転生します!
『貴方は今日死にます。』
俺は買い物の帰りに今日見た夢のことを思い出していた。俺は白く光る何かにそう言われ、今日は目を覚ました。
(死ぬだなんて、縁起の悪い夢だ。)
俺は買ったばかりのアクリルスタンドを大事に持っていた。
俺はなんの取り柄もないただの高校二年生、今の悩みといえば店舗予約していた推しのアリアのアクリルスタンドをどこに飾るかだった。
(机はアリアのフィギュアでいっぱいだから、あそこに置けばいいかな?いや、あそこも…)
俺はずっとアリアを推している。部屋は全てアリアで埋め尽くされ、壁にはポスターやタペストリー、ベッド推しの抱き枕が置いてある。アリアという推しに出会えてなかったら今頃平凡な人生に嫌気がさしていただろう。
俺がいつもの帰り道を歩いていると遠くの横断歩道にうち学校の制服を着た女子高生が見えた。
(休みだというのに制服か、まぁ俺には関係のないことだけど。)
俺は家に帰る為、その横断歩道に近づいていき、俺は女子高生と一緒に横断歩道の信号が変わるのを待つこととなった。
近くで見るとその女子高生がクラスの坂本明里だと分かったが別に声をかける仲ではない為、ある程度の距離を取っていた。
そして、歩道側の信号が青に変わり、坂本が渡ろうとしたその時、トラックが信号を無視して突っ切ろうとした。
坂本は歩きながらスマホをしている為、トラックには気づかないままだった。
(危ない!。)
俺は坂本に手を伸ばしていた。
(もしこのまま突き飛ばせば俺が変わりに引かれてしまう!。)
俺は踏み出していた足を後ろに下げ、坂本の腕を掴んで引き戻すことに成功した。
突き飛ばせのければ自分が引かれてしまうだけでなく推しのアリアも粉々になってしまう。俺にとってはただのアクリルスタンドではない為、引き戻す以外の選択肢はないに等しい。
坂本は呆気に取られているようで、しばらく沈黙が続いた。
「もしかして、命の恩人?。」
「え、あ、はい、多分そうです。」
坂本が状況を把握出来たのか、俺に話しかけてきた。
俺は少し安心していた。女子に一切触れたことのない俺が咄嗟とはいえ腕を掴み引っ張ったのだ。これで痴漢扱いでもされたら困っていただろう。
「ありがとう。じゃあ私、要事があるから。」
「あ、はい。」
坂本は俺を取り残し歩き始めた。そして、俺は自分のコミュニケーション力の低さに落胆していた。
(え?。なんかもっとないのか?。)
命を救ったのに反応が薄すぎる為、一度呼び止めようかと思った次の瞬間、胸に激痛が走った。今考えていたことがどうでも良くなるぐらいの酷い痛みだ。これまでに体験したどの痛みより大きく、直ぐに意識が薄れていった。
そして、かすれる視界で助けた坂本が俺と同じように倒れるのが見えた。
俺が次、目を開けたときは白い空間が広がっていた。ぼんやりとすっきりしない頭の中それは今日見た夢の中のようだ。
「ここは?」
『あ、やっと起きたわね。あんたのせいでこっちは苦労してんのよ!』
俺は何故か目の前にいる神々しい女性に怒られている。
「すいません。俺が何かしましたか?」
俺は何も考えず誤ってしまった。
『は?あんたは転生者の死因を変えたのよ。こっちは百年に一回もある勇者転生の為に色々準備してきたっていうのに。』
見た目は女神その物だが、言葉遣いがその高貴さを消し去ってゆく。
『てか、あんた、こうならないためにわざわざ死ぬて警告してやったのに、なんの変化もなく勇者を助けるなんてバカじゃないの?』
「そう言われても流石にあれでは。」
勢い良く怒鳴るように話す女神に圧倒されながらも小声で反論した。
(今でさえ現実とは思えないこの光景、信じろという方が無理だ。)
