誰か教えてよ
俺は悪くない・・・。
こいつが悪い、全部こいつのせいで、俺は・・・
俺は自分の脳内にうるさいほどその呟きを脳内に叩き込んだ。
散々俺のことを見下してこき使いやがって
前々から計画を立てていたはずなのに
なぜしくじった?
「くそ」と呟いて
早くこの状況を何とかしなければと脳みそのギアを切り替え
深呼吸をついて落ち着きを取り戻そうとし、
花瓶を割った・・・
翌日
とある神保町の片隅にそのビルはあった
ビルというよりは住居になっている事務所。
ソファとテレビと冷蔵庫とか日常生活に必要な家財道具一式が揃っており
南向きの窓があり陽当り良好。
橘修一 視点
陽当りのいい場所にソファが置いてありソファに橘修一は寝転がりだらだらしていた
「おーい、しゅういちー、たちばなしゅういちーおーい」
誰かが俺の惰眠を阻止している
「んー、むにゃ。何だ一体」気だるい体を起こして目を開けると
警部の犬飼蓮司が困った顔で立っていた。
「お前さんが待ちくたびれてだらだらと惰眠をむさぼっていたから起こしに来たのだよ。
事件だよ、名探偵。」
橘はむくりと起き上がり周りを見渡す。
さっきまで雑多になって散らかっていた部屋が奇麗になっている。
「こばやしくーん、こばやしたけとくーん」
小林虎人は音楽を聴きながら掃除をしていた
掃除と料理が大好きな大学生。
小林虎人 視点
僕は呼ばれたのに気付かず、冷蔵庫の中身を
確認していた。すると警部の犬飼蓮司が
が僕の顔を覗き込んでいた。
「ああっ犬飼警部!!びっくりしましたよー
どうかされましたか?」
「君の付き添いが呼んでいるぞー」と言いつつニヤニヤしている。
「付き添いは修一さんじゃなくて僕なのですけど・・・。わかって言っていますよね笑」
僕こと【小林虎人こばやしたけと】はマイペースなおっとりした性格。
実は【橘修一たちばなしゅういち】の事を
尊敬している。
僕と修一さんの出会いはまた別の機会に書こう。
小林はたびたび思うことがある。
修一さんのような歳の重ね方をしたいと、
鋭い観察力、鋭い目線や、鋭い視線だけども優しさの溢れている落ち着いた鼻にかかったような声。
ヘビースモーカーではないけれど、
たばこの香りをさせていて、お酒も嗜む程度
本人は無意識のようだが色気が半端ない。
恋人や彼女はいるのかと聞いたことがあったが、ふふっとニヒルな笑いを浮かべて、
くせ毛を掻き毟りながら、
「まあ、前に彼女がいたことがあったけどな
自殺したんだよ。」と言われ、僕はそれ以上、
深く聞けずにいた。
あんまりべらべらしゃべる人ではない、甘党でよくドーナツを食べる。
聞き上手で愚痴も相談も乗ってくれる、ちょっと放っておくとふらふらどこかに行ってしまう事がある。
「彼女作らないんですか?」と聞くと、
「俺はいいよ、とらちゃんこそどうなのよ」
と無邪気な笑顔で答えられる。
犬飼蓮司警部はめちゃくちゃお茶目だ。
四一歳と言っていたが、少年ぽいというか、
仕事はバリバリできる、僕の料理が大好きらしくよくごはんを食べにくる。
僕はというと、中性的な顔立ち、おっとりしていて、よく女の子だと間違えられることがある、料理と掃除が好きで修さんと榑林警部のごはんをよく作ることがある。
中性的な顔立ちとよく女の子に間違えられる
事のせいで過去にトラウマがあるが、そのトラウマを受け入れて親しくしてくれている人
物が橘修一と犬飼蓮司だ。
呼ばれたのではーい。と
呼ばれたリビングに向かうと、
犬飼警部と修一さんが、睨み合っていた。
「二人ともどうされたのですか?」と聞くと
橘が
「あーやっと、とらちゃん来た。このおじさんがさーうるさいんだよ、俺は気持ちよく寝ていたのにさ、起こされるし」と不機嫌そうなむすっとした顔をしながらソファでだらんとしている。
犬飼警部はというと呆れた顔をしながら、
「お前もおじさんだろ、ほら、おじさんがドーナツ買ってきてやるから。」
「いやだ!俺はとらちゃんのドーナツが食べたいんだ!!!俺の頭はたくさんの情報でキャパオーバーを起こしいてる、疲れてて糖分が足りてないんだよ、とらのドーナツは・・・と一気にまくし立て、かくんとなったかと思うと
すーすと寝息が聞こえてきた
この状況で寝るか???と二人は思ったが、
ソファの下には大量の新聞や本が乱雑していた。
