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この『運』は、キミを救うらしい  作者: カラスヤマ
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ボロ家に帰り、急いで飯の準備をした。

その間、鮎貝には風呂に入ってもらう。風呂上がりで綺麗になった鮎貝、僕を睨みっぱなしのネムと三人で小さな食卓を囲む。


「よしっ。食おうぜ。いただきます!」


「いただきます……」


「私さぁ、この葉っぱ嫌いなんだけど?」


「好き嫌いしないで食べなさい!」


「…ぐっ……後で覚えてろよ」


「アナタ達って、本当に仲が良いのね。なんだか、見てて癒される……」


「そ、そう…か? 癒されるってよ。良かったな! ネム」


「何が良かっただよ……。アホ。そのニヤケ顔やめろ。腹立つから。んっ……と………ところで鮎貝さんは、ダーリンの知り合いなんですよね? どういうご関係ですか?」


「ごめんなさい。私ね……昔の記憶がなくて…………。前田さんのこと全く覚えていないの。だから………ごめんなさい」


「いやいやいやいや! 無理に僕のことなんて思い出さなくて大丈夫だよ。焦る必要ないし。あっ、その……うん。大丈夫だから」


「ありがとうございます。前田さん」


「はぁ………。あ~~、その優しさの半分でも良いから、彼女の私に分けて欲しいもんだなぁ」


「前田さんは、ネムさんに優しいと思いますよ。見つめる目が、優しいから。ネムさんのこと好きですよ、きっと」


「…………そうなん? ダーリン」


「余計なこと言ってないで、早く食べなよ。冷めるから」


「むぅぅ! 全然、優しくないっ!! 大嫌い、コイツ」


「フフ……」


鮎貝から住む家がないことを聞いたネムは、一緒に住むことを提案してくれた。


玄関前で見た、帰っていく二人の後ろ姿は、本当の姉妹のようで微笑ましく、いつまでも見ていたかった。


「…………………」


ただ一つ、不安もあった。


それは。


先ほどの食事中、ネムに興味を持った鮎貝が猫耳をサワサワ触っていた時。僕はある事に気付き、ゾッとした。ネムの『運』が鮎貝の手のひらを通して、ゆっくりと鮎貝の体に移動していたから。


勿論、当の本人はその事に気づいていない。見えていないのだから仕方ない。


鮎貝も僕と同じ特異体質に違いない。



今も歩く度、地面から微量の運を足裏から摂取している。生きる為に最低限の運を。鮎貝にも運はあったのだ。


あまりに少なすぎて、見逃していた。


【限りなくゼロに近く、葉っぱ一枚よりも少ない運で、今日も彼女は生きている】

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