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猫と桜  作者: 詩音
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テストつらいっす 第四章

  第四章 異能

 あの後、ミヤと高はその他の料理を1時間かけてなんとか片付けた(ミヤがかなり少食だったため殆ど高が食べた。ちなみに、高は食べている途中こんなにも料理を作った過去の自分を激しく叱咤していた)。

 しばらくの間、高はちょっとお腹いっぱいすぎて動けなかったが、やがて大きな息を吐くと元気に立ち上がった。

「じゃあミヤ、俺はちょっと風呂沸かしてくるからここで待っててくれ」

 高はそう言うと、部屋の扉を開け………

 きゅむ。

 開けようとしたところ、ミヤに着物の裾を握られた。

「ん、どうした?ミヤ」

 ミヤは何か言うのを少し躊躇う仕草を見せたが、頭をふるふるさせると勇気を出して口を開いた。

「ついていく。………そして、手伝わせて」

(急にどうしたのだろうか?)

 高はミヤの突然のお手伝い発言にハテナを浮かべる。

 すると、それをミヤも察したのだろう。辿々しくも理由を説明し出した。

「えっと……私今日からここに住む、から、ちゃんと手伝いとか、したい、から……だから……ついて行っていい?」

 ものすごく、頑張っているのがわかるミヤの話っぷりがあまりにも微笑ましく、高は笑みが漏れてしまった。

「はは、そうか。……ありがとな、ミヤ。……まあ、じゃあ行くか?」

「うん」

 高はミヤをそう誘うと、再び歩をすすめた。

 また、ミヤはなぜ高が笑ったのかよく分からない様子であったが、それでもこうな笑みに釣られて、ほんのり笑うと高の背中を追った。

「ここがうちの風呂場……の裏だな。ここに薪を入れて沸かしてるんだ」

 高たちは今、縁側から外に出て、そのままぐるっと回って家の裏側にいた。そこには、綺麗に積まれた薪と、おそらくそれを入れるであろう穴が家から出ていた。世間一般の五右衛門風呂である。

「私は何を手伝えばいい?」

「ああ、そうだな……そこにある薪を入れるのを……って薪もうそこにないんだった。ミヤ、薪がちょっと遠くにあるからそこまでついてきてくれるか?」

「うん」

 ミヤは小さく頷いて首肯すると、とたとたと可愛らしい足取りでで高の近くに寄ってくる。高はそんな彼女の可愛らしい様子に思わず笑みが漏れる。

「はは、じゃあ行こっか」

 高たちは家とは逆の方向へ歩き出す。そこには階段があり、家の後ろにある山を登れるようになっている。

 高たちはその階段を登り、やがて開けたところにたどり着く。

 そこは薪を切るための斧や薪が閉まってある屋根のみの簡単な納屋と、まだ切っていない木、それと今度はしっかりと壁のある建物、そしてそれらの真ん中に薪を着るまな板の役割を担う大きな切り株があった。

「ここが、まあ作業所って感じかな。とりあえず今日はここから薪を下まで持っていこうか。手伝ってくれるか?」

「うん」

 ミヤはまたトコトコと薪の方へ走って行った。

 そして、薪を掴んでいく。

「おいおい、そんな持って大丈夫か?」

「うん、大丈夫」

 薪を一気に何本も持ち、なんとかバランスを保ち歩くミヤ。しかし、その状態がずっと続くはずもなく、ミヤのバランスが崩れ、前からずっこける…………

「っ!……大丈夫か、ミヤ?」

 ミヤが痛みを覚悟し目を瞑った直後、高は地を蹴ると、ミヤの前に回り込みミヤを優しく受け止める。この間、僅か0.数秒。

「!……?!!??」

 あまりにも一瞬の出来事にミヤは目を白黒させる。声も出ないようである。

 一方、高の方はなんでそんな驚いてるのか分からないと言う感じの顔であった。

「………ミヤ?どうかしたか?」

「っ!……なんでもない。えっと…助けてくれてありがとう」

「?おう。怪我なくてよかったよ」

 高のケロッとした顔を見て、ミヤは考えることを放棄した。そして、そんなミヤの様子に最後までハテナな感じの高であった。

「じゃあ、気を取り直して、薪運び再開するか」

「うん」

 今度はミヤはちゃんと自分が持てるだけの量や薪を持つと、釜の方へ歩いて行った。ちなみに、高はさっきミヤが持っていた薪の何倍もの量を持っていたが、そこはもう突っ込まないことにした。

「よし、ありがとなミヤ」

 そして高の人間とは思えない怪力で往復も何もなく終わった。

 最後に、さっき取ってきた薪の一部を釜に投げ入れミヤの役目は終わった。

「じゃあ、あとは火、つけて終わりだな。ミヤ、危ないから離れててくれないか?」

「うん」

 釜の中を興味深く覗いてたミヤは素直に下がる。

 そして、それと入れ替わりで高が釜の前にしゃがみ込む。

「?」

 しかし、ミヤはある違和感を覚えた。高は何も持っていなかったのだ。

 高は、釜のほうに向かって手をかざす。ミヤは余計訳がわからなくなった。

 そして、高が手を力ませたかと思うと、高の手の先から小さな炎が噴き出した。さらに、その炎が薪の先に乗り、薪が勢いよく燃え出した。

「え?………え!?」

 ミヤが驚きの声を上げる。一度見てから信じられず、もう一度目を擦ってからもう一度驚くというなんとも模範的な驚き方である。

「どうした?ミヤ?」

 高もそんなミヤの様子に気づいたようで、ミヤにどうしたのかと問う。

「え、いや、さっきの何?さっき手から出したの」

 ミヤはまだ気が動転しているようだ。

「?火だけど……」

「いや、そうだけど!そうじゃなくて!……どうやって出したの?え、どういう原理?」

「ん?え、もしかして異能も知らないのか?」

 ミヤがもげるのではないかというほど首を縦に振る。

「ああ、そうだったのか。そうだな……さっきのは異能っていって……まあよく分からん力だな。さっきのは一般異能と言ってほとんどの人が使うことができる異能だ。それで、もう一つ個別異能ってやつもあるんだが、これは使える人が限られてくる。一般異能よりも強力で大体持っている人は異形退治の仕事をしているんだ。………まあ異能の説明はこんなもんかな。」

「………へー」

 ミヤはあまりの情報量に空返事しかできない様子だ。

「まぁ、なんだ。ここでは結構当たり前のことだから気にすんな……じゃあ帰るか。30分もすれば風呂が沸くからな。今日は疲れただろう?」

「………うん」

 ミヤは考えることを放棄した。

 夕焼け空の中カラスの声だけが妙に響いた。

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