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おかあさん
環君を抱いた時。とても小さくて驚いた。
環君はちょっとアレルギー体質。犬や猫、動物がダメみたい。
私には時間があるから全部環君に使おうと思った。
おかあさんになれない私がおかあさんになれるの。
おかあさんになれないと女性として妻としてダメなんだと思い込んで生きてきた。旦那様は私がいればいいよ。と言ってくれたけど。お義母様は縁の問題ですものね。と微笑んでくれたけど。
大切と思える人じゃない人の声と視線に過敏になった。
別れてくださいと旦那様に言ったけれど、旦那様は笑って首を横に振るだけ。
惨めだった。嬉しいけれど、惨めだった。
お義兄様が困ったように小さな環君を抱かせてくれた。「しばらく預かってほしい」という言葉とともに。
その日から私は環君のおかあさん、もう一人のおかあさんになった。
「かあさん」
あなたはあっという間に成長していく。
私の宝物になった。