『まぁもういいわ。どちらにしても。二人とも死んだから。』
「それって俺もですか?。」
女神は少し顔を歪めた。
『は?当たり前じゃない。あんたはただの今日が命日の人、勇者の彼女がメインなんだから。』
坂本を助けた意味は全く無かったことに俺は気づいた。
『あんたは来世が人間であることを願っていなさい。』
女神が俺の横を通り過ぎることで俺の後ろにさっき坂本が倒れていることに気づいた。俺が女神や白い空間に目を取られてい為、五メートルぐらい後ろにいたのに気づかなかった。
『あ、また邪魔したら地獄に落とすわよ。』
俺はこの急展開を受け入れることすら出来ていないに等しいが、とりあえず黙っておくことにした。
「ここはどこ?。」
坂本が目を擦り、ムクっと起き上がった。
『目が覚めたようですね。転生者のあかりさん。私は死の女神、貴方を異世界へ導く神です。』
「え?。」
坂本が困惑しているが、女神は構わず話続けた。
『汝は不運にも若くしてその命を奪われてしまった。そんな可哀想な汝に神の加護を授け、異世界に転生させて上げましょう。』
「命を奪われた?。もしかして私死んだてこと?。」
坂本の発言に俺は驚いていた。俺は今でも夢じゃないかと疑っているのに。
『そうです。ですから神の祝福で異世界に。』
「そんなのいいから、元の世界に戻して?。」
坂本は女神の話を遮るように話した。
『それは出来ません。あちらの器は無惨にもトラックに引かれてもとに戻れるような…。』
女神が途中で話すのをやめ、無言の圧力を俺に向けてきた。そして、一度咳払いをしてから言い直した。
『とりあえず、それはできません。でも向こうの器も寸分違わぬ物になっていますし、神の加護でな…。』
「私そんなの興味ないんで、そこの、えっと、オタクでも行かせればいいじゃない。」
坂本は俺を指差した。どうやら俺の名前は同じクラスだが、覚えていなかったらしい。
『今ので2回目ですよ。私の話を遮るのは。次、私の話を遮ったら…』
「だから何、神様ならなんでもできるでしょ。生き返らすなら異世界じゃなくて元の世界してよ!。」
女神の苛立ちがこちらまで伝わってくる。
『あんた神様舐めてるの?。』
女神はそのまま怒りをぶつけた。
『こっちは一日に百個の世界の生死を扱ってるの。それに上司が百年に一度もある恒例行事で勇者を送れて言われてるから仕方なくこうしてやってるてのに。それにそんなことしたら死という概念がなんとかなって面倒なのよ!。』
「上司て、ならその上に話をさせてよ。」
上司つまり全能神のようなものがいるのだろうか。
『あーもう面倒くさ。もういいからいろいろなことは向こうで教えてもらいなさい。あとそこのあんた、もう面倒くさいからついでに転生てことで。』
そう言われると俺たちの立っている地面が突然消え、俺らは下に向かって落ちていった。
『勇者は上司の加護で手が出せないけど、私を困らせたあんたは死にたいと思うほど困ればいいわ。』
女神が最後何を言ったのか俺は聞こえなかったが、深くて底が見えない穴を落ちて行き、意識が途切れる中俺はアリアのことだけが気がかりだった。
(異世界なら、もうアリアの新作は見れないのか。でも、異世界と言えばやっぱり異世界ハーレムや神の力のチート能力でやりたい放題、考えるだけで楽しみだ。)
俺は薄れ行く意識の中、これからの異世界ライフに思いを馳せていた。
そして次に意識を取り戻した時、俺たちは協会で目を覚ましたのだった。
そしてこのときの俺はまだ知らなかった。死ぬほど大変な異世界学園生活が待っていることを
「こんな転生あってたまるかよ〜!。てか元の体なら転移とかわらないじゃないか!」