これってもうR15なんですかね? 第二章
第二章 名づけ
「ここに住むとなったらいろいろ必要になってくるな………ところでお前さん…って一緒に住むのにお前さんってのも変だな……なあお前さん、なんか読んでほしい名前ってあるか?」
何ともおかしな質問であるが、それ以外の質問がないからしょうがない。
「………じんのうちがつけて」
「……さいですか……」
そして何とも絶望的な答えをしてくれるものである。
高は軽く頭を押さえると、観念して少女の名前を考え始めた。
「………うむ…………ミヤってのはどうだ?」
「……ミヤ……ミヤ………うん。ありがと!じんのうち」
少女は、俺の時のように名前を反芻すると、何かを納得したようにうなずくと、また小さく微笑んだ。
そんな姿が微笑ましく、高は少し頬を緩ませると、今つけたばかりの彼女の名前を呼んだ。
「ああ、気に入ったならよかった。………それでだな、ミヤ、その耳やしっぽはなんなんだ?ずっと気になっていたのだが」
「ん、耳?………あ。なにこれ?」
どうやら本人もわからない様子だ。
ミヤはちょうどいま気づいたように、その耳としっぽをぴくぴくさせていた。
まあ、この家に入れる時点で妖ではないことはほぼ確定なのだが、それもまだ百パーセントとは言えないため、調査が必要だ。
「なあ、ミヤ。そのしっぽ触ってみていいか?」
とりあえず調査の基本は触診である。高は別に研究者でも医師でもないが、妖にだけは詳しい。触れば少しは彼女が妖か人間かわかるだろう。
すると、ミヤの方からも首を前に倒し、OKが出た。
「じゃあ、失礼するぞ」
高はそう断ると、やさしくミヤのしっぽを握った。
その瞬間、ミヤの体がびくっと跳ねた。
しかし、高はミヤのしっぽの観察に入り込みその様子に気づいていなかった。
思ったよりもやわらかい。毛は滑らかで、艶もいい。驚くほど普通の猫のしっぽだ。
「っ……ゃ、ぁ……ゃ…じん、のうちっ」
上からそんなか細い声が聞こえてくる。
しかし、高は気づかなかった。研究者でもないのに探究心が爆発したのだ。
高は感触を確かめた後、いろんな感じに触ってみることにした。
具体的にいうと、毛の一本一本を触ってみたり、手でこすってみたり、先端をコスコスしてみたりだ。
そのたび、ミヤは息をハアハアさせながら「あ」や「や」などをやたら淫靡な声で呟いていたが、それも高には聞こえていなかった。
そして最後はまるでとどめを刺すように、しっぽの中間あたりを、ぎゅっと握った。
「…………にゃ、ぁ、にゃあ!」
その叫びと共に、もじもじさせていた足がぎゅっと伸び、全身の毛が逆立ち、体がビクンビクンと痙攣する。そして、案の定高は気づいていなかった。
というか、むしろこっちの鼻息を荒くさせ、ミヤの体に夢中だった。(好奇心的な意味で)
そして、一通りしっぽは診たのか、しっぽをやさしくおろすと、しゃがんでいた膝を伸ばし、ミヤの耳元でこう言う。
「な、なあミヤ、その耳も触らせてくれるか?」
ただ耳元でささやくだけの行為なのだが(ただはおかしい)、さっきのしっぽ触診によりいつもより敏感になってしまった美弥は声を出すことすらできなかった。
そしてそれを高は沈黙は是として受け取ってしまったらしい。
「じゃ、じゃあ失礼するぞ」
「ゃ、ぁ、ちょ……まっ」
今更ダメと言ったところで遅かった。
高は尻尾を触るのと同じ手つきで、ミヤの耳をやさしく、それでいて激しく触った。
もみもみ、きゅっきゅ、さわさわ、すりすり、こすこす………これでもかというほどミヤの耳をいじってくる。
「ぁ、ゃア……ぁぁ……にゃぁ……やぁ………ち………ああ!」
そしてそのたび、ミヤの淫靡な声が部屋を満たす。まあ、その声を聴く者は一人もいなかったが。
高はそんなカオスな状況でも調査を続け、ミヤのあらゆるところ(尻尾と耳)をあらゆる感じに触りサンプルを集め続ける。
何ともまあ、科学者の鏡というやつだ。(高は科学者ではない)
「ふう、まあこんなもんか。ミヤ、ありがとな。お前は多分妖ではないよ」
そして調査が完全に終わるとミヤに、礼を言い耳から手を離す。
ミヤは、完全に内またになっていた足をもう耐えきれないとばかりにまげて、体を下に落とす。そして、しばらく肩で息をし、やがて安定すると、恨めしそうに高をにらんだ。
「ん?どうした、ミヤ?…………なんか顔赤いぞ?それに呼吸も荒いし……」
犯人に自覚は無しである。そんな呆けた顔の高を見たミヤは、ミヤの中で何かが切れるのを感じた。
「………ば、……ば……」
「ば?」
「バカァァァァァァッ!!!!」
「ぅぐふっ」
高の鳩尾にミヤ渾身の右ストレートが突き刺さった。