密談
「さて、少しお話をしましょう。レンさん」
目の前にはファッショングラスをかけ、手を組む婚約者の妹。そのスタイルはどこかアニメで見たことのある有名なポーズを思い出させる。
「そのスタイル」
「それはどうでもいいのです。レンさん」
いや、ネタ満載なのはノアくんだと……。どうでもいいと言いながら軽くあげる様を見てると、……うん。ちょっと反応に困惑するというか、……ツッコミは受け付けないようなのでおとなしく「なに?」と問うことにした。
「ミア姉さんのこと、どう思ってらっしゃいますか?」
「え?」
なにを聞くんだろうとまず思った。
「好きだよ?」
今の環境を守ってくれた恩人であるし、やわらかな好意と将来的に期待しかない外見と少し天然なのかと思えるふるまいは愛らしくも愛おしい。妹のような婚約者から男の接近に気遣うべき婚約者になりつつある自覚はしている。
嫌うも憎むも疎むもありえない。
愛しているかは悩ましくとも好意を持っているのは確かだ。これから愛もきっと育める。
「そうですか」
ファッショングラスがきらめく。うん。ノアくん似合わないんだけど?
「姉が私がレンさんを好きなのではと誤解してきました」
え!?
ノアくんが!?
そんな誤解をするほどの嫉妬?
少しは好かれ度上がっていると期待していい……、嫉妬の方向性が違うとかじゃないといいんだが。喜びかけてノアくんのさめた眼差しに気がついた。
「ノアくん?」
「これで私がレンさんを好き。と言ったら譲ってくれそうで誤解を解くのが大変でした」
待とうか、ミア。どうしたらそういう判断になるんだい?
あんまりにもナナメな反応じゃないか。
それでも、そんな反応に違和感は感じられず『ああ、そういうこともあるだろう』と思わせるのが私の婚約者であるミアだった。
ノアくんよくやった!
「私はレンさんを兄の一人として好きですが、それ以上ではありません。でも、姉に気遣わせるのも嫌なのでしばらく話しかけないでくださいね」
どうやらノアくんはそれを言いたかったらしい。
「ミアが好きだよ。妻になるのは彼女だと思う」
ミアに他の本命が現れない限り。ミアの意志を曲げさせるつもりはないから。
ノアくんは妹だし、話題が合うだけだ。
「それならいいんです。姉は思い込み激しいですよ?」
けっこう頑固ですからとノアくんはようやくファッショングラスを外した。
ノアくんは蜂蜜色の髪と深い青空色の目を持つ他の兄弟達と随分容姿が違う。表情の起伏も薄いエキゾチックビューティ。
「私からは声かけませんから!」
「ああ、わかった。気を使ってくれてありがとう。質問があったらいつでもSNSで」
ノアくんはかすかに困ったような笑顔を浮かべ、「はい」と頷いた。
つい気をかけたくなるのだ。