犬飼警部は「こいつはストイックだからな」
とぽそりと呟くと乱雑した新聞や本を片し始めたので、僕はドーナツを焼くことにした。
しばらくしてドーナツが焼けてきたので、僕は修一さんを起こそうと声をかけた。
すると修一さんの目からぽろりと涙が流れて
いて、「みさ・・・。」と呟いていた。
前の彼女さんの事だろうか、僕は心が痛んだ
思い切って修一さんを揺さぶって起こしてみた。すると
「とらちゃん、ドーナツできた?」と無邪気な笑顔を向けてくれた。僕はこの人の笑顔を守りたいと思った。
「できましたよ。修さん」
小林と橘がテーブルに向かうと犬飼が椅子に座り捜査資料を広げていた。
「被害者の名前は、畑中明人二八歳。大手企業の社員だそうだ。」
「ふーーん殺害現場は被害者の自宅か。凶器は?」と修一が捜査資料を覗き込んで聞いた
「まだ見つかってないそうだ」そうかと呟くと修一は上着を羽織ると捜査資料を片手に外へ出た。ドアを半分開き二人に問いかけた。
「あ、ごめん被害者の自宅どこだっけ?」
虎人と警部がどうじにツッコミを入れる。
『捜査資料にかいてあるじゃんっ』
「あ~(笑)本当だ」と橘は照れ臭そうに
頭を掻き毟る。
場所は変わり
被害者の殺害現場に三人は到着した。
「シンプルな部屋だな。」と橘は言いつつリビングに向かいご遺体を観察する。何個か花瓶が置いてあり、一つは割られていた、被害者と犯人が争った跡だろうか、遺体の
後頭部に長方形の傷跡がある
背中に大きな刺し傷があり、この傷が致命傷になったと思われる。
第一発見者は同じ会社の同僚の林将吾無断欠席が続いていたため、様子を見てくるように頼まれたそうだ。
「チャイムを鳴らしても返事がないので、ドアを叩いても返事がなくて、ドアが開いていたので中に入るとこのあり様で・・・」と涙ぐみながら答えていた。
ぎゅるるるるると突然音がしたかと思うと、
腹を抱えた橘が「ちょっ、トイレ」借ります」と言い。トイレに入っていった。
犬飼警部が
「おっと自己紹介がまだでしたね、失礼しました。私は捜査一課の犬飼蓮司
この少年は探偵の助手の小林虎人
今トイレに入っているのが刑事顧問の橘修一と言います。」と言い、警察手帳を林に見せた
「探偵さん大丈夫でしょうか?と」林が困惑している。
それを見た、犬飼が答える。
「何、いつもの事ですので・・・」と無邪気に笑って誤魔化していた。
その間橘はというと、トイレから出た後部屋をいろいろ物色していた。
ちなみに橘は痔持ちであった。この事は小林
しか知らないはずだったのだが、犬飼はとっくに気づいており、笑いを堪えるのに必死になっていた。
「うーん・・・」と考え込みながら部屋を探索していると、ドレッサーを見つけた。その上には結婚指輪が二つ置いてありトロフィーが置いてあった。橘はトロフィーを写真に撮り、保存しておいた。
「ふむ、面白いね」とつぶやきリビングに戻った。
小林は「遅かったですよ」とひとりごちた。
「すまん、すまん」と手刀を切りつつ橘は林に尋ねた。
「畑中さんはご結婚されていますか?」
「確か結婚していると聞いていますが、今は別居中みたいなことを言っていました。理由は詳しくは聞いてないですけれども・・・」
「貴重なお話をありがとうございます。
また何か、ありましたら伺わせてください。
あともう一つ、奥様の名前はご存じでいらっしゃいますか?」
「確か、栗林恵さんだったような・・・」
「ありがとうございます。」
犬飼は橘の質疑応答を事細かにメモしていた。橘は犬飼に聞く
「検死はもう済んだか?」犬飼は
「ああ、もう大丈夫だ。」と答え三人は被害者の部屋を後にした。犬飼が
「次は栗林恵だな、別居中だから住所を調べてからじゃないと、調べてから行くことにするから俺は一旦署に戻るがお前たちはどうする?」
「俺はあのファミレスのプリンが食べたい」
とお腹を鳴らしつつ橘が答えた。橘が指さしたファミレスは某ファミレスだ。プリンがちょうどいい甘さで何個でも食べられるサイズのプリン。
「朝ごはんも食べたし、昼ご飯も食べていたし、さっきドーナツ食べていたじゃないですか」と小林がつっこむ。
