第一一話 共鳴
フィンは、ポニーが連れてきた少女を見て目を疑った。見慣れない服装のその少女からは、この町には似つかわしくない気品が感じられたからである。
「ポニー、その子は……。まさか鉱山に?」
「よく分かったね。そのまさかよ」
「何か事情がありそうだね」
「そうだと思うわ。でもせっかくのお客さんだからかまわないよね?」
フィンはポニーの意見に同意した。
彼が少女へ目線を向けると、少女は気まづそうに苦笑いを浮かべた。
「それで……お嬢さん名前は?」
「ステラって言います!」
「ここらじゃ聞かない名前だね……。それで今日はどんなご用で?」
「これを使って首飾りを作っていただきたいのです……」
そう言うと彼女はおもむろにポケットからなにかを取りだした。
それは深緑の色をした綺麗な石であった。
「それは……?」
「あっ、間違えましたわ。こちらです」
彼女はポケットから取りだした物が想定と違っていたのか、もう一度ポケットへ手を突っこみ、ツルツルとした白くて丸い石を取りだした。
「急いで作っていただきたいのだけれどもできるかしら?」
彼女は不安そうに尋ねてきた。
「あぁ……。それは問題ないよ。それより、先程の石をもう一度見せてくれないかい?」
フィンの真剣な眼差しに、彼女は少しとまどったようすを見せながらも、先ほどの石をポケットから出してくれた。
「これは……。うん。間違いない。これをどこで?」
フィンは石を受けとり尋ねた。
「これはとある方にいただいたのです」
彼女は答えた。
「そうか、他にもあったのか……。君はこの石が何か知っているのかい?」
「いえ、なにも。ただ、初めて触れたときに一瞬、輝きましたわ!」
「そうか、僕の時と同じだ。誰にも見せるなと言われているけど、二人になら見せても大丈夫だろう」
そう言ってフィンは服の下に身につけていた自身の首飾りを外して彼女らに見せた。
「まぁ、とても綺麗ですわ」
「あぁ……。それに、よく見ると色も形もそっくりだ。それに、こうやって合わせれば……」
フィンが持っていた石同士を触れあわせた瞬間、石は緑色に爛々(らんらん)と輝きだした。その光は、窓の外からでも見えるほどに強力で、そのあまりの眩しさに三人は思わず目を瞑った。少しすると光は、石へと戻るように吸いこまれて消えた。
「ど……。どうなってるの?」
いきなりの出来事に驚いたポニーがフィンへ尋ねる。
「僕も分からない。こんなに光ったのは僕も初めてだ。君もかい? ステラ!」
フィンはステラに尋ねる。
「わたしも初めてです」
「そうか、ありがとうステラ。石を返すよ」
「ありがとう」
突然の出来事にフィンとポニーは困惑していたが、ステラはとても高揚しているようすであった。
「うん……。それじゃあ、首飾りの作成に取りかかるから、二人は椅子に座って待ってて!」
フィンは入り口の横に置いてある椅子を指差した。
「それと、ステラ! この石は首から下げられるなら良いんでしょ?」
彼女が頷くのを確認してからフィンは作業に取りかかった。首飾りはものの数分で完成した。
「出来たよ。ステラ。どうせ帰り道にしか使わないのだろうから作りは簡易だけど」
「どうしてそう思ったのですか?」
「だって、君の身に付けているものは高価な物ばかりだし、ここまできてこの石を首飾りにする意味があるとするならば、君が帰る時、それも明かりを失くさないようにする為だろう?」
「まぁ、そこまでお分かりになるのね」
「うん。君はさっきの明かりにそこまで動じていないようだったから、きっとこの石も明るく光るものだと思ったんだ。それも、暗闇でね」
そういうとフィンはカーテンを締めきり部屋を暗くして光石の輝きを確かめてみせた。
「意外と明るいね」
ステラはフィンの推察に驚いているようであった。隣のポニーはちんぷんかんぷんといった顔をしていた。
「これ、お代ですわ」
そういうとステラは手首に付けていた腕輪を外し、フィンに渡した。
「こんな高価なもの受け取れないよ。お代は銀貨三枚でいいよ!」
「困りましたわ……。今は持ちあわせがなくって」
「そうか……。それなら、仕方ない。三日後にまたおいでよ!」
「分かりましたわ。ありがとう」
そういって彼女は店を出ていった。
「フィン。やけにあの子に優しいじゃない。腕輪……もらっておけばよかったのに」
「茶化すなよポニー。それに、そんなことはできないよ」
そう言いながら二人は談笑を始めた。
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