影
夕暮れのこと。
帰り道 影踏みをして遊んだ。
コンドームみたいに薄く伸びた影が 天国へ伸びていくのを見た。
踏んづけたところにちょうど蟻が居て ごめんよと笑った。
それはたしかに春だった。
悪魔になったあたしたちのつれづれ。
神様を嬲り殺すように 飛行機を折って飛ばした。
それは不格好に滑空して まーちゃんの耳に当たった。
哀しみに圧し潰されそうな眼をしていた。
あたしはまーちゃんが好きだった。
はかなげで やわらかくて 瀬戸物だった。
割れるのは 一瞬。
ヒビの入るころが ひどく長い。
地面に落ちる影に そのヒビはうつらない。
いまもまだ見えない。
かのじょが歩き 落とす その影に 隠れてしまったヒビ。
あるとわかっていても 見えない。
まだ見えない。
神様は 死んでしまったから 頼れない。
ほしのまほうにすがるしか 残されてなかった。
ほうきぼしに願をかけて まーちゃんが割れませんように 割れますように と祈った。
あたしはまーちゃんが好きだった。
日々 哀しみのなかで悶えるひとの夢想を かのじょはした。
あいは つねに裏表が反対に波動する。
あたしは 影踏みをして遊んだ。
夕暮れのことだった。