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この『運』は、キミを救うらしい  作者: カラスヤマ
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ネムに頭を撫でられた。どさくさに紛れで耳たぶまで触られた。


「………ええ話やん、自分。1チビリ&5涙腺。合格やで。怖いって言うより、奇妙・感動系やな~」


キラキラ光る涙。鮎貝も下を向き、隠れるようにしてハンカチで目の端を拭っていた。


「でもさ、怖い話って難しいよな。こんな感じの話なら、まだ何個か出来るんだけど……。一人の時間が長かったから、考える時間は膨大にあったし」


肩をポンポン叩かれた。


「泣いてもええんやで?」


「変な同情やめろっ! それと、その下手くそな関西弁もな!!」


騒ぐ僕達の前で正座していたバンバさん。その膝枕で寝てしまったララを母親(父親?)のように優しく見つめていた。


「じゃあ、今度は私の番ね。良い声してたわよ、正ちゃん。聞いててムラムラしちゃった……。ララも気持ち良く寝ちゃったし」


「僕……バンバさんって、どうしても悪人に思えないんですよね。本当に人を殺しまくっていたんですか? 信じられない」


「私もっ!」


「私もです。闇市でも親切に案内してくれたし、とっても楽しかった……。また行きたいな」


「まぁ、今はだいーーぶ丸くなったからね………。昔の私なら、あなた達全員、会って一時間後には私の性奴隷にしてるわよ。逃げないように両足を千切ってね」


凶悪な筋肉の鎧を装備している彼なら、本当に手足くらい簡単に素手で千切れそうだった。


「ハハ………マジっすか……」


バンバの歪んだ性癖の餌食になる。それは、どんなホラーよりもリアルに怖かった。

実際、ネムはガタガタ震えてるし。


「ひゃ、ひゃ、100チビリぃ!」


「いや……それ、全漏らしだろ。待っててやるから着替えて来い」


「う…ん……。ちょっと今から少しの間、休憩とします」


ネムを心配した鮎貝。二人で部屋を出て行った。


「ちょうどいいわ。この話は、正ちゃんだけに聞いてもらおうかなぁ。私が、闇商人になる少し前の話。ホラーとは、少し違うけどね~」


「へ? バンバさんの実話っすか」


嫌な緊張、汗が止まらなかった。



【語り手:バンバ】



痩せた青年が、言っていた。


「俺、これからは死に物狂いで働く。そして、少しでも仕送りしてさ、早く親を楽させたいんだ」



そう言っていた青年が、心臓マヒで亡くなった。



浪人生が、言っていた。


「……今年も落ちたら、死ぬしかない。それぐらいの気持ちで受験に挑む!」



そう言っていた浪人生が、受験に失敗して自殺した。




若い女が、言っていた。


「私ね、優しい彼と結婚して幸せになるの。可愛い孫の顔見せて、早くお母さんを安心させたいなぁ」



そう言っていた女が、結婚詐欺の被害者になった。女は、刃物で男を刺し殺し、自分の首も最後に刺した。




【 成仏出来ない。出来るはずのない人間の魂。私は、その魂を特殊な方法で捕らえて酒瓶に押し込み、無理やり熟成させる 】




その酒を毎晩飲むのが、私の最高の楽しみだった。




「はぁ~美味しいわぁ~~。ぁ………涙の味がする。良い感じぃ~」




これ、自分で言うのもなんだけどさ。

私って、最低最悪な糞坊主だね。



でもーーーーー。



「また作っろ!!」


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