「ドーナツはいつでも別腹だ」と意気揚々とファミレスに入っていく橘を見て小林は犬飼に会釈して橘の後を追い、ファミレスに入っていった。橘はまずプリンを頼み、それからパスタ、ドリア、肉、サラダとテーブルいっぱいに料理を頼んでいた。それを見た小林が
「修さん、毎回すごい量食べますよね。最初は驚きましたけど、見慣れました。」と僕もお腹空いてきたなあと小林もドリアを注文した
「頭を使うからな、たくさん食べとかないと
脳みそが働かないんだ」と言いながら、口いっぱいにドリアを詰め込んでいた。するとテーブルに置いてあったケータイが震えだした
犬飼からの連絡だ。栗林の住所がわかったとの事で連絡を寄越してきたのだ。
「修さん、行きますよ、ちょっと・・・」
橘はまだ口をもごもご動かしていたが、口の中を水で流し込み「おう。」と言いながら立ち上がった。
橘と小林は犬飼と合流し、栗林恵の住所へ向かった。栗林恵の家は一軒家で全体的にナチュラルテイストな部屋で統一されていた。
部屋全体を見渡した小林が
「可愛らしい部屋ですね」と感激していた。
栗林恵が小柄な身長だからか背の低い家具がバランスよく並べられていた。
「どうも、こんにちは」と栗林恵。茶色のショートボブ白い素肌、白いワンピースの清楚系女子だ。
「家で育てているハーブティーです、お口に合うと良いのですが」と三人分のハーブティーを用意してくれた。
「頂きます」と三人は紅茶を口にする。カモミールティーだ、心が安らぐ香りがする。
「どういったご用件でしょうか?」と栗林。
自己紹介を済ませてから、橘はまたもやトイレを借りに行く。橘が部屋を探っていると、
棚の上にトロフィーを見つけた。被害者の自宅にあったのと同じトロフィーだ。トロフィーを手に取りよく観察してみた。底の部分が長方形の形をしており、被害者の後頭部の傷に非常に似ている。写真に撮っておく、犬飼に頼んで科捜研に回してもらうためだ。と橘は考え、多方面から写真を撮っていた。よしそろそろ戻るか、と橘はふらあとリビングに戻る。リビングに戻ると犬飼
が栗林に事情を説明していた。最初は無言で聞いていたが、次第に嗚咽を漏らし始め、目からは涙があふれ出てきていた。
「すいません、涙が止まらなくて」と目頭を抑えていた。小林は慌ててはいたが、栗林にそっとハンカチを差し出した。栗林は泣きじゃくりながらハンカチで涙を拭きつつ、声を絞り出しながら話し始めた。
「別居してからまだ一ヶ月くらいなのです、何が原因とかじゃなくて浮気とかそういう事ではないんです、少し距離を置きたいと向こうから言われまして」
「お辛いでしょが、後日また日を改めてお伺いに来てもよろしいでしょうか?」と犬飼。
「はい…これ以上はすみません」と栗林。
「では、改めて伺いますので」と橘は言い、
三人は栗林恵の家を後にした。三人が去ったあと、栗林は歯ぎしりをしていた。
「意外と早く嗅ぎつけたのね」先ほどまでの笑顔はどこへ行ったのか、今は笑顔のかけらさえ見えず、憎しみと嫌悪の表情になっていた。
三人は話を一度整理するために事務所に戻っていた。
「別居しているという奥さんが俺は引っかかっているんだが、二人はどう思う?」と橘は二人に聞く。
「うーん、僕はあの同僚の林さんが怪しいかと思います。第一発見者だし・・・」
「俺も栗林恵がひっかかる、刑事のカンってやつだな」
「俺はこれを見つけた」とケータイの写真を二人に見せる。トロフィーの写真だ。
「これを科捜研に回してほしい、頼めるか」
と橘は犬飼に頼む。
「おう」とケータイのデータをコピーし科捜研に持っていった。最近の科捜研の捜査がまた進化をしたらしく写真でも鑑定が可能だそうだ。犬飼は科捜研に鑑定を頼むため、署に戻ると言っていたので橘と小林は事務所に戻ることにした。
「お前、気付いてないのな(笑)今日はもういいから寝よう。」と橘。
「何のことですか、修さん・・・」と言いつつ小林は船を漕いでいたのだが、もぞもぞ動きながらソファに倒れこんだ。橘はそのまま寝ずに椅子に座りつつ読書をしていた。
次の日
太陽の眩しさで目が覚めた。
肩にはブランケットがかけられており、卵の焼けるいいにおいがする。
「目玉焼き焼きましたよー」と小林。
「ありがとうな、昨日全然眠れなくて、読書していたらいつのまにか寝ていた。」と髪の毛をポリポリする橘。
「朝ごはん、食べましょう修さん」と小林が
朝食の準備をしながら言う。
