。


 ベッドには遥とのどか。どちらも不服そうだったが、どうしようもない。


 ちなみにコタツは電源を切っているのでひんやりお布団である。だって付けたまま寝るの危ないしね。


 そうして、寒さに震えた眠れない夜を過ごした俺なのであった。


 ……。


 ぐう。


 ………………


 …………


 ……


「ん……」


 眠りから覚める。


 床で寝たからか、少し体が痛むが……まあ大丈夫。それよりも……。


 目の前に温かい物が、冷たい布団に似つかわしくないほどのぬくもりを放つ。


 抱きついて暖を取ることに。


「んっ」


 温かいものが何か声を発した。


 寝惚けた俺は気にせずに、温かみを求めて力強く抱きしめる。


 ………………


 ぐう。


「ああああああああああぁぁぁぁぁっ!!」


 叫び声からの起床。ぐっもーにん。


「……はるか…………?」


 まぶたを開いて見上げると、ベッドの上から俺を見下ろしていた。


 その目は見開かれ、唇はわなわなと震えており。


 俺は胸元の暖かさに違和感を覚える。


 ………………嫌な予感がする。とっても。


 ゆっくりと視線を下ろすと。


 髪の毛が見えた。暗い茶色である。


 頭頂部が、もぞもぞと動く。


 そのまま顎が上がり……俺と視線があった。


「……おはよう、ジローくん」


「………………ジローさん?」


「チガウンデス」


 起きたらこうなってたんです。


 俺は知らなかったんです!!


「ジローさん!!!」


「ごめんなさああああああい!!」


「……ふあ……」


 騒々しい朝であった。

読んでいただきありがとうございます。


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