第九師団 不審者報告書(その後の追記)
グルディオーサ西方基地 報告書
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秋収月 四十七の日
記録者 エスク・ユベルヴァール
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無の刻、大聖堂院所属四十五番がグルディオーサ西方の森にて不審者を捕縛。
黒髪黒目、顔立ちは北方大陸の特徴を持つが、肌の色は褐色では無い。第一級危険生物を所持するがルルに対する知識不足の為と推察できる。言葉は全く通じず、その他肩掛け袋に見慣れない物を所持。
以下所持品。
折りたたみ式薄い紙。
折りたたみ式中綿。
携帯小冊子、筆記具。
小鏡、白粉、保湿紅。
小型硬質薄型転写機。
硬質薄型板(小)。
布製財布、硬貨、紙幣(国籍不明)
衣類
上衣下衣、共に素材は薄いが伸縮性あり。
(耐久性、保温性は低め)
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「お前にしつこく言葉を教えているのが団長。分かったか?団長」
「ゼレイス、わかったか?」
「団長。後は基本の挨拶を教えてやろう。これを覚えられれば、長すぎる授業も短縮できる、かもしれない」
「おい、ユベルヴァール。そいつで遊ぶなよ」
「遊んでいない。お前だって、団長がこの資料室に入り浸ることに文句言ってただろ?」
「それはそうだが、」
「団長を本来の執務室に戻すには、お前の拒絶が鍵となる。さあ、繰り返せ。・・・そうだな、一歩踏み込み目線は下から見上げ、少し首を傾げて、そうそう、」
「おい、」
「ヤメテェー、ヤメテェー、ユルシテェー、はい、」
「あめてえー、あめてえー、うるしてえーっ、はい・・・?」、
『***、******。****、******************?』
「惜しい、それに疑問を挟まない。はい、ヤメテェー、」
「・・・はい、あめてぇー・・・」
「はいは要らない。ヤメテェー、」
「やめてぇー、」
「いいぞ!今のを忘れるな。褒美に飴をやろう」
「みいーる・・・・」、
『**・・・』
***一年後。
ファルド共和国、ファルド王国、
第一庁舎、資料室。
「懐かしい物が出てきた」
「あー、ユベルヴァール大尉の報告書か」
「このガキ、今や天上人の巫女か」
「ただの巫女じゃないぞ。巫女様」
「そうだったな、巫女様」
ギイ。
「・・・・今、どこに居るんだろうなー、あのチビ」
「大尉!、どうしましたか?、忘れ物ですか?」
「巫女様か。グルディ・オーサは大変だった」
「トライドが邪魔でしたね。奴らファルドの軍道を、我が物顔で占拠して。あれで刻を費やした」
「結局は、通行料を支払えってことだろ?渡したら、武器も携帯したまま俺らを通したじゃないか。まあ、その後が大変でしたよね」
「・・・森では獣人が暴れ、まさか英雄オルディオール殿が参戦し黒竜騎士とやり合うなんて。私、彼の姿が目に焼き付いて、夜眠れませんでした」
「でもその英雄、偽物なんだろ?オーラの城に現れたやつも、噂じゃ整形された数字持ちだって。本当なんですか?大聖堂院で造られたとか。ならなんで、あの場に居たんだろ。結局、巫女様も教会から居なくなってましたし・・・」
「英雄殿が森に居た理由は分からないが、ミギ、巫女はおそらくエスクランザがこそこそと、裏で手を回して逃がしたんだろ」、
(まさか鳥を出し抜くなんてな。奴らの情報網を甘く見ていた)
「エスクランザか、でもユベルヴァール大尉でも、あの場は追えなかったんですね」
「は?、なんで俺?、第八じゃないから。この白い服、見えないか?陛下守備隊」
「でも黒い服も持ってますよね。あ、俺たちも?あれ?、今着てる?」
「ほんとだ、俺も今日黒だっけ?」
「とぼけてんな。とっとと地下に潜れよ。早く奴隷商人に縄をかけてこい。奴隷組織を根絶して、連合委員会の連中を黙らせろ」
「「了解!」」
バタバタ、パタン。
「・・・・・・・・はぁ。西大陸かぁ・・・。遠すぎる・・・」