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この『運』は、キミを救うらしい  作者: カラスヤマ
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『一階です。前田様。またのご利用お待ちしています』


エレベーターゴブリンが消えた後も……なかなか魔方陣から出ることが出来なかった。一度、目を閉じ深呼吸。

目を開けると、目の前にタオルを巻いたネムが立っていた。風呂上がりらしく、頬がピンク色に染まっていた。


「湯冷めするなよ」


「うん……」


「………………」


「………………………」


無言でしばらく見つめ合う。


「湯冷めするなよ」


「……じゃあ、そこ退いてよ。着替えられない」


「あぁ……ごめん」


風呂場から急いで出ようとすると、左手を引っ張られた。


「どうしたの? やけにテンション低いじゃん」


「別に何でもないよ。大丈夫だから……」


「ダーリンが大丈夫って言うときは、だいたい大丈夫じゃない時なんだよ。もう、私の前で無理しないでよ」


今は、その優しさに素直に甘えることが出来た。タオル一枚のネムに抱きついた。


「私の胸…………小粒ちゃんでゴメンね。本当は、もっと包み込んであげたかったんだけど……」


「いや、十分だよ。ネム……僕さ、本当は………本当…は…さ………いつ死んでもおかしくないんだ。何年も前から運を使って、病気を誤魔化してる。……死ぬのが恐くて恐くて………。すごく弱くて、未熟でさ……愚かなんだ……。それが、僕で……」


弱音を吐き出す卑しい口を、細い指先で封じたネムは、僕の頭を優しく撫でながら、子守唄を歌ってくれた。懐かしくて、優しくて………。自然と溢れた涙は、しばらく止まらなかった。


「ネムのその歌、好きだよ。最高……」


「ダーリンが死ぬ時は、私も一緒だよ。一人じゃない。だから、心配しなくていいよ」



賑やかな声がする。どうやら、鮎貝達が闇市から帰ってきたみたいだ。


また、騒がしくなるな。


「何、笑ってんの? さっきまでピーピー泣いてた男がさ」


「そんなに泣いてねぇし」


ネムのオデコにキスをして、風呂場を出た。


「この火照ったカラダ、どうすんだよっ!!」



彼女の存在。ネムのおかげで、今なら笑って死ねそうだった。


ユラ。


今度会うときは、お前を倒す。

そして、証明するよ。



哀れなのは、このタワーに弄ばれてるお前の方だとーーー。

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