1 ル〇ン3世ってなんだかんだなろう系主人公並みのチートだよね
初めまして、マグ口です。とにかくいろんなものを詰めこんだものを書いてみようと思います。
応援されたら頑張るタイプだから応援してみると、続くかもしれないです。
――同調開始まであと10分。
「はぁ……はぁ……ちくしょう!!」
けたたましく鳴り響く警報の下スポットライトに照らされながら、某3世よろしく走り出す影が一つ。
もっとも実際のところは息も絶え絶え、足ももつれながら酔っ払いのように走っていると非常にみっともない姿なのだが。
それでもこの青年、打津 石斗にはやらねばならないことがある。
「ここから絶対に、抜け出さなくちゃいけないんだ!」
打津は現在、刑務所の中を走り回っている。彼の背後には多数の刑務官。別に鬼ごっこをしているわけでも、彼の美貌に酔って襲おうなどでは決してない。理由はもちろん彼をとらえるためである。打津も彼は彼で、時に物影に身を潜め、時に刑務官の手をすり抜けるように交わしたりと、自分の能力を最大限に生かし、何とか逃げ延びている。
「はぁ……お前らしつこいんだよ!さっさと逃がしてくれないかなぁ!?」
「黙れ!このまま逃げれば逃げるほど罪が重くなるぞ!早く牢に戻るんだ!」
「だから俺は冤罪なんだって!」
「お前のような犯罪者は誰だってそう言うんだ!」
「……ごもっとも!!」
「わかっているなら、とっとと捕まれこの馬鹿!」
打津も今自分がしていることが、いかに無謀であるかは重々承知である。彼は決して聡明ではないが愚かではない。
脱獄
打津が無実の罪(本人談)で投獄されて数年、彼はいつ何時も自分が無実であると信じて疑わなかった。そしてその数年間、彼はこの瞬間のためだけに体を鍛え、映画よろしく模範囚のふりをして、壁に穴をあけ、一部の刑務官を味方にし、悠々と脱獄をするはずであった。のだが爪の甘い性格がたたり、自分で警報装置を鳴らし今に至るのである。
「それでもッ……!」
それでも彼は走ることをやめない。決してあきらめない。何としても彼は脱獄し、真犯人をこの手で見つけなければいけない理由があるのだ。
「俺はやらなくちゃいけないんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「どうしてそこでやる気が出るかなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
視界が白む、のどから血の味がしている。だけど視界にようやく刑務所の出口が見えてくる。ここは計画通り。そして外にはバイクが止めているはずだ。
――同調開始まであと1分。
後ろは振り返らない。見る余裕もない。どうしてドアが開いてるだの、どうしてこんな時に、など言っているような気がしたが、関係ない。前へ、前へ。
――同調開始まであと30秒。
門を抜ける。ここまで来たらもう戻れない。だが戻る気もない。
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予定通りバイクもある。またがり、エンジンをかける。思いっきりアクセルを吹かす。ここから苦難の旅が始まる。しかし、それも承知でこの数年間準備してきたのだ。刑務官の静止の声を一切無視して発進する。
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よし。ここまでくれば後はあいつが何とかしてくれるはずだ。次の段階に頭を巡らせ曲がり角を抜けたその時——―
「なっ!?」
視界いっぱいに広がるのはトラック。
驚くほどゆっくりと自分に向かってくる。
あぁ。これは死ぬな。という確信を持ちながら、いろんな思いが頭をよぎる。
自分はなんでこうもついてないんだ。安全運転を心がけていればよかったか?いやいや、むしろもっと突っ走っていればこんなことにならなかったのかも。いや、そうじゃなくてここまでやってこんな終わり方ってありかよ……。こんなことになるならいっそ……いや……その前にあんなことやこんなことも……いやいやいや、それよりそんなことまで——
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<完全同調>
そうして煩悩に包まれながら、打津は宙を舞い、視界が真っ黒になった。
いったいどれほどの時間が経ったのだろうか。それとも一瞬だったのか。目を開くと俺は刑務所の目の前にいた。
「あれ?なんでここに?」
周囲を確認してみるが、あの〇形警部似のやつ含む多数の刑務官がいない。それどころか刑務所の門も締まっている。いったい何があったのか見当もつかない。景色も依然と変らない街並みが見える。
しかし、少しずつ落ち着いてくると自分の視界に違和感を感じ始める。さっきから右隅に何か文字列がちらちらと視界に入ってくる。よく見れば数字だと認識できる。
「なんだ?この数字は?」
残機:9
—―こうして、打津石斗のゲーム世界の生活が幕を開けたのである。




