衝突(中編)
第9章「衝突」(中編)
織田信長 「時は頃合い,菓子に毒を盛り,三河守殿に与えよ。」
信長公が家臣に毒を盛るよう指示している一報が十兵衛様のもとに届きました。
光秀 (「親方様,三河守殿は後の世に必要となる御方故,今,無き者とするべからず,御許し下され。」)
2度目の盃と御用意した菓子が配られます。
織田信長 「御酒は先程と違うな,美酒にかわりないが何処の酒ぞ?」
織田家重臣 「確かに美酒。日向守殿,何処
で御用意されたのか?」
松平元康 「御膳酒,確か摂津国猪名川の上流にある郷村で造られた酒ではござらぬか。」
織田信長 「摂津国・・・,」
その場の空気が一瞬で張り積めるのを一同皆が感じておられました。
織田信長 「日向守,何故,摂津国の御膳酒を用いた?」
光秀 「恐れながら,摂津国猪名川の上流にある郷村の御膳酒は誠,美酒にございます。織田家を祝うに此程の酒は無しと思うた次第。」
織田信長 「誠の美酒・・・,日向守,摂津国は謀反を企てた愚か者の地と知っての事か?」
光秀 「承知致しております。恐れながら,御膳酒と村重殿は関わりござらぬ故・・・」
十兵衛様が申し終えるより先,信長公の怒号が響き渡ります。
織田信長 「日向守,儂に謀反を起こした者の酒を飲ますか!?」
十兵衛 「滅相もござりませぬ,親方様,御膳酒は良き酒,村重殿とは関係ござらぬ事・・・,」
織田信長 「2度も謀反を起こした者の名を申すか!!日向守,儂に楯突く心有りと見た!!」
十兵衛 「日向守に謀反の心得一切ござらぬ,全ては織田家を思う余りの事と・・・」
織田信長 「黙れ,日向守!!」
信長公は十兵衛様の頭を2度蹴られ,その場を離れようとされた時,“羽柴筑前守秀吉”様からの急ぎの伝達が有りと一報が入りました。
織田家家臣 「御無礼は承知,親方様,急ぎ伝える事ありて参上致した次第」
織田家重臣 「祝賀の席ぞ,場をわきまえよ!!」
織田家家臣 「誠,御無礼は承知,筑前守様,毛利勢にて大苦戦の御様子,至急,援軍をくれたしとの要請にございます。」
織田家重臣 「筑前守殿が苦戦しておるのか!?」
織田家家臣 「左様の御様子。勢い付いた毛利勢が播磨に攻めいったとの噂有り,迎え討つべきかと。」
織田家重臣 「播磨・・・,摂津にまでくるやもしれんな。親方様・・・。」
織田信長 「・・・致し方無し,日向守,急ぎ備中に向かい筑前守の援軍を致せ!!」
十兵衛 「御意。」(「これでよい・・・。筑前守殿,感謝致す。」)
信長公は御退席され,その日の祝賀は慌ただしく終わりを迎える事となり,その後十兵衛様は祝賀の役を解任,筑前守様の援軍に出陣,“丹羽長秀”様が祝賀を引き継がれます。
毛利勢と戦う為,信長公は三河守様の御力も必要になると判断,暗殺を取り止る事とし,十兵衛様の思惑通りに進んでいる様でした。




