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『ハローワールド①』

2032年8月14日



 夏本番、夏休みを満喫しようと意気込む僕に親友である仁科(にしな)駿(しゅん)から一通のメッセージが送られてきた。



紘太(こうた)!今から高校の近くの喫茶店にきて!プレゼントあり!頼みたい事もあり!よろしく!』 



恐ろしく要領を得ない文章に彼の国語力に若干の不安を覚えたが、親友の頼みとあっては無下にはできない。僕は指定された場所に行くことにした。



『おk』














 喫茶店に着くと、律義にも仁科は入り口付近で僕を待っていてくれた。2人で入店し席に座ると外界のうだるような暑さから解放されたためか、僕は思わずテーブルに突っ伏してしまった。

   


そんな僕を尻目に、仁科は店員を呼び注文を始めていた。



「アイスコーヒー2つ。あとコイツにはパンケーキも!」


「おい、人の分を勝手に注文すんな。」


「心配するな!もちろん俺の奢りだぜ!」


「マジかよ!気前が良いな!」


「へへーん。そうだろう。」



 運ばれてきたパンケーキを僕がもぐもぐ食していると、仁科は(おもむろ)に小さな包装された箱を取り出し、テーブルに置いた。



「何それ??」



僕が尋ねると、仁科は少し神妙な面持ちになり、こう答えた。



「それが今回のプレゼント兼頼みたい事だ。開けてみてくれ。」



言われた通り、包装紙を破ってみると中から出てきたのは『OVER WORLD(オーバーワールド)』と表記してあるパッケージだった。



「…ゲームの…カセット?」


「ただのゲームじゃないぞ!巷で話題のVRMMO RPGだ!」



(なるほど。『ORVER WORLD』ってどこかで聞いたことあると思ったら最近クラスメイトがよく話してるゲームだったな。)



僕はVR対応機器は持っていたがVRゲームの類は全く遊んだ事が無かった。理由は単に興味が湧かなかったからである。



「それで?こんなの僕にプレゼントして何頼むの?」


「実は……今度、俺の所属する新聞部でインターネット上の都市伝説についての記事を書くことになってな。その紙面上で取り扱いたい話題の1つが、そのゲームなんだ。」


「へぇ、ゲームの都市伝説ね。そんで?」


「ああ。その取材をお前にしてもらいたい。なにしろ人手が足りないもんでな。」



ゲーム都市伝説の取材か。たまにはコイツに恩を売るのも悪くない。それにVRゲームも経験してみるいい機会だろう。



「分かったよ。引き受けやる。」



二つ返事で僕が了承すると仁科は目を輝かせ



「マジ!?サンキュな!この恩はまたいつか返すぜ!」



なんて言って大喜びしてくれた。あまりにも仁科が嬉しそうなのでこっちまで気乗りしてしまう。その後1時間ほど談笑し、解散となった。取材の詳細については後ほど連絡してくれるとの事だったので、その日は『ORVER WORLD』のカセットは起動することなく就寝した。



しかし、問題は翌日起こった。








2032年8月15日



 休日特有の少し遅めの朝食もとい昼食を食べている僕の下に仁科から『はやく!登録しろ!』というメッセージと共に添付されたURLが送られてきた。URLをタップすると、どうやらニュースサイトに繋がっているようだ。



「どれどれ…」



ページを覗くとそこには大きな見出しで、



『【速報】本日正午付で ORVER WORLD のユーザー登録一時中止の意向を発表』



と記してあった。



「ふーん。正午ねぇー……。ん?正午?」



時計に目をやると針は既に





11時50分を指していた。

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