さん
「どうする?」
「へ?」
「ウチに入るかどうか。」
「うーん…」
「……ぼちぼち考える。また明日も来るつもりだし。」
「そっか。じゃあね。」
「うん。」
「あ、これ…」
「…?」
「印。」
「…?」
「来るとき持ってきて。」
「わかった。」
「じゃあね。」
「ばいばい。」
そう言って、ノイルは無夢奏屋を後にした。
店を出たあと振り返ったら、無夢奏屋は消えていた…
(……?)
辺りを強く照らす夕焼けが、沈みかけていた。
「ただいまー。」
「おかえりなさい。遅かったわね。」
「あぁ……ちょっと学校で作業してた。」
「そう。」
「あぁ、あと、明日友達と遊ぶ。」
「あら、そう。誰と?」
「ユ、ユウマと……」
「そう。久しぶじゃない。」
「…そうだね。」
(ホントは無夢奏屋に行くだけなんだけどね。)
ドタドタ
「ノイル!」
2階から姉のイノリが駆け降りてきた。
「どうしたのイノリ。」
「漫画、今日まででしょ!」
「あぁ、そうだったね。」
「もぅ、早く返して!」
「そんな急がなくても…」
「いいからっ!」
「へいへい…」
カバンの底から姉に借りていた漫画を取り出す。
「はい。」
「ノイル!ここ!」
「?」
「ここ!破けてる!」
「いや、元から破れてたぞ。」
「うっそだ〜!」
「はぁ……ほれ。」
姉に漫画の写っている写真を見せる。
「…………」
「元からだっつーの、わかったろ?」
「…ノイル用意周到すぎ!なんかムカつく!」
「酷っ!い〜だだだだっ!つねんな!痛いだろっ!」