「そうだな」二人は朝ご飯を食べてから事件を考えることにした。朝ご飯を食べ終えた二人は容疑者は二人。二人とも動機があると犬飼から聞いていた。林は、被害者と同期だが被害者の方が立場が上のため、仕事を押し付けられたり、残業を強いられていたそうだ。
あまり被害者に良い印象をもっていなかったらしく他の同僚に愚痴をこぼしていたそうだとの事。
「長方形の傷跡だが写真で鑑定した所、被害者の家に置いてあったトロフィーと一致したそうだ、あれが一つ目の凶器だ」と橘。小林は飲みかけけていたコーヒーをこぼしてしまった。
「え?栗林さんも共犯っていう事ですか?」
「いや、そうじゃない。栗林にもれっきとしたアリバイがある。別居してからすぐに浮気を疑ったそうだ。会ったときは誤魔化していたがあの涙もウソ泣きだろう。本当は旦那を殺せて清々してるんだろうと思う。悪魔な女だ。栗林の過去を調べたのだが、昔大学の演技サークルに通っていたらしく演技はなかなかのもんだったらしいぞ。」小林は騙されていたのだ栗林のあの可愛らしい表情に。あの涙に。
「しょうがないさ、男は女性の涙に弱い。
ちなみに俺と犬飼は最初からわかっていたけどな」と笑いながら小林の肩を叩く。
「僕ちょっと理解が出来ていなくて、一体どういう事なんでしょうか」と小林の頭にはてなマークがたくさん浮かんでいる。
「難しく考える必要なんてないんだよ、小林君。そもそも殺害現場の場所が違うし凶器は
全部栗林の家にある。森を隠すには森だよ」
とこの全容を犬飼に話した。
すると犬飼は「やはりな」と納得していた。
小林はまだわかっていないようなので、栗林と林を集めて、説明することにする。
林と栗林は困惑していた。
「まず単刀直入に言います。犯人はあなたですね」と橘は栗林恵を指さす。
栗林の困惑していた表情が固まる。
「一体、何の根拠があって言っているんですか」と困惑はしているが、落ち着いた口調で
問いただす。橘はこう答える。
「簡単な事です。別居するときから、あなたは畑中さんの浮気を疑いこの部屋で畑中さんを刺し殺害し、遺体を被害者の自宅に運んだ被害者の家がシンプル過ぎたんですよ。一か月も経つはずなのにベットもテレビもテーブルもない。なぜかトロフィーはある。今まさに持ってる包丁、それが凶器ですね。」栗林は三人が来ると聞いて背中の後ろに包丁を隠し持っていたのだ。犬飼は栗林の包丁をすかさず取り上げ袋に入れる。
林はというと、何故、俺が呼ばれたのかと戸惑いを隠せないようで、辺りを見渡している
「林さん」と榑林に名前を呼ばれ、林は、
「へいっ」何とも間抜けな声が出る。
「あなたは被害者に恨みを持っていたそうですね。調べさせていただきました。トロフィーで殴りつけたのはあなたですね」と榑林が諭すように言うと林は肩を震わせ泣き出してしまった。
「お、おれが悪いんじゃないあいつが悪いんだ、散々俺をこけにして、ちょっと話をしようと栗林さんの家にお邪魔したんだ。そしたらあいつ逆上しやがってトロフィーで殴ったら動かないし怖くなってトロフィーを持って
逃げたんだ。管理人に開けてもらう時にこっそりトロフィーを置いておけばわからないだろうと思って」と林は涙ぐんだ。
栗林はと言うと最初の時に会った印象とは真逆でとんでもなく怖い表情をして
「あーあ。バレちゃったか。気付かれないと
思ったのに・・・あの人帰りがいつも遅いから浮気を疑ってたの。そしたら案の定浮気してて、何が「お前が一番だよ」よ。問いただしたらすぐにボロを出したわ。傷跡を付けて痛そうにして戻ってきたから、何事かと思ったらざまあみろって感じ。清々したわ。」と憎しみと憎悪に満ちただが恍惚とした表情を浮かべながら続けた。
「遺体を運ぶのは大変だから、林君に手伝ってもらったの。引っ越しの手伝いってことで
林は何とも言えない恐怖に引き攣った表情で
栗林を見ていた。小林も顔がとてもこわばっており、犬飼が二人に
「詳しくは署で伺いますので」と二人を連行する。と栗林が
「小林君だっけ?ハンカチありがとう、ごめんね、あれゴミ箱に捨てちゃったの」と言い残し二人は連行されて行った。小林は愕然と
していた。
次の日
小林が朝目覚めると、橘が台所に立って料理を作っていた。その後ろ姿に小林はほっこりし、元気づけられたのだった。 完