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蛍光
電気、消してよ
もうここで死ぬって決めたの
今晩のうちに
だれの迷惑にもならないように
暗い暗いなかで
静かに
ふっ、と
青白い虚無になって
蛍光ペンで描いたような
思い出のなかに埋もれる
と、失望の笑みが
四肢を徐々に喰いちぎり
同時に胸のほうに噛み付き
胸骨を喰い破って
心臓を掴んで離さない
あってないような照明を落とすと
あってないような月明かりが
あってないようなカーテンの隙間から
あってないような頰に落ちて来る
これを哀しみと呼ばないなら
言葉に意味なんてないよ
哀しいから哀しいというの
寂しいから寂しいというの
虚しいから虚しいというの