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願い  作者: 大和
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衝突(前編)

第9章「衝突」(前編)


 御膳を召され,祝賀も佳境を迎えた時,信長公より2度目の盃を振る舞わうよう命じられた十兵衛様はその段取りに入られます。


ーーー安土城 別室ーーー


斉藤利三 「此度の祝賀,親方様も御喜びの御様子,織田家における殿(光秀)の存在,さらに磨かれましたな。」


光秀  「これも皆の恩力あって故の事,感謝致す。」


明智秀満 「大和の存在も大きい,此度の祝賀,殿の采配と貴者(あのもの)の力無くして成し得ぬ事と心得えます。」


光秀  「大和・・・,寄天烈な者よ・・・。」


斉藤利三 「して殿,そろそろ酒の御用意に。」


光秀  「秀満,利三。すまぬが,出世は見送りとする。儂は恐らく親方様の怒りを買う事になるが,三河守(徳川家康)殿を御助け致す所存。」


秀満・利三 「!?,何故(なにゆえ)の事?」


光秀  「一月(ひとつき)前,丹羽殿と話す時ありて,丹羽殿より此度の祝賀の理由(わけ)を話された。」


ーー祝賀より一月前,近江坂本ーー


光秀  「丹羽殿,足を運ばれて御足労。ゆるりとして行かれよ。」


丹羽長秀 「明智殿,伝える事あって参った。祝賀の後,儂は四国攻めを命じられておる。」


光秀 「!?,親方様は四国を長曽我部殿に一任された・・・,朱印状にての御約束は・・・。」


丹羽長秀 「明智殿の家臣,斉藤利三殿が四国を奔走し,明智殿は長曽我部殿との間柄を上手くとりまとめておられる,が親方様は勢力を拡大しておる長曽我部殿を脅威と見た御様子。親方様の御意志には逆らえん。明智殿にも御理解頂きたく,事を伝えに参った次第。」


光秀  「親方様の御意志とあらば致し方無き事,長曽我部殿とは苦労を重ね良縁を築いた中,今一度,親方様を説得できぬものか・・・」


丹羽長秀 「明智殿の心中御察し致すが,織田家家老の“佐久間信盛”殿,石山本願寺攻めでの叱責を問われ高野山へと追放,織田家と良縁を築いた“浅井長政”殿は親方様を裏切った故,“松永久秀”殿,“荒木村重”殿は謀反を企てた故に一族皆滅ぼされた。して此度の祝賀,織田家の勝利を祝う席だが三河守殿を無き者とする親方様の御意志有りとの御様子。」


光秀  「三河守殿!?織田家と三河守殿は同盟関係のはず,何故・・・。」


丹羽長秀  「甲州征伐の帰り,親方様は三河守殿の駿河国を深く見てまわれた。御意志はわからぬが,三河守殿の御力を目の当たりにされ脅威と見た御様子,いつ裏切るか読めぬこの世を思い事を為すおつもりである。」


光秀  「親方様・・・。」


丹羽長秀  「“天下布武”は親方様にしか成せぬ。親方様は家臣達(われら)を上手く使い分けておられる。重臣も使えねば必要無し,逆らえば御家断絶,使える者を重宝し競わせ脅威と見られれば滅ぼされる。天下を治める器に親方様以上の御人はおらぬと見るが,織田家で生き残る家臣達(われら)は必死の事。」


光秀  「仰せの通り,・・・。」


丹羽長秀  「長居した,四国征伐,三河守殿の件は必ず内密にされたし。明智殿は親方様から一目置かれた御方,その功績大事にされよ。家臣達(われら)も生き残るに知恵を絞らねばなるまい。祝賀の日和,楽しみにしておるぞ。御免。」


光秀  「丹羽殿,御足労頂き,感謝致す。」


光秀  (「三河守殿には御恩がある。祝賀を成せば・・・,このまま見過ごすべきか,否か・・・。」)


 決して口には出さず,しかし十兵衛様は深く悩まれている御様子でした。


話は戻り,ーーー安土城 別室ー一ー


斉藤利三  「親方様は四国征伐を・・・,私が再度四国に渡り,長曽我部殿に織田家と一戦交えぬよう,伝えに参りましょう。」


光秀  「無理を承知で頼む,この後,利三は四国で長曽我部殿と交渉に勤しみ,して此度の祝賀だが,成されば三河守殿が無き者とされる。三河守殿には御恩有りて,御救い致す。」


明智秀満  「しかし,殿の進退が危うくなりませぬか!?」


光秀  「承知,進退わかりかねるが手は打った。まもなく羽柴殿より援軍必要との知らせが安土に届く,明智は羽柴の援軍に向かうべく命が下る故,秀満が指揮をとり,四国は利三に任す,儂が自害に追い込まれた際は落ち延び,羽柴殿を頼れ。」


斉藤利三  「殿,大和は・・・。」


光秀  「大和か,貴者(あのもの)にはすまぬ事をした,秀満,大和を連れ羽柴殿の援軍に向かえ。」


明智秀満  「殿,誠によろしいのですね?」


光秀  「決断に変わり無し,“金ヶ崎の退き口”三河守殿に救われた御恩を御返しする時ぞ。」


 まもなく2杯目の盃が用意され,信長公を始め,御一同の前に配られました。

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