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フラグ回避って難しくねーか!?  作者: 乙坂キルハ
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第4話 フラグと死亡フラグ

 今までだって何度も止めようとした。

 だけど普通の人は俺の話なんて馬鹿にするか聞いてもくれなかった。


 話を聞いて俺の言った通りにしてくれた冒険者達も死んでしまった。

 その人達はクエストに行くと言っていたから土下座してまで行くのをやめてくれと頼んだ。

 何人かは不審そうな顔をしながらも行くのをやめてくれた。


 それで大丈夫だと思ったんだ。

 これで皆を救えたんだって……!!


 暫くしたら全員クエスト以外の理由で死んだ。


 1人は建設途中の建物の木材の下敷きに。

 1人は強盗に入った蛮族に殺され。

 うっかり足を踏み外して階段から転落死なんてのもあった。


 死亡フラグだけじゃない。

 どんな些細なフラグだって回避させようとした。

 でも1度立ってしまったらどんなに避けようとしても何か別の事柄が起こって必ず()()してしまう。

 フラグの"強制力"って言えばいいんだろうか。


 回収とは文字通りフラグを取得すること。

 フラグは回収されると同時に"GET"の文字が出てきて俺の元に飛んでくる。

 たとえその場にいなかったとしても何のフラグが回収されたか分かるようになってる。

 そして視界の左上辺りに表示されている今まで回収したフラグの本数が増える。

 マ○オの残基のように。


 これまで回収したフラグの数は26本。

 そのうち15本が死亡フラグだ。

 いくら死と隣合わせの生活をしているとはいえ毎日毎日人が死ぬのを感じなきゃいけないというのは辛い。

 こんな力を持っていてもどうすることも出来ない自分に嫌気がさす。


「早く夜にならないかなー!!僕も今日で9歳になるんだよ!もうパパと一緒に狩りにだって行けるんだから!!」

「そうかそうか!そりゃあ楽しみだなぁ!!ほら、友達と遊んでおいで。そうすればすぐに夜になってるさ!」


 親子の会話に耳を傾ける。

 会話が進むにつれ旗の色が次第に濃くなっていく。

 これはフラグを回収するまでのリミットを表しているようだ。

 このままだとあと3分後くらいだろうか。


 クソがっ……!!


「すみません!今日の狩りは中止にしてくれませんか?僕が代わりに目当ての獲物を狩って来るので…!!」


 どうにかしたくて咄嗟に声をかける。

 当選親子が怪訝な目で睨んでくる。

 コミュ障にはキツい…。


「なんだお前は?武器も持ってないのに狩りなんて出来る訳ないだろ?」


 …されて当然の反論だな。

 だがしかしここで引き下がるわけには行かない。


「そこをなんとか!!お願いします!!!」

「お、おい…こんな所でやめてくれよ…」


 道の真ん中で日本人お得意の土下座を披露する。

 正直これ以外のお願いの仕方が思いつかない。


「分かった!分かったから顔を上げてくれ」

「ほんとですか!?」


 よし!

 これでどうにかフラグは……

 フラグに変化は見られない。

 やっぱり無駄なのか…?


「ただし条件がある。全てお前に任せるのは無理だ。だから俺もついて行く。この条件を飲めないってならお前の言うことは聞けねぇな」


 …そう来たか。

 まあそうだよな。

 (むし)ろよく妥協してくれた方か。


「まあそれなら…。分かりました。狩りに同行してもらうという事でお願いします」


 ポンッ!


 この音は……!!

 まずい。

 非常にまずい。

 ()()()()()()()()()


 次の瞬間フラグが真紅に染まり上がった。


「危ない!!今すぐそこから逃げろーー!!!」


 声がした方に顔を向けると暴走し馬車がこちらに突っ込んでくるのが見える。

 正直全員逃げれる余裕は無い。

 すぐそこまで馬車は迫ってきている。


 俺異世界に来ていきなり死ぬのか?

 いや、死ぬのは俺じゃない。

 死ぬのはこの冒険者ただ1人だ。

 というかこういう時って案外色々考えられるものなんだな。


 時間の流れがゆっくりに感じられていたなか、急な衝撃が俺の体にかかった。

 父親が咄嗟(とっさ)の判断で息子を俺の方へ突き飛ばしたのだ。

 そのいきおいのおかげで体を退かせる事が出来た。

 瞬間父親と目が合った気がした。


「息子をたの───」



 なにを言おうとしたのだろうか?

 最後まで言い切る前に無慈悲にも馬車は男を轢き殺した。


「キャーー!!人が…人が轢かれて死んだわ!!」


 目の前で人が死んだ。

 俺の目の前で。

 日本にいたら出くわす事の無かった光景。

 だがそれは今現実として起こっている。


「パパ!ねぇ…起きてよ!!一緒にクエスト行くんじゃなかったの!?」


 この子にとってさっきまで父親だった人間の面影はもはやどこにも無い。

 頭は馬に蹴られたため首がおかしな方向へ曲がり、四肢は車輪に絡まったせいで左腕と右足がちぎれてしまっている。


 俺のせいだ‥‥。

 俺が余計なことをしなければ子供に()()()()は見せなくて済んだのに。

 目の前には泣きじゃくる息子の姿。

 当たり前だがこんな時にどう声をかけてやったらいいのか分からない。

 そのまま立ち去るわけにもいかずオロオロしていると。


「…………のせいだ」


 今なんて言ったんだろう?

 うまく聞き取れなかったんだが。


「ごめん、なんて言ったのかな?あまり聞こえなくて…」

「お前のせいだ!!!」


 ……!!

 確かに俺のせいかもしれないけどここまではっきり言われると気分が悪い。

 いきなりお前呼ばわりされたのも腹が立つ。


「なんで俺のせいになるんだよ。別に俺は何も…」

「お前が話しかけてこなければパパはとっくに狩りに出かけてたんだ!!そうしたら馬車に轢かれることなんて…お前が殺したも同然だ!!!」


 涙を目に浮かべかなりの形相で睨んでくる。

 黙れよ…!

 お前の父親はどのみち死ぬ運命だったんだよ!!

 言い訳がましく自分に言い聞かせる。


「今お前のせいだって…」

「もしかしたらあの子が馬車に何か仕掛けたのかも…」


 気づけば周りにはかなりの人だかりができていた。

 周囲の人達の声と視線が痛い。

 …逃げた方が良さそうだな。

 周りをさっと見回して人の群れが薄そうなところを探す。

 あそこだ!

 方角がいまいち把握出来ていないがそこめがけて一直線に走る。


 背後から凄まじい視線を感じる。

 あの子に睨まれているんだろうなー…。


「お前さえいなければ…!一生恨んでやる!!!」


 最後に聞こえたその一言が、耳にこびりついて離れなかった。










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