叔母と姪
親の再婚で義姉ができた。
一緒に過ごした期間は二年に満たない。
たった一人父のわからぬ娘を遺していったから。
体の弱い小さな姪は両親の稼ぎをするすると吸いとっていく。そして私の時間も。通える高校は徒歩圏内。交通費なんてかけれない。お迎えお見舞いがあるからバイトだっていけやしない。それでも、小さな姪がかわいくてしかたない。
もちろん理不尽にぶつかることも生意気にいらつくこともあったけど、少しでも調子がいいとごきげんですがってくる姪が本当にかわいくてしかたない。化粧品は忙しいし匂いにむせるから使わない。補習は気になるけれど、姪が気になるから早く帰る。だって両親は治療費を稼いでる。
「ごめんね」
そう呟く義姉を忘れられない。
姪を抱く義姉は本当に聖母のように見えた。
遠縁の田舎に越すことになった時、姪は「知り合いがいなくなる」とふてくされた。
でも、空気も良く刺激も少ない環境が体調を落ち着かせる可能性があるならと承知してくれた。
姪はどんどんかわいく育っていく。
どうかもっと元気になって人並みの幸せを。
「かすみちゃんは私を甘やかし過ぎなの!」
そんなふうに怒る姪がかわいくてかわいくてしかたない。
「だって、しおんちゃんがかわいくてしかたないんだもの」
ぷくりと膨らむほっぺたをぷにっと押せばぷひゅと息がもれて姪がとても怒るのだ。
ねぇ。犯罪的にかわいくない?
「田舎じゃかすみちゃんに出会いがない!」