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三十階以上のマスターは、膨大な運をその身に宿している。しかもそのフロアレベルになると、相手も運を奪う力があるらしく………。その話をバンバから聞いて急に恥ずかしくなった。今までその力があるのは、自分だけだと思っていたから。
全然、特別じゃなかった………。
「私にとって、ダーリンはちょーー特別だよ?」
「あっ、うん。そうですか」
「なんだよ、それぇ。最近コイツ、冷たくない? 昔は、もっと優しかったのになぁ」
ブーブー文句を言っているネムを無視し、考え事を再開する。
運の奪い合いに飽きた彼らは、新しい刺激を求めた。より危険で興奮出来るモノを。
そして産み出したのが、このカードらしい。このカードを使って命を賭けた勝負をするのが、彼らの最高の娯楽。
やっぱり、このタワーには異常者しかいない。
「基本的に相手から勝負を挑まれたら、断れないわ。まぁ仮に、勝負が嫌で嫌でこのタワーから逃げたとしても結局は、捕まって殺されるしね」
「なんで……みんな……仲良く出来ないんだよ……おかしいって………」
「正ちゃんは、三十階を支配しているナミダと勝負をすることになるからね」
「あの……ちょっと良く分からないんですけど……僕さ……いつ、ソイツに勝負を挑まれたんですか?」
「ついさっき。ナミダが使役しているパペットマスターの人形を破壊したでしょ? それで、興味をもったみたい。ほら、正ちゃんにバトル申請が来てる」
「じゃあ、バンバさんとララのせい…」
「正ちゃんは、ララにそんなに体をバラバラにされたいの?」
「………何でもないです。話を続けて下さい」
バンバが手を叩くと、テーブルが透き通り、日時と場所、それと使用するカード枚数の情報が映し出された。すでにチャレンジャー欄に僕の名が記載されている。
「でもね、もし正ちゃんが勝てば、三十階まで自由に行き来出来るし、支配エリアを急拡大出来るメリットがある」
「いや………何度も何度も言いますけど、僕は今のままで十分なんですよ! 一階のフロアで十分幸せ。ネムと鮎貝もいるし」
二人は僕の発言を聞き、頬を染めて、モジモジしていた。
「と、とにかく! これが最初で最後。でもさ、バンバさんとララがいれば楽勝じゃないですか? 無茶苦茶強いし」
「正ちゃん…………。言ってなかったけど、召喚してから三日間は同じカードは使えないのよ。呼び出せないから。だからね、正ちゃんはまた新しいカードを召喚しないといけないわけ。勝負が始まる明日の朝7時までにね」
「…………ハ…ハ…。そいつぁ、おもしれぇ! ハハハハハハッ! 滾ってきたゼ!!!」
「ついに、壊れちゃった………」
「前田さん………」
命を賭けたカード勝負まで、
残りあと9時間ーーーー