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願い  作者: 大和
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祝賀(後編)

第8章「祝賀」(後編)


 天正10年5月ーーー安土城ーーー


 甲州征伐により織田家の勝利を祝い,又,甲州征伐に尽力された“松平元康(徳川三河守家康)”様を招く為の祝賀が催されました。

 

 織田家重臣の“羽柴筑前守秀吉”様は信長公より“毛利討伐”を命じられ中国地方に出陣,秀吉様より外交面で長けた十兵衛様が祝賀の席を任されます。


 十兵衛様は信長公,織田家重臣の方々や“松平元康”様を招く段取りに奔走され,私は祝賀の御膳を担う事になりました。


 “明智秀満”様,“斉藤利三”様を筆頭に明智家家臣の御力を御借りして,近江,越前,京,丹波,摂津,堺から名物を取り寄せ,祝賀の御膳を用意。


 海の幸に越前より鮑と蛸を選び,強く塩漬けにして(安土まで運ぶには腐る為)運んでもらいこちらで調理します。

 塩漬けにした鮑の塩を洗い落とし湯に浸して薄く切り分け,酢(米を発酵させた米酢)に漬けて食す,蛸は味噌焼き蛸(塩を洗い落とし味噌に漬け焼く)と酢蛸(同じく塩を洗い落とし湯上げして酢に漬ける),大根の味噌漬け,汁物に青菜の味噌汁と鯉を調理した鯉汁,近江のマスを塩焼きにした焼き魚,椎茸を干し味噌で煮た煮付け,ネギと生姜に味噌を混ぜ焼いたネギ味噌,牛等の陸の肉類は食されなかったので替わりに京の川で獲れる貴重な宇治丸(ウナギ)を手配し調理にこだわりました。

 大豆を発酵させ,麦を混ぜ,水と海水を干してできた塩に酒を加えた醤油の原型を作製。

 それに酒と米酢を足してタレなるものを作り,宇治丸を開いてそのタレに浸し焼く,宇治丸の蒲焼きなるもの。

 御飯に麦飯。酒は摂津国猪名川の郷村で造られた古くからの御膳酒を考えましたが,摂津国は“荒木村重”様が治めておられた地故に,信長公の逆鱗に触れる事をためらい,大坂堺の御酒を用意。

 菓子は,京の大福に丹波の黒豆を混ぜた豆大福を作り,祝賀の御膳としました。


私 「親方様(信長公)は庶民の味を好まれるとお聞き致しました故,味付けを味噌と塩に米酢でかため,形式は本膳,酒は大坂堺の御酒,菓子に京の大福に丹波の黒豆を混ぜた豆大福とし,祝賀の御膳を御用意致しました。」


十兵衛 「宇治丸とは珍しい。誠に寄天烈,酒は堺の御酒か。」


私 「摂津国の御膳酒を思いましたが,村重様の治めておられた地とあらば親方様の逆鱗に触れるは当然の事と。」


十兵衛 「摂津国の御膳酒・・・。大和,御膳はそれでよし。酒は摂津国の御膳酒を用いる。」


私 「!?」


 この時,私には何故信長公の怒りを買うであろう事を十兵衛様が試みるのかわかりませんでした・・・。


 祝賀の日。私は安土の城下町で安土城の様子を伺っていました。



織田信長 「皆の者,此度の甲州征伐,誠に大儀!!“天下布武”を掲げるにあたり,大いに前進した所存,御苦労な働き!!三河守殿の御力に感謝致す。織田家の勝利を祝い三河守殿の御力に御礼の意を込め,祝賀を催す。ゆるりとして行かれよ!!」


松平元康 「有り難き御言葉。おめでとうございます。元康,親方様の為,これまで以上に成果を御覧に入れまする。」


織田家重臣 「織田家の勝利,おめでとうございます。」


織田信長 「堅い挨拶はこれまで。日向守,皆に御膳を振る舞え」


十兵衛 「承知仕ります。」


 まず酒が振る舞われ,そして先程述べた御膳を用意,信長公を始め,元康様,織田家重臣の方々のもとに並びます。


織田信長 「酒は堺の御酒か。そして御膳,味噌に塩を使い分け,海と山の幸を施しておる。宇治丸,美味!!なんとも寄天烈!!」


松平元康 「誠,美味にございます。」


織田家重臣 「蛸に鮑,青菜の汁物に鯉汁,そして宇治丸,美味にござる。」


織田信長 「日向守,祝賀の御膳,上出来!!」


 祝賀は賑やかに行われていましたが,2度目の盃をかわした時,事件は起こります・・・。

 

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