表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
詩集「再见」  作者: 維酉
閃き
34/35

ダイバー

「猫が飛んでる!」


 きみの指差したあの北斗七星の端っこに、ほんとうで嘘っぱちな猫がいた。白い猫だ。こっちに気づいて手を振った。ヘイ、夜のダイバー。猫はいまからどこへ行く。どこへ飛ぶ。


 夜空を滑空していく。白く蛇のように細くうねる尾、高層ビルの狭間を感覚的に縫って縫って抜けていくの。ネオンに彩られた街を見下ろして、いま、どんな気分でいるよ。ねえ、夜のダイバー、答えてみてよ。きみの言葉待ってる。


「しかし夜は続く」


 きみは空飛ぶ猫を見失って、途方にくれて人混みの中に身を預けたよ。そして交差点、我々は手を取り合い狂い気味のテンポで踊り出すのだ。ステップ、ワン、ツー、足を高く、星を蹴り上げろ。さらに我々の音楽は街を飾り、演奏はデッドヒートの烏合の衆をてきとうに遇らうのさ。非凡の民は対流の中で生き絶えろ。生き残るのはきみだけで充分。


「猫はきみすらも嘲笑うか」


 どっかのビルの屋上で、猫は拳銃を握って寝転んでいるよ。あたしときみが現れるの待ってる。ダンスのステップで扉を蹴破ったら、ぱぁん、ぱぁん、ぱぁん。拍手みたいな銃砲の嵐だね。猫は一匹だなんていっちゃないし。


 そして奇跡的で歴史的な一発の銃弾が、きみの脇腹を抉り貫き、血を吐いてあたしの腕の中に飛び込んで来るんだ。あたしはきみを抱いて、白猫どもを掻き分けて屋上の縁へ走り、夜の真っ暗闇へ飛び出す。そう、夜のダイバー。きみとあたしは夜のダイバー。いまからどこへ行くよ。どこへ飛んでく。夜は自由だ。限りなく自由だ。どこまでだって連れていくよ。ポラリスの裏側へだって、いつでも。


「宇宙を飛んでる。果てしない遥かな宇宙」


 猫は誠意を持ってあたしたちを追うだろうよ。ここからは逃避行、夜の逃避行。さあ、哀しみは銃弾となって武器になるよ。憎しみは火薬、いま夜を撃ち抜け。ベランダの欄干に寄りかかってきみと飲むビール。罹患者の煩悩だって、酔い覚ましにはなるかな。ならなかったら、それまでだよ。大丈夫、きみは夜に好かれている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