第二章友達に見せたらど変態と言われました 第三章
第三章 仲直り
「あ、おーい……ミヤさーん?」
「……バカじんのうちなんて知らない」
プイ!
そんな擬音語が聞こえた気がする。
高は頭を抱えた。
(……どうしよう。完全にヘソ曲げられちまった……というかミヤのやつ、なんで怒ってんだ?……やっぱり検査とはいえ気安く女の子に触ったからかな〜?)
まさかのまだ自覚なしであった。高はいまだに自分のやったことを思い出し首を傾げていた。
だが、しばらくすると、
(まぁ、わかんないこと考えても仕方ないか……とりあえずミヤの機嫌直す方法考えよう!)
結局最後まで分からなかったようだ。
さらに、高は前向きだった。今度はミヤの機嫌を直す方法を考える。あまりにも早すぎる切り替えの良さ、俺じゃなきゃ見逃しちゃうね(キャピッ)
(しかし、ミヤの機嫌を直す方法って………俺ミヤのことなんも知らないから、何したら喜ぶとか全然分からんのだが……)
高は再び頭を抱えた。
というかミヤのこと知らないなんて当たり前のことだろう。
だが悲しいかな高の頭にツッコミという高度な芸当は出来なかった。
(………そうだ!これならどうにかなるんじゃないか?)
しかし、その頭をフルで回転させどうにか高は一つの可能性を見つけ出した。
そして行動の速い(さほど考えずに行動する)高はすぐにその軽い腰を上げた。
「じゃ、じゃあミヤ、俺はちょっと出るから……ここで待っててくれ」
プイッ、スーン。
高のメンタルが5落ちた。
未だかつてここまでそっけない了承(?)を見たことあるだろうか?いや無い(反語)。
高は少し熱くなった目頭を気にしながら、この部屋を出て行った。そして少し頼りない足取りで向かった先とは……
「よっしゃ、美味しい料理作って絶対ミヤの機嫌直すぞおおぉぉぉ‼︎‼︎‼︎‼︎」
三つ並べられた竈門、天井から吊るされた干物が所々にある、そして竈門の横には簡易的な机、その上にはまな板や包丁などの調理器具。
つまり台所である。
そしてこの場所とさっきの言動から導き出される一つの可能性とは……
なんてことはない、美味しい料理作って胃袋と一緒に彼女の心も掴んじゃおう大作戦であった。
なんか悩み抜いた答えの割にはあまりにも安直すぎる答えだが、悲しいかな高の頭にツッコミ(以下略)。
(……とは言っても)
早速の問題発生である。天の声ながら心配になる。
(ミヤって人間の食べ物食べれるのか?猫は玉ねぎがダメって言うし)
料理以前の問題であった。
そして少しの間悩んだ結果が
(まぁ魚だったら大丈夫だろう!!)
やはりこの心情を読んでいる者がいたらツッコミたくなる答えだが、悲しいかな高の頭にツッコミ(もうええわ)
「さてと……干物はどこだったかな?」
そして、天の声がつっこんでる間に高はもう魚を探し始める。
「ああ、あったあった」
高は干物を見つけると竈門に薪を置き、火をつけると干物を焼き出した。
その間にも高はいくつもの副菜を作り続ける。さっきの言動からは想像できないほどの手際の良さである。
しかしそれもそのはず、高は昔から1人で自給自足をしてきたのだ。そして、高が真っ先にマスターした家事は料理であった。今では彼の料理の腕前は高級料理店の料理人と遜色ないレベルまでいっていた。
「♪〜〜♪〜〜〜」
高は鼻歌を歌いながら次々に料理を作り上げていく。そして小一時間経った頃には、正月なのかと言うほどの量の皿が並んでいた。
「よし、こんだけ作れば大丈夫だろう。………あとは」
そう、高の作る料理もいよいよ最後になってきた。あとは、この中での原点にして頂点、焼き魚だけである。
(まあ焼き魚なんてそんな難しい料理でもないし大丈夫だろう)
高はそう自分に言い聞かせると肩の力抜いて最終決戦に備えた。
「ごめんなさい………」
座敷に高の情けない謝罪がこだます。
そして、その謝罪をムスッとしながら聞いているミヤ。
ミヤと高の真ん中にあるのは、豪華な料理とその真ん中に細々と頓挫している焦げっ焦げの魚。
なんともカオスな光景であるが、しょうがない。なぜなら高はこうするしかなかったのだ。
高は料理中、たかが焼き魚と肩の力を抜きまくって案の定魚を焦がしてしまった。そして、その失敗を今ミヤに懺悔している。だけど、ミヤはムスッとしているため許してもらってないと思っている。
しかし、ミヤはそのことについては全く怒っていない。むしろ高が自分のために作ってくれたという事実を好ましく思っている。
しかし、現実はそんなに簡単ではないのである。実際、今、ミヤの心の中には二種類の感情が渦巻いている。
それは、この不機嫌な感じを止めるか止まないかだ。いや、実はもうやめたいんだが、彼のしたことを思い出すとイラッとくるし、ばずかしいしで、さらにやった手前ちょっとやめ時を失ってしまったのだ。一方でこんな頑張って料理作ってくれたし、普通にいい人というのもあってもうそろそろやめないとなーって言う気持ちもあった。
(どうしよう……機嫌を直すつもりだったのに…どうにかして挽回を……)
(どうしよう……早く機嫌を直したいのに…何かきっかけは……)
2人の心情が交差する中、最初に答えに辿り着いたのは………
「………美味しい」
高は声のした方を凄い勢いで見つめた。
なんとミヤが思いっきり、焦げた魚を食べていたのだ。それも、何をとち狂ったのか美味しいと言いながら。
「あ、おいミヤ!?いやそんなの食べなくていいから、ほらぺってしな?」
こうは慌てて止めに入るが、ミヤは無視して食べ続ける。
「………美味しい、美味しいよ。じんのうち」
「え!?いやそれほんっとに焦げ焦げだぞ!お世辞なんていいから!な?」
「お世辞じゃないよ。……それに、高の気持ちも嬉しい。……ありがとう、高」
「……っ」
ミヤの微笑みが高の胸に溶けていった。
お世辞にも美味いとは思えないが、きっとお世辞じゃないんだろう。ミヤの言葉にはなんの嘘偽りも感じられなかった。
それに、高は一人暮らしだったため、今まであまり料理を美味しいと言われたことがなかった。だから、その言葉が嬉しくて、温かくて、心を優しく包んでくれた。
「……そっか。ありがとうな、ミヤ」
高は無邪気に笑うと、噛み締めるようにそう